相続登記では戸籍謄本が必要と聞いても、「どこまで集めればよいの?」「何通必要なの?」と疑問を抱く方は少なくありません。戸籍の収集範囲は相続関係によって異なり、不足があると相続登記の手続きが進まないこともあります。
この記事では、相続登記に必要な戸籍謄本をどこまで取得すべきかをはじめ、戸籍の集め方や取得方法、注意点について解説します。司法書士事務所へ依頼するメリットについても紹介します。
このページの目次
相続登記で戸籍謄本が必要な理由と全体像
相続登記では、戸籍謄本などの戸籍証明書を用いて、登記名義人が亡くなった事実や、誰が法定相続人に該当するのかを法務局へ明らかにします。相続関係によって必要な戸籍の範囲や種類が異なるため、手続きの全体像をあらかじめ把握しておくと、戸籍収集を進めやすくなるでしょう。
相続手続きにおける戸籍の役割
戸籍証明書は、被相続人の死亡や、配偶者・子・父母・兄弟姉妹などとの身分関係を公的に証明する書類です。
法務局は、申請者の口頭説明だけで相続人を判断するのではなく、提出された戸籍証明書などを確認して相続関係を審査します。そのため、被相続人にほかの子がいないか、先に亡くなった相続人の子が代襲相続人にならないかなども、戸籍をたどって確認しなければなりません。
相続登記では、一般的に次のような戸籍証明書が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍証明書
被相続人が亡くなった事実を証明するとともに、法定相続人を特定するために使用します。婚姻や転籍、戸籍制度の改製などがあると、複数の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本が必要になることもあります。 - 相続人全員の現在の戸籍証明書
相続開始時に相続人としての身分を有していることを確認するために提出します。原則として、被相続人が亡くなった日以後に発行されたものが必要です。 - 相続関係に応じて追加で必要となる戸籍証明書
子が先に亡くなっている場合や、兄弟姉妹・甥・姪が相続人になる場合などは、亡くなった相続人や被相続人の父母に関する戸籍も必要になることがあります。
法務省も、相続登記では戸籍証明書によって、相続開始の事実を証明し、法定相続人を特定する必要があると案内しています。
相続登記で戸籍が使われる流れ
戸籍を用いた相続人確認の一般的な流れは、次のとおりです。
STEP1 被相続人の戸籍を収集する
被相続人の出生から死亡までの戸籍証明書を集め、婚姻歴や子の有無などを確認します。
STEP2 法定相続人を確定する
戸籍の記載をたどり、配偶者や子、父母、兄弟姉妹など、民法上の相続順位に沿って相続人を特定します。
STEP3 相続人の戸籍を取得する
相続人全員について、原則として被相続人の死亡後に発行された現在の戸籍証明書を用意します。
STEP4 戸籍などの必要書類を法務局へ提出する
登記申請書や遺産分割協議書、住民票など、相続方法に応じた書類とともに提出します。
STEP5 法務局の審査後、登記が完了する
法務局が申請内容と添付書類を審査し、不備がなければ相続を原因とする所有権移転登記が行われます。
なお、法定相続情報証明制度を利用している場合は、法定相続情報一覧図の写しや法定相続情報番号を提出することで、一定の戸籍証明書の添付に代えられることがあります。
令和6年3月から始まった戸籍証明書等の広域交付制度
令和6年3月1日から、戸籍証明書等の広域交付制度が始まりました。この制度により、本籍地以外の市区町村窓口でも、一定の戸籍謄本や除籍謄本を請求できるようになっています。
従来の取得方法との主な違いは、次のとおりです。
| 比較項目 | 従来の取得方法 | 広域交付制度 |
| 取得場所 | 原則として本籍地の市区町村 | 本籍地以外の市区町村窓口でも請求可能 |
