法定相続分の規定 民法第900条第4号

 民法第900条第4号の規定は、平成25年12月5日,民法の一部を改正する法律の成立、同月11日公布・施行により改正されました。

 平成25年12月改正前の民法第900条第4号には、ただし書前半部分に「嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1」とする規定がありました。
 ここでいう「嫡出でない子」とは,法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことをいいます。

 平成25年12月改正後の民法第900条第4号では、嫡出子と嫡出でない子の相続分を等しいものと定めています。

 この改正は、平成25年9月4日の最高裁大法廷決定によって平成25年12月改正前の民法第900条第4号ただし書前半部分の「嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1」とする規定が、憲法違反と判断されたことにより行われたものです。

 平成25年9月4日の最高裁大法廷決定では、憲法違反とした理由として大要、以下のような論理展開をしています。
 憲法14条1項に定める法の下の平等の規定は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきである(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁等)。
  相続制度をどのように定めるかは,立法府の合理的な裁量判断に委ねられているものというべきである。
 平成25年12月改正前の民法第900条第4号ただし書前半部分の「嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1」とする規定により、嫡出子と嫡出でない子との間で生ずる法定相続分に関する区別が,合理的理由のない差別的取扱いに当たるか否かについては、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には、当該区別は,憲法14条1項に違反するものと解するのが相当である。
 嫡出子と嫡出でない子の法定相続分をどのように定めるかということについては,上記のような事柄を総合的に考慮して決せられるべきものであり、また、これらの事柄は時代と共に変遷するものでもあるから、その定めの合理性については、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らして不断に検討され、吟味されなければならない。などとして、民法が改正の変遷を辿りながら、国民の法律婚尊重の意識が広く浸透しているとしても、世界的な状況や国内法制などは変わってきており、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、嫡出でない子の権利が不当に侵害されているか否かという観点から判断されるべき法的問題なのであると判示しています。
 また父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているともしています。
 遅くとも平成13年7月当時においては,立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきであり、憲法14条1項に違反していたものというべきであるとしています。この平成13年7月というのは、この最高裁決定のもとになった訴訟における相続開始時期のことを指しています。

 そうすると、これまで民法第900条第4号ただし書前半部分の「嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1」とする規定をもとに、遺産分割協議や裁判手続きが行われてきたものがすべて憲法違反になってしまうのかという疑問が出てきますが、上記最高裁決定では、その適用範囲についても言及しています。
 つまり

 ■嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分については,遅くとも平成13年7月当時において,法の下の平等を定める憲法14条1項に違反していた。

 ■この違憲判断は,平成13年7月から平成25年9月4日までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない。
としています。

 これを受けて民法の一部を改正する法律では,最高裁決定日の翌日である平成25年9月5日以後に開始した相続についてこの規定を適用すると定めています(同法附則第2項)。

 平成13年7月1日から平成25年9月4日までの間に開始した相続について、この最高裁決定後に遺産分割をする場合は、嫡出子と嫡出でない子の相続分は同等のものとして扱われることになります。

 平成13年7月1日から平成25年9月4日までの間に開始した相続について、すでに遺産分割協議や裁判が終了しているなど「確定的なものとなった法律関係」については、この最高裁決定があってもその効力はそのままです。

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