相続登記を自分で進めたい方の中には、「オンライン申請だけで完結できるのか」「スマホやMacでも手続きできるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。相続登記はオンラインで申請できますが、戸籍など紙の添付書類については別途提出が必要になる場合があり、ネットだけですべて完結するわけではありません。
この記事では、オンライン申請に必要な環境や書類、申請用総合ソフトの操作手順、登録免許税や原本提出の流れを解説します。あわせて、自分で進めやすいケースと司法書士への相談を検討した方がよいケースも紹介します。
このページの目次
相続登記のオンライン申請とは
相続登記は申請情報をオンラインで送信できますが、現在は原則としてネットだけで完結するわけではありません。戸籍や遺産分割協議書など紙の添付書類が必要になるケースが多く、別途法務局へ提出する工程が残るためです。
オンライン申請の全体像を把握するため、まずは手続きの流れをまとめました。
【オンライン相続登記の全体の流れ】
- 事前準備:対応パソコン・マイナンバーカード・必要書類の準備
- データ作成:申請用総合ソフトで申請データを作成
- 電子署名:マイナンバーカード等を利用してデータに署名
- 送信:オンラインで申請データを法務局へ送信
- 納付:インターネットバンキング等で登録免許税を電子納付
- 原本提出:戸籍などの紙書類の原本を法務局へ郵送または持参
- 補正対応:内容に不備がある場合は指定の方法で修正
- 完了:審査完了後、登記完了証や登記識別情報を受領
全体の流れを理解したうえで、具体的なポイントを確認していきましょう。
相続登記はオンライン申請できるがネットだけでは完結しない
相続による所有権移転登記は、自宅のパソコンからオンラインで申請できます。しかし、「すべてをPDFで送信すれば終わる」というわけではありません。
不動産の権利変動を確実にするため、戸籍謄本や印鑑証明書などの紙書類については、原本による確認が求められます。紙の書類をスキャンしてPDF化しても、公的な電子文書としては扱われない点に注意が必要です。
そのため、申請データをオンライン送信したあとに、紙の原本を法務局へ郵送するか直接持参する作業が発生します。オンライン申請は「法務局の窓口へ申請書を提出しに行く手間を省く手段」として活用するのが現実的といえます。
相続登記の申請はスマホだけでは完結できない
相続登記のオンライン申請は、スマートフォンだけで完了させることはできません。相続登記のオンライン申請に用いる「申請用総合ソフト」は、公式推奨環境としてWindows OSが指定されています。Macは推奨環境の対象外となっているため、別のWindows環境を用意するなどの工夫が必要です。
Macやタブレット端末は公式推奨環境の対象外となっています。Macを利用している場合、別のWindows環境を用意するなどの対応が必要となる点に留意しましょう。
スマートフォンは各種証明書の請求など一部の機能で活用できるものの、相続登記データそのものを作成・送信するアプリは提供されていません。誤入力を防ぎ、複雑なデータを正確に作成するためにも、画面の広いパソコンでの作業が安全です。
あわせて、電子署名を行うためのマイナンバーカードを準備してください。引っ越しなどで住所変更があった場合、署名用電子証明書が失効していないか確認しておくと安心です。
カード発行時に設定した6〜16桁の英数字パスワードも手元に用意しておきましょう。
相続登記義務化と2027年3月31日の期限を確認する
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を取得したと知った日から3年以内の申請が必要となりました。正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料対象となる可能性があるため注意しましょう。
あわせて押さえておきたいのが、過去に発生した相続の扱いです。2024年4月1日より前の相続であっても義務化の対象となり、原則として2027年3月31日までに対応しなければなりません。
所有者不明土地や放置空き家の増加を防ぐ目的で施行された制度ですが、期限間近になると法務局や専門家の窓口が混み合うと予想されます。自分に相続義務があるか分からない場合は、早めに登記事項を確認しておくと安心です。
相続登記をオンライン申請するメリット・デメリット