| 複数の本籍地がある場合 | 各市区町村へ個別に請求 | 1か所の窓口でまとめて請求できる場合がある |
| 請求方法 | 窓口または郵送 | 市区町村の戸籍担当窓口のみ |
| 代理人による請求 | 委任状などにより可能な場合がある | 不可 |
| 本人確認 | 自治体所定の本人確認書類 | 顔写真付き本人確認書類が必要 |
広域交付を利用できるのは、対象となる戸籍に記載されている本人のほか、配偶者、父母・祖父母などの直系尊属、子・孫などの直系卑属です。兄弟姉妹の戸籍を、兄弟姉妹であるという理由だけで広域交付により請求することはできません。
また、広域交付には次のような制限があります。
- 郵送請求はできない
- 代理人による請求はできない
- コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外
- 戸籍抄本などの個人事項証明書は対象外
- 請求内容によっては、交付まで時間がかかる場合がある
したがって、広域交付を利用すれば、必ず1回の来庁ですべての戸籍がそろうとは限りません。相続関係や戸籍の状態によっては、従来どおり本籍地の市区町村へ個別に請求する必要があります。
自分で戸籍を集める場合は、まず最寄りの市区町村へ広域交付に対応している窓口や受付時間を確認し、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付き本人確認書類を持参するとよいでしょう。戸籍のつながりが複雑な場合や、どこまで取得すべきか判断できない場合は、相続登記を扱う司法書士へ相談する方法もあります。
亡くなった人の戸籍を出生から死亡まで遡る理由
相続登記では、亡くなった人の死亡時の戸籍だけでなく、原則として出生から死亡までの身分関係を確認できる一連の戸籍証明書が必要です。
死亡時の戸籍だけでは、過去の婚姻や離婚、養子縁組、認知などの身分関係をすべて確認できない場合があります。そのため、戸籍の記載を順番にたどり、法定相続人を漏れなく特定しなければなりません。
法務局に提出する戸籍が不足していると、追加書類の提出を求められることがあります。不足を補えなければ、相続関係を確認できず、登記を完了できない可能性もあるでしょう。
戸籍のイメージ図
【戸籍のイメージ図:複数の戸籍を順番につなげる】

出生から死亡まで連続した戸籍が必要な目的
被相続人の戸籍を出生から死亡まで確認する主な目的は、法定相続人を正確に特定することです。
法務局は、登記申請書や添付書類に記載された客観的な情報を基に、相続関係を審査します。家族からの説明だけで、相続人の範囲が確定するわけではありません。
戸籍を遡ることにより、次のような身分関係が判明する場合があります。
- 過去の婚姻関係で生まれた子
- 婚姻していない相手との間に生まれ、認知された子
- 養子縁組をした子
- 先に亡くなった子と、その子にあたる代襲相続人
- 離婚や転籍によって現在の戸籍から除かれた親族
- 相続人の順位を判断するために必要な父母や兄弟姉妹との関係
たとえば、被相続人に前の配偶者との子がいる場合、その子も現在の配偶者との子と同じく、第1順位の法定相続人となります。親族が存在を知らなかったとしても、相続権が失われるわけではありません。また、被相続人の子が相続開始前に亡くなっている場合、その子の子である孫などが代襲相続人になることがあります。このような関係も、戸籍をつなげて確認する必要があります。
相続人の一部を除外して行われた遺産分割協議は、原則として、その相続人を拘束しません。後から相続人が判明すれば、改めて相続人全員で協議を行う必要が生じる可能性があります。したがって、戸籍収集は単に書類をそろえるための作業ではありません。相続人全員の権利を守り、有効な遺産分割や相続登記を行うための重要な手続きです。
戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の違い
出生から死亡までの戸籍をたどる過程で、名称や形式の異なる複数の証明書を取得することがあります。
| 種類 | 主な内容 |
| 戸籍謄本・戸籍全部事項証明書 | 現在も在籍者がいる戸籍について、記載されている全員の情報を証明する書類 |
| 除籍謄本・除籍全部事項証明書 | 死亡、婚姻、転籍などにより、戸籍に在籍する人が誰もいなくなった後の記録を証明する書類 |
| 改製原戸籍謄本 | 法令の改正に伴って戸籍の様式が変更された際、改製前に使用されていた戸籍の記録を証明する書類 |
「戸籍謄本」は紙で管理されていた戸籍の呼称として使われることが多く、コンピューター化された戸籍については「戸籍全部事項証明書」と呼ばれます。ただし、一般には両方をまとめて戸籍謄本と表現することも少なくありません。
改製原戸籍を確認する必要がある理由
戸籍は、法令の改正やコンピューター化によって、過去に何度か様式が変更されています。代表的なものとして、戦後の戸籍制度変更に伴う改製や、平成期に進められたコンピューター化による改製があります。
戸籍が新しい様式へ作り替えられる際、以前の戸籍に記録されていたすべての事項が、そのまま新しい戸籍へ移されるとは限りません。たとえば、改製時点ですでに婚姻や死亡などによって除籍されていた人は、新しい戸籍に記載されないことがあります。そのため、現在の戸籍だけを確認しても、過去の子や養子などの存在を把握できない場合があるのです。
過去の身分関係を正確に確認するには、現在の戸籍だけでなく、必要に応じて次の書類も取得します。
- 改製前の戸籍である改製原戸籍謄本
- 転籍前の本籍地に保管されている戸籍謄本
- 在籍者がいなくなった後の除籍謄本
- 被相続人が婚姻前に入っていた父母の戸籍謄本
これらの書類を年代順に並べ、記載内容を照合することで、出生から死亡までの身分関係を確認できます。
古い戸籍を読み取る際の注意点
古い改製原戸籍や除籍謄本には、手書きで作成されたものもあります。現在とは異なる漢字や旧字体が使われているほか、縦書きや独特の表記方法によって、内容を読み取りにくい場合もあるでしょう。
特に確認が必要となるのは、次のような項目です。
- 出生年月日と出生の届出
- 父母の氏名と続柄
- 婚姻や離婚の日付
- 養子縁組や離縁の記録
- 認知に関する記載
- 転籍先や従前の本籍
- 戸籍が編製・改製された日
- 死亡年月日
戸籍のつながりを自分で判断できない場合や、相続関係が複雑な場合は、市区町村の戸籍担当窓口へ確認するほか、相続登記を扱う司法書士へ相談する方法もあります。
相続パターン別に必要となる戸籍の範囲
相続登記で必要な戸籍証明書の範囲は、被相続人の家族構成や、誰が法定相続人になるかによって異なります。配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の親族については、次の順位に従って相続権が認められます。
1.子や孫などの直系卑属
2.父母や祖父母などの直系尊属
3.兄弟姉妹または甥・姪
先順位の相続人がいる場合、後順位の親族は原則として相続人になりません。そのため、まずは誰が法定相続人に該当するのかを確認したうえで、必要な戸籍を集めることが重要です。
相続人を確認するためのチェックリスト
Q1.被相続人に子がいますか?
はい
→ 子が相続人となります。子が被相続人より先に亡くなっている場合は、その子の子である孫などが代襲相続人になることがあります。
いいえ
→ Q2へ進みます。
Q2.被相続人の父母や祖父母などの直系尊属が存命ですか?
はい
→ 被相続人に最も近い世代の直系尊属が相続人となります。
いいえ
→ Q3へ進みます。
Q3.被相続人に兄弟姉妹がいますか?
