成年後見人と医療保護入院

司法書士が成年後見人として活動する場合、「医療保護入院」についての知識も習得しておく必要があります。いざ医療保護入院の場面に出くわしたとき、その知識がないと対応ができないためです。

医療保護入院とは、本人の同意がなくても、精神保健指定医が入院の必要性を認め、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法とします。)第33条に定める本人の「家族等」のうち、いずれかが入院に同意したときにおこなわれる入院手続きで、「本人の同意がなくてもその者を入院させることができる」とされています。

参考 精神保健福祉法第33条第1項
(医療保護入院)
精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
二 第三十四条第一項の規定により移送された者
2 前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。
一 行方の知れない者
二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者又はした者並びにその配偶者及び直系血族
三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
四 心身の故障により前項の規定による同意又は不同意の意思表示を適切に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
五 未成年者

このように精神保健福祉法33条にいう本人の「家族等」とは、次の者をいいます(一部例外あり)。
・配偶者
・親権を行う者
・扶養義務者
・後見人または保佐人

ここで「後見人または保佐人」が出てきますので、私のような司法書士が成年後見人になっている場合は、精神保健福祉法にいう「家族等」に該当することになります。

同意する人については順番は決まっていませんので、ここに規定されたどの人が同意をしても医療保護入院の要件を満たすことになっています。(この点、平成25年の法改正前は順番が決まっていました。)

参考
障害者の権利に関する条約(日本も批准しています)
第14条【身体の自由及び安全】
1 締約国は、障害者に対し、他の者との平等を基礎として、次のことを確保する。
(a)身体の自由及び安全についての権利を享有すること。
(b)不法に又は恣意的に自由を奪われないこと、いかなる自由の剝奪も法律に従って行われること及びいかなる場合においても自由の剝奪が障害の存在によって正当化されないこと。

 医療保護入院にあたっては、それが本人の同意がない入院であることや、身体の自由を不当に制限する恐れがあることから、必要性について医師から十分な説明を受けた上で同意を判断する必要があります。

 医療保護入院は精神障害があることのみをもって直ちに入院させることができる制度ではなく、その症状等から医療や身体保護のための入院が必要な場合の制度です。

平成26年1月24日精神・障害保健課長通知「医療保護入院における家族等の同意に関する運用の考え方」にも次のような記載があります。

「3.医療保護入院は、本人の同意を得ることなく入院させる制度であることから、その運用には格別の慎重さが求められる。本人の同意が求められる状態である場合には、可能な限り、本人に対して入院医療の必要性等について十分な説明を行い、その同意を得て、任意入院となるように努めなければならない。」

つまり任意入院となるように努めた上での医療保護入院ということになります。

成年後見人としては、被後見人本人の身体の自由への不当な制限が行われることのないように格別の配慮が求められることになります。

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