オンライン申請には費用を抑えられるメリットがある反面、PC環境の準備や書類提出の手間といったデメリットも存在します。自分で進めるか司法書士へ依頼するかを見極めるため、それぞれの特徴を整理しておきましょう。
| 項目 | 自力でオンライン申請 | 司法書士へ依頼 |
| 専門家報酬 | かからない(大幅な節約が可能) | 数万円〜十数万円程度が発生 |
| 法務局への出向 | 原本提出のみ(郵送も可) | 基本的に不要(お任せ) |
| 事前準備 | Windows PCやカードリーダー等の設定が必要 | 不要 |
| 書類の収集・作成 | 自分で戸籍収集や申請書作成を行う | 司法書士が代行可能 |
自力で申請する場合でも、登録免許税や戸籍取得費用などの実費は必ず発生します。費用面と作業量の手間をバランスよく考慮して検討しましょう。
司法書士報酬を抑えられる可能性がある
自分で相続登記をオンライン申請する最大の魅力は、司法書士へ支払う報酬を抑えられる点です。手続きをすべて自力で行えば、専門家費用を節約できます。
ただし、もともとの司法書士報酬は不動産の数や相続関係の複雑さによって変動するため、削減できる金額を一律に断定することはできません。また、自分で申請する場合であっても以下の実費は必ず発生します。
- 法務局へ納付する登録免許税
- 戸籍謄本や住民票の発行手数料
- 役所や法務局へ書類を送る際の郵送料
- 固定資産評価証明書などの取得費用
実費負担を差し引いたうえで、得られる金額的なメリットが大きいかを判断してください。
法務局へ行く回数を減らせる
オンライン申請を利用すると、法務局の窓口へ出向く負担を減らすことができます。自宅のパソコンから申請データを送信できるため、移動時間や交通費の節約につながるでしょう。
遠方の不動産を相続した場合でも、現地の法務局まで赴く必要はありません。登記完了後の登記識別情報をオンラインで受領する設定も可能です。
ただし、システムは24時間いつでも送信できるわけではない点に留意しましょう。「登記・供託オンライン申請システム」の公式利用時間内で送信する必要があり、土日祝日やメンテナンス期間中は利用できません。
PC環境の準備やソフト操作に手間がかかる
日常的なパソコン利用とは異なり、専用のシステム環境を整える必要がある点はデメリットといえます。
まず、申請用総合ソフトのインストールや初期設定を自力で行わなければなりません。電子署名に必要なマイナンバーカードの準備に加え、カードを読み取るICカードリーダライタ等の機器設定も求められます。
さらに、慣れない法律用語を理解し、画面の指定項目へ正確に入力する作業も必要です。パソコン操作に自信がない場合、紙で申請するよりもかえって時間がかかる場合がある点も理解しておきましょう。
オンライン申請でも添付書類の原本提出が必要になる
前述のとおり、オンライン申請を選択しても紙書類の原本提出は避けられません。
被相続人の戸籍謄本や、相続人全員の実印が押された遺産分割協議書、印鑑証明書などは、紙の原本を法務局へ届ける必要があります。データを送信しただけで手続きが完了したと誤解しないよう注意してください。
原本の提出は、法務局窓口への持参か郵送で行います。申請データの送信後、所定の期間内に到達させる必要があるため、あらかじめ追跡可能な郵送手段などを準備しておくとスムーズです。
オンライン申請を始める前に必要な環境を準備する
ソフトを導入してから不足している機器に気付くのを防ぐため、事前の環境チェックが欠かせません。以下のリストを参考に、必要なものをそろえておきましょう。
【事前準備チェックリスト】
- 動作要件を満たすWindows PC
- 有効な署名用電子証明書が入ったマイナンバーカード
- マイナンバーカードの読取機器(ICカードリーダライタ、または対応スマホ)
- 安定したインターネット接続環境
- 申請用総合ソフト(公式サイトから無料ダウンロード)
マイナンバーカードを読み取る機器を準備する
電子署名を付与する際、マイナンバーカードのICチップを読み取る機器が必要となります。
基本的には、パソコンに接続して使う公的個人認証サービス対応のICカードリーダライタを用意します。機器をお持ちでない場合でも、条件を満たすスマートフォンを読取機器として代用できるケースがあるため、公式情報を確認してみると良いでしょう。
スマートフォンを利用する際は専用アプリの導入やパソコンとの連携設定が必要になります。読み取り時の通信エラーを防ぐため、作業中はカードを浮かせずしっかり固定するのがポイントです。
申請用総合ソフトをインストールして初期設定する