はい
→ 兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合は、その子である甥・姪が代襲相続人になる可能性があります。
いいえ
→ 配偶者の有無や親族関係を含め、相続人が存在するかを個別に確認する必要があります。
※なお、被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は上記の各順位の相続人とともに相続人になります。
配偶者と子が相続人になる場合
配偶者と子が相続人となる場合、一般的には次の戸籍証明書などが必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの経緯が分かる戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 配偶者および子全員の現在の戸籍証明書
- 被相続人より先に亡くなった子がいる場合、その子の死亡から出生までの関係を確認できる戸籍証明書
- 代襲相続人となる孫などの現在の戸籍証明書
相続登記では、被相続人が亡くなった事実だけでなく、ほかに相続人となる子がいないことも確認しなければなりません。そのため、現在の戸籍だけではなく、出生から死亡までの一連の戸籍が必要です。
戸籍以外には、被相続人の登記上の住所と最後の住所のつながりを確認するため、住民票の除票や戸籍の附票が必要になることがあります。また、不動産を取得する相続人については、住所を証明する住民票の写しなどを用意します。
父母や祖父母などの直系尊属が相続人になる場合
被相続人に子や代襲相続人となる孫などがいない場合、父母などの直系尊属が第2順位の相続人となります。
必要となる戸籍証明書の例は、次のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍証明書
- 相続人となる父母などの現在の戸籍証明書
- すでに亡くなっている父母がいる場合、その死亡を確認できる戸籍証明書
- 父母がともに亡くなり、祖父母が相続人となる場合、父母の死亡を確認できる戸籍証明書
- 祖父母の現在の戸籍証明書
祖父母が相続人になるのは、父母がいずれも亡くなっている場合など、被相続人により近い世代の直系尊属がいないケースです。父母の一方が存命であれば、原則として、その父母のみが直系尊属として相続人となり、祖父母は相続人になりません。
なお、父母の「出生から死亡まで」の戸籍が常にすべて必要になるとは限りません。どの戸籍まで求められるかは、被相続人に子がいないことや、より近い直系尊属がいないことを確認できるかによって異なります。
兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合
被相続人に子や代襲相続人となる孫などがおらず、父母・祖父母などの直系尊属も全員亡くなっている場合は、兄弟姉妹が第3順位の相続人となります。
このケースでは、一般的に次の戸籍証明書が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍証明書
- 被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの戸籍証明書
- 被相続人の祖父母など、直系尊属が死亡していることを確認できる戸籍証明書
- 相続人となる兄弟姉妹の現在の戸籍証明書
- 被相続人より先に亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍証明書
- 代襲相続人となる甥・姪の現在の戸籍証明書
兄弟姉妹が相続人になる場合に父母の戸籍を遡るのは、被相続人の兄弟姉妹を漏れなく確認するためです。父母の一方のみを同じくする異父・異母の兄弟姉妹も、法律上の相続人となる可能性があります。
法務局も、兄弟姉妹が法定相続人となる場合などには、被相続人の戸籍に加え、被相続人の父母などに関する戸籍証明書が必要になることがあると案内しています。
相続パターンごとの主な戸籍の違い
| 相続人のパターン | 主に必要となる戸籍 |
| 配偶者・子 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍、配偶者・子の現在戸籍 |
| 父母・祖父母 | 上記に加え、直系尊属の生存・死亡や親子関係を確認する戸籍 |
| 兄弟姉妹・甥姪 | 上記に加え、父母の出生から死亡までの戸籍、兄弟姉妹や代襲相続人の戸籍 |
実際に必要となる書類は、遺産分割協議、遺言、法定相続分による登記など、相続登記の方法によっても変わります。また、同じ戸籍証明書で複数の事項を確認できる場合、重複して取得・提出する必要はありません。
広域交付制度を利用する際の注意点
本人、配偶者、父母・祖父母などの直系尊属、子・孫などの直系卑属に関する一定の戸籍証明書は、本籍地以外の市区町村窓口でも請求できます。
