遺言執行者の指定

 遺言書を作成する場合、公正証書遺言であれば遺言の中身だけではなく、「遺言執行者」も定められていることがほとんどだと思いますが、自筆証書遺言の場合、「誰に何を相続させる」といった遺言の内容だけが書かれていることも多く、「遺言執行者」の指定がなされていないケースがよくあります。

 「遺言執行者」とは、遺言の内容にしたがって実際に銀行や証券会社で解約手続きや売却手続きをしたり、土地・建物の名義変更手続をする人のことをいいます。

参考 民法第1012条
第1項 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
第2項 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

 もっとも遺言書の内容が、「特定の相続人」に、「特定の遺産」を「相続させる」というものであった場合は、遺言者が死亡すると「直ちに」その遺産がその相続人に承継されることになります(平成3年4月19日の最高裁判決)。この遺言によって特定の不動産を相続させるとされた相続人は、直ちに不動産の相続登記を単独で申請することができます。
つまりこの場合、遺言執行者も基本的に不要になります。

 ただし、遺言書の内容が、「相続人またはそれ以外の人」に、「特定の不動産」を「遺贈する」というものであった場合は、遺言者の法定相続人または遺言執行者と遺贈を受ける人(受遺者)が共同で登記申請をする必要があります。この場合、遺言書に「遺言執行者」の指定がなされていれば、法定相続人が多数存在するような場合でも、遺言執行者と受遺者の2名だけで手続きをすることができます。法定相続人の一部が手続きに協力してくれない場合や、行方不明になっている場合などをイメージしてみると、遺言執行者を指定しておくことの重要性がお分かりいただけるのではないでしょうか。

 実際に遺言者が死亡して遺言の内容を実現しようという段階になって、銀行や証券会社、法務局などに出向いても手続きがなかなか前に進まない、ということにならないように遺言書を作成する場合には、遺言執行者の指定を忘れずにしておくことが必要です。

参考 民法第1006条
第1項 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

 

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