準備が整ったら、「登記・供託オンライン申請システム」の公式サイトから専用ソフトを取得します。
まずはシステム上で申請者IDとパスワードを発行し、最新版の「申請用総合ソフト」をダウンロードしましょう。画面の指示に従ってインストールを完了させたら、ソフトを起動してログインします。
初期設定画面で氏名や住所などの申請者情報を正確に入力し、保存してください。なお、ソフトの仕様やメニュー配置はバージョンアップで変わることがあるため、最新の操作マニュアルもあわせて確認しておくことをおすすめします。
申請内容とソフト操作では問い合わせ先が異なる
オンライン申請を進める中で分からない点が出てきた場合、相談内容に応じて問い合わせ先を使い分ける必要があります。
ソフトの起動エラーや電子署名の付与方法といったシステム操作については「操作サポートデスク」が対応窓口です。一方で、必要な書類や登記申請書の記載内容、登録免許税の計算といった法的な相談は「管轄の法務局」へ問い合わせなければなりません。
法務局ではパソコンの操作手順まで案内しておらず、サポートデスクでは法的な判断を受け付けない仕組みとなっています。スムーズに解決できるよう、エラー画面や相談したい項目を整理したうえで適切な窓口へ連絡しましょう。
相続登記の必要書類をそろえる
相続登記に必要な書類は、どのような形で不動産を引き継ぐかによって異なります。ここでは、ケース別の必要書類や登記情報の確認方法、書類提出を簡略化するポイントを整理しました。
法定相続・遺産分割・遺言で必要書類は異なる
相続のパターンによって、法務局へ提出する書類の組み合わせが変わります。ご自身のケースがどれに該当するか確認してみましょう。
【相続パターン別 必要書類早見表】
| 相続パターン | 主な必要書類 |
| 共通で必要な書類 | ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)・相続人全員の現在の戸籍謄本・不動産を取得する相続人の住民票 |
| 法定相続の場合 | ・上記「共通書類」のみで対応可能 |
| 遺産分割協議の場合 | ・共通書類・遺産分割協議書(実印の押印があるもの)・相続人全員の印鑑証明書 |
| 遺言による場合 | ・共通書類(一部省略できる場合あり)・遺言書(公正証書遺言、または検認済の自筆証書遺言など) |
遺産分割協議で名義変更を行う場合は、協議書と印鑑証明書がセットで必須となります。漏れがないよう慎重に収集を進めましょう。
登記情報から対象不動産を正確に確認する
申請書を作る前の準備として、対象不動産の情報を正確に把握しておく作業が重要です。固定資産税の課税明細だけでは、非課税扱いの私道などが漏れてしまう恐れがあります。
事前に法務局で「登記事項証明書」を取得するか、インターネットの「登記情報提供サービス」を利用して確認しましょう。登記情報提供サービスで閲覧できるデータは公的な証明書とは扱いが異なるものの、記載内容の確認には十分役立ちます。
不動産番号や所在地番、家屋番号などを一言一句違わずに申請ソフトへ入力しなければなりません。不動産番号を入力すれば細かな情報の入力負担が減り、転記ミスも防ぎやすくなります。
法定相続情報一覧図・番号で添付書類を簡略化する
戸籍謄本の束を何度も提出する手間を減らしたい場合、「法定相続情報証明制度」の活用が有効です。法務局へ戸籍一式を提出すると、相続関係を1枚にまとめた「法定相続情報一覧図の写し」を無料で交付してもらえます。
オンライン申請時に「法定相続情報番号」を入力することで、戸籍書類の提出を一部省略できる点も利点です。
ただし、この一覧図を作成する段階で一度はすべての戸籍を収集する必要があります。「戸籍集めそのものが不要になる制度」ではない点に注意しましょう。銀行口座の名義変更など、複数の手続きを並行して進めたい方には非常に便利な仕組みです。
電子添付できる書類と原本提出が必要な書類を区別する
オンライン申請であっても、送信できるデータと郵送・持参が必要な紙書類に分かれます。
【電子添付と原本提出の区別】
- 電子添付できるもの:公的機関が発行した電子署名付きの電子公文書など
- 原本提出が必要なもの:紙で発行された戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、紙の遺産分割協議書、自筆証書遺言など
紙の書類をスキャンしてPDFファイルにしただけでは、法的に「電子添付」として認められません。申請データを送信したあと、紙の原本を管轄法務局へ速やかに届ける手順が必要になります。
申請用総合ソフトで相続登記を申請する手順