ただし、兄弟姉妹の戸籍は、兄弟姉妹であることだけを理由に広域交付で取得することはできません。また、一部のコンピュータ化されていない戸籍などは制度の対象外です。その場合は、本籍地の市区町村へ窓口または郵送で請求する必要があります。
戸籍の数や取得にかかる期間は、本籍地の移動回数や家族関係、戸籍の保存状態などによって異なります。「必ず10通以上必要」「数か月かかる」とは一概にいえません。相続人が兄弟姉妹や甥・姪になる場合、戸籍の確認範囲が広くなりやすいため、自分で戸籍のつながりを判断するのが難しいときは、相続登記を扱う司法書士へ相談する方法もあります。
広域交付制度を活用した効率的な戸籍の集め方
令和6年3月1日に始まった戸籍証明書等の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村窓口でも、一定の戸籍謄本や除籍謄本を請求できるようになりました。
ただし、請求できる人や証明書の種類、請求方法には制限があります。事前に必要な情報や持ち物を確認しておくと、窓口での手続きを進めやすくなるでしょう。
持ち物と事前準備
広域交付を利用する際は、次のものを準備します。
- マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどの顔写真付き本人確認書類
- 被相続人の氏名、生年月日、最後の本籍、戸籍の筆頭者などの情報
- 請求者と被相続人との関係が分かる情報
- 戸籍の交付手数料
- 自治体所定の戸籍証明書等交付請求書
広域交付では、窓口へ来た人の本人確認のため、顔写真付き本人確認書類の提示が必要です。健康保険証など、顔写真のない書類だけでは利用できない場合があります。
被相続人の本籍や筆頭者が分からなくても、窓口で直ちに請求できないとは限りません。ただし、戸籍を正確に特定するため、把握している情報はできる限り整理しておくとよいでしょう。手数料の支払方法は自治体によって異なります。現金以外に対応している窓口もありますが、利用できる決済手段は事前に確認しておくと安心です。
最寄りの市区町村窓口で請求する手順
広域交付を利用する場合の一般的な流れは、次のとおりです。
1.利用する市区町村へ事前に確認する
広域交付を受け付ける窓口、受付時間、予約の要否などを確認します。大量の戸籍や古い戸籍を請求する場合、通常の受付時間より早く締め切られることもあります。
2.請求書に必要事項を記入する
利用目的の記載を求められた場合は、「相続登記のため」などと具体的に記載します。
3.必要な戸籍の範囲を伝える
被相続人の相続人を確認するためであれば、「被相続人の出生から死亡までの戸籍証明書を取得したい」と窓口で伝えます。
4.本人確認書類を提示する
マイナンバーカードや運転免許証など、顔写真付きの公的な本人確認書類を提示します。
5.交付された戸籍を確認する
受け取った証明書の氏名や本籍、編製日、除籍日などを確認します。ただし、交付窓口が相続登記に必要な戸籍がすべてそろっていることまで保証するわけではありません。
簡単な家系図や親族関係のメモがあれば、請求したい戸籍を説明しやすくなる場合があります。ただし、それ自体が広域交付の必須書類というわけではありません。
複数の本籍地にまたがる戸籍や古い除籍を請求すると、本籍地への照会などに時間がかかることがあります。当日中に交付されない可能性もあるため、時間に余裕を持って出向くとよいでしょう。
広域交付制度を利用できない主なケース
広域交付だけでは、相続登記に必要な戸籍をすべて取得できない場合があります。
| 利用できない、または制限されるケース | 主な対応方法 |
| コンピューター化されていない一部の戸籍・除籍 | 本籍地の市区町村へ請求する |
| 戸籍抄本・個人事項証明書 | 本籍地の市区町村へ請求する |
| 郵送による広域交付の請求 | 本籍地へ通常の郵送請求を行う |
| 委任状を用いた代理人請求 | 本人が窓口へ出向くか、通常の代理請求を検討する |
| 兄弟姉妹・甥姪の戸籍を、その続柄だけを理由に請求する場合 | 本籍地への第三者請求や専門家への依頼を検討する |
広域交付によって請求できるのは、原則として次の人の戸籍証明書等です。
- 本人
- 配偶者
- 父母・祖父母などの直系尊属
- 子・孫などの直系卑属
兄弟姉妹や甥・姪は直系親族ではないため、その続柄だけを理由として広域交付を利用することはできません。ただし、兄弟姉妹相続で必要となる被相続人の父母の戸籍など、請求者自身の直系尊属に当たる戸籍については、広域交付の対象となる可能性があります。
また、司法書士や弁護士などの代理人が、委任状や職務上請求書を使って広域交付を利用することはできません。専門家が戸籍を取得する場合は、通常の代理請求または職務上請求により、本籍地の市区町村へ請求することになります。そのため、広域交付と本籍地への窓口・郵送請求を組み合わせるケースもあります。どの方法が適しているかは、相続関係や戸籍の保存状況によって異なります。
