相続登記と認知症

相続登記と認知症

相続登記と認知症との間に何の関係があるのかと思われる方もいるかもしれません。
しかし、この2つの言葉は大変密接な関係があり司法書士は後見業務に携わっているいないにかかわらず日々の業務の中で「認知症」について常に意識をしています。

ちなみに「認知症」とは、「認知障害の一種であり、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態」
(「ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典」より引用)をいうとされています。

■相続登記の申請人が認知症の場合

「認知症」の状態にもよりますが、少なくとも司法書士が「相続登記の申請人が認知症」ということを伝えられたり、直接認識したりまたはその疑いを持ったりしたら、そのまま登記申請をすることはありません。それは、認知症によって判断能力がない、または低下した状態で司法書士に「登記申請行為」の委任はできないはずだからです。
正式に相続登記申請の委任を受けていない以上、司法書士がその人からの相続登記申請の代理をすることはできないのは当然のことです。

ちなみにここでいう「判断能力」のことを法律の世界では「意思能力」という言葉で説明しています。
「意思能力」とは、意思表示などの法律上の判断において自己の行為の結果を判断することができる能力(精神状態)のことをいいます。

民法ではこれを類型化し
被後見人のことを「精神上の障害により判断能力を欠く常況にある者」として規定しています(民法第7条)。
被保佐人のことを「精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者」として規定しています(民法第11条)。
被補助人のことを「精神上の障害により判断能力が不十分な者」として規定しています(民法第15条第1項本文)。

被後見人であれば自己の行為の結果を判断することが常にできないということになりますから、登記申請行為について司法書士に委任することは不可能ということになります。
つまり、認知症になって判断能力がない人は自身で登記申請人となることはできないし、司法書士に委任することもできないということになる訳です。

このように判断能力がなかったり低下した人は、自身では登記申請人になることができないので、本人を保護する後見人・保佐人・補助人が法定代理人として登記申請行為をすることになるわけです。

実際問題として、目の前にいる人の挙動が怪しいと感じて「意思能力がないのではないか」と認識した場合司法書士がどのように対処するかは悩ましい場面です。

というのも明らかに「この人は意思能力がない。」と判断できる状態であれば迷うことはないのですが微妙なケースというのがままあるからです。まさに当の司法書士の資質が問われることになります。

■遺産分割協議の参加者が認知症の場合

被相続人の法定相続人が2名以上いて、その話し合いで遺産の帰属者を決めた場合、相続登記をするために遺産分割協議書を作成し、署名捺印の上その証拠とする場合が多くあります。

遺産分割協議も法律行為ですから、その前提として意思能力が必要です。
法定相続人のうちの誰かが認知症になっていると、遺産分割協議に参加することができない、または参加する判断能力がないのではないかということになるはずです。

このような場合すなわち、法定相続人のうちの一人が認知症になっている、またはその疑いがあるという場合は、成年後見制度を利用してその人の判断能力に応じて後見人・保佐人・補助人を就けてもらい、その人に遺産分割協議に参加してもらう等という手続きを踏む必要があります。

さらに注意が必要なのは、後見人・保佐人・補助人が付いている場合、遺産分割協議では認知症になった本人の権利保護のため必ず法定相続分以上の権利を取得させる内容であることが求められるという点です。
これは、成年後見制度を監督する機関である家庭裁判所からこれに反する内容の遺産分割協議、たとえば当の認知症になっている被後見人が法定相続分より少ない遺産しか取得できていないといった内容だと後見人等に再考を求められるということになります。

相続登記に関与する司法書士として当の相続人にどの程度関与しているかにもよりますが、認知症の方が当事者にいる場合は、これらの点も十分吟味して登記手続きを進める必要があり、意思確認ができない等の場合は、依頼をお断りすることもあります。

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