準備が整ったら、申請用総合ソフトを使ってデータを作成していきます。全体の流れを図で把握したうえで、具体的な入力手順を見ていきましょう。
【申請データ作成・送信の流れ】
- 申請データの作成・不動産情報の入力
- 登録免許税の計算・入力
- 添付書類の設定・電子署名の付与
- 入力内容の最終チェックと送信
申請データを作成して不動産情報を入力する
ソフトを起動し、相続による所有権移転登記の申請データを作成します。
様式選択で「所有権移転」を選び、登記原因には被相続人の死亡年月日を入力してください。権利者欄には不動産を取得する相続人の情報を、義務者(被相続人)欄には亡くなった方の情報を記載します。
続いて、登記事項証明書の表記通りに不動産情報を入力していきます。不動産番号を入力すれば所在地や家屋番号などの大部分が自動反映されるため、誤記を防ぐためにも積極的な活用がおすすめです。
最後に、管轄する法務局を正しく選択してデータを保存します。
相続登記の登録免許税を計算する方法と端数処理
相続登記では、登録免許税の額を自分で計算して入力しなければなりません。
【登録免許税の計算のやり方】
- 固定資産評価額の確認:評価証明書などで対象不動産の評価額を調べる
- 課税価格の算出:不動産の評価額を合算し、1,000円未満を切捨てる
- 税額の計算:課税価格に税率0.4%(4/1000)を掛ける
- 端数処理:算出された金額から100円未満を切捨てる(最低税額は1,000円)
免税措置が適用できる土地がある場合は、申請書に根拠法令を記載することで税額を抑えられるケースもあります。計算ミスは補正の原因となるため、電卓を叩いて慎重に確かめましょう。
添付情報を設定して電子署名を付与する
入力が終わったら、添付書類に関する設定を行います。
法定相続情報番号を利用する場合は専用欄に入力し、戸籍謄本などの紙原本を後日提出する場合は「特例方式」などの提出方法を選択します。
設定完了後、申請データに電子署名を付与します。マイナンバーカードを読取機器にセットし、ソフトの署名機能からカードを読み込んで暗証番号を入力してください。署名が正常に行われると、ステータスが「署名付与済」に切り替わります。
送信前に申請内容を最終確認する
送信ボタンを押す前に、記載漏れや誤りがないか最終チェックを行いましょう。
- 氏名・住所が戸籍や住民票の表記と一致しているか
- 登記原因の日付が死亡日と合っているか
- 対象となる不動産に漏れはないか
- 共有で取得する場合の持分割合に間違いはないか
- 課税価格と登録免許税の計算は正しいか
- 添付書類のチェック漏れはないか
確認が済んだら「申請データ送信」を実行します。送信後に発行される受付番号は大切に保管してください。
登録免許税を納付して原本を法務局へ提出する
オンライン送信が完了したあとも、大事な工程が残っています。登録免許税の納付と原本提出のタイムラインを確認し、忘れずに対応しましょう。
【オンライン送信後の流れ】
- 送信直後〜数日内:納付情報の確認と登録免許税の納付(Pay-easy等)
- 送信後速やかに:添付書類の原本を法務局へ郵送または持参
- 数日〜2週間程度:法務局での審査・登記完了
- 完了後:登記完了証・登記識別情報通知の受取り
登録免許税を電子納付する
データ送信後、システムから納付情報が通知されます。申請用総合ソフトの画面上にある「納付」ボタンから手続きを進めましょう。
インターネットバンキングやPay-easyを利用した電子納付なら、金融機関の窓口に並ぶことなく支払いを完了できます。なお、収入印紙を貼った用紙を原本と一緒に提出する方法を選ぶことも可能です。
納付には期限が設けられており、放置すると申請が却下される恐れがあります。通知が届いたら早めに支払いを済ませましょう。
添付書類の原本を法務局へ郵送・持参する
紙で管理されている戸籍謄本や遺産分割協議書などは、管轄の法務局へ提出しなければなりません。
直接窓口へ持ち込むか、郵送で送付します。郵送する場合は、万が一の紛失を防ぐために書留やレターパックプラスなど追跡可能な方法を選ぶと安心です。
提出期限を過ぎると手続きが進まなくなるため、送信後は速やかに発送準備を整えてください。返却してほしい原本(還付書類)がある場合は、コピーに「原本と相違ありません」と記載・押印したものを同封する手続きが必要です。
登記完了証と登記識別情報を確認する
審査が無事に終わると、法務局から「登記完了証」と「登記識別情報通知」が交付されます。
登記完了証は手続きが完了した旨を示す書類で、オンライン上