法定相続情報一覧図を作成して手続きを簡略化する
集めた戸籍を複数の相続手続で使用する場合は、法定相続情報証明制度を利用する方法があります。
この制度では、相続人が戸籍証明書等と法定相続情報一覧図を登記所へ提出し、登記官が戸籍の記載と一覧図の内容を確認します。内容に問題がなければ、認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」が無料で交付されます。
法定相続情報一覧図を利用するメリット
法定相続情報一覧図の写しは、次のような手続きで利用できる場合があります。
- 相続登記
- 預貯金の払戻しや名義変更
- 有価証券の相続手続き
- 相続税の申告
- 年金に関する手続き
戸籍証明書等の束に代えて一覧図の写しを提出できれば、複数の金融機関などへ相続手続きを申し込む際の負担を軽減できます。
ただし、すべての機関や手続きで必ず利用できるとは限りません。遺産分割協議書、印鑑証明書、本人確認書類など、戸籍以外の書類を別途求められることもあるため、提出先へ事前に確認する必要があります。
法定相続情報一覧図を取得する流れ
一般的な手続きは、次のとおりです。
1.被相続人の出生から死亡までの戸籍証明書等を集める
2.戸籍の記載に基づいて法定相続情報一覧図を作成する
3.申出書と必要書類を管轄する登記所へ提出する
4.登記官による確認を受ける
5.認証文付きの一覧図の写しを受け取る
申出先として選べるのは、次のいずれかを管轄する登記所です。
- 被相続人の死亡時の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
申出時に必要な通数を請求すれば、一覧図の写しは無料で交付されます。追加で必要になった場合も再交付を申し出られますが、再交付を請求できるのは、原則として当初の申出人です。
なお、法定相続情報一覧図は、法定相続人を戸籍に基づいて示す書類です。遺産分割の結果や相続放棄の有無、各相続人が実際に取得する財産までは証明しません。
戸籍収集の注意点と専門家へ相談する目安
相続関係が単純で、本籍地も把握できている場合は、自分で戸籍を収集できることがあります。一方、転籍が多い場合や兄弟姉妹・甥姪が相続人となる場合は、確認範囲が広くなりやすいため注意が必要です。
古い戸籍を判読できない場合
古い改製原戸籍や除籍謄本は、手書きの文字や旧字体が使われており、現在の戸籍より読み取りにくい場合があります。
特に確認したい項目は、次のとおりです。
- 戸籍の編製日・改製日
- 従前の本籍
- 転籍先
- 婚姻・離婚の日付
- 養子縁組・離縁の記録
- 認知に関する記載
- 出生・死亡の記録
記載内容を読み取れないときは、証明書を発行した市区町村の戸籍担当窓口へ確認する方法があります。ただし、窓口が相続人の範囲や登記に必要な書類について、法的な判断まで行うとは限りません。
被相続人の本籍が分からない場合
被相続人の最後の本籍が不明なときは、本籍と筆頭者を記載した住民票の除票を取得することで確認できる場合があります。
ただし、住民票の除票には保存期間があり、古い記録が残っていないこともあります。その場合は、戸籍の附票や親族の戸籍、保管している古い書類などから調査する必要があるでしょう。
なお、戸籍の附票は、その戸籍に在籍していた期間の住所履歴を記録するものです。本籍地の移動履歴を直接証明する書類ではないため、「附票から本籍地を追跡する」とする説明は正確ではありません。転籍前の本籍は、戸籍に記載された「従前戸籍」などを確認してたどります。
専門家による戸籍の取得
司法書士は、相続登記の依頼を受けた場合、その業務に必要な範囲で委任状による代理請求や職務上請求を利用し、戸籍証明書等を取得できることがあります。
ただし、「職権で自由に取得できる」わけではありません。職務上請求は、受任した業務を遂行するために必要な範囲に限られ、利用目的や取得対象にも制限があります。
相続登記に使用する戸籍の有効期限
相続登記に提出する戸籍証明書について、法令上、一律の有効期限は設けられていません。法務局の案内でも、被相続人や相続人の戸籍について有効期限は「なし」とされています。
ただし、相続人の戸籍は、原則として被相続人の死亡日以後に発行されたものが必要です。これは、相続開始時点の身分関係を確認するためです。
また、遺言の内容に基づいて相続登記を行う場合など、登記原因や申請方法によって必要となる戸籍の範囲は異なります。遺言があるケースでは、必ずしも被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要になるとは限りません。
金融機関へ提出する戸籍の期限
金融機関が受け付ける戸籍や印鑑証明書については、各機関が独自に「発行後○か月以内」などの条件を設けている場合があります。
期限は金融機関や手続内容によって異なるため、「すべての銀行が3か月または6か月以内」と一律にはいえません。相続手続きを始める前に、提出先へ次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 戸籍証明書に発行期限があるか
- 原本の提出が必要か
- 原本を返却してもらえるか
- 法定相続情報一覧図を利用できるか
- 印鑑証明書など、ほかの書類に期限があるか
提出先の期限を過ぎた場合でも、出生から死亡までの戸籍を必ずすべて取り直さなければならないとは限りません。古い戸籍の記載内容は通常変わらないため、再取得が必要となる範囲は提出先の運用によって異なります。
法定相続情報一覧図の写しを利用できれば、戸籍の束を複数の機関へ提出する負担を減らせる可能性があります。ただし、一覧図の写し自体の発行時期について条件を設ける機関も考えられるため、利用先への確認が必要です。
自分で戸籍を集めるか専門家へ依頼するかの判断基準
次のような場合は、相続登記を扱う司法書士へ相談すると、手続きの負担を軽減できる可能性があります。
- 被相続人が何度も転籍している
- 古い戸籍の記載を読み取れない
- 前の婚姻関係で生まれた子や養子がいる
- 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる
- 数次相続が発生している
- 本籍地や相続人の所在が分からない
- 相続する不動産が複数の地域にある
- 平日に役所や法務局へ出向くことが難しい
- 相続登記の申請期限が迫っている
戸籍の通数や取得期間だけで、専門家への依頼が必要かどうかが決まるわけではありません。家族関係の複雑さ、自分で手続きに使える時間、登記申請まで対応できるかなどを踏まえて判断することが大切です。
司法書士へ依頼すれば、受任範囲に応じて戸籍収集、相続関係の確認、法定相続情報一覧図の作成、相続登記の申請などを任せられます。ただし、必要な期間や結果を保証するものではなく、報酬や実費も事務所ごとに異なります。依頼前に、対応範囲と費用の見積りを確認しておきましょう。
まとめ
相続登記を進めるには、原則として亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を取り寄せる必要があります。結婚、離婚、転籍などによって本籍が他の市区町村へ移っている場合、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を一つずつたどらなければなりません。遺言書がある場合は必要な戸籍の範囲が少なくなることもありますが、具体的な資料は申請内容によって異なります。
遠方の戸籍を郵送で取り寄せる方法
本籍地が遠方にある場合は、各自治体のホームページから申請書をダウンロードし、以下の書類を同封して送付します。
- 必要事項を記入した申請書
- 本人確認書類のコピー
- 戸籍の交付手数料分の定額小為替
- 切手を貼った返信用封筒
- 続柄を確認するための戸籍資料
料金は一般に戸籍全部事項証明書が1通450円、除籍謄本や改製原戸籍謄本が1通750円です。定額小為替には発行手数料もかかり、郵送料も必要となるため、戸籍の数が多いと費用が膨らみます。自治体によって請求方法が異なる場合は、事前に電話や問合せフォームで質問すると安心です。
広域交付制度を利用できる場合
2026年現在、戸籍法に基づく広域交付制度により、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍は、全国の市区町村窓口で取得できる場合があります。ただし、代理人による利用は不可で、兄弟姉妹や甥・姪の戸籍をその続柄だけで取ることはできません。代襲相続や兄弟姉妹相続では、従来どおり郵送請求を繰り返すケースもあるでしょう。
戸籍を集めた後の手続き
戸籍がそろったら、相続関係を表に整理し、遺産分割協議書や住民票などとともに法務局へ提出します。預金の相続手続きも同様に進める場合は、法定相続情報一覧図を戸籍の束の代わりに利用できることがあります。
何をどこまで集めればよいのかわからない、戸籍が途中でつながらないといった不安がある場合は、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。
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千葉県柏市で2002年に開設した司法書士事務所です。相続や遺言、家族信託など、相続手続きを中心に、丁寧かつわかりやすい対応を心がけています。「ちょっと聞いてみたい」そんな気持ちに寄り添えるよう、平日夜や土日祝のご相談にも対応しています。一人で抱え込まず、気軽にご相談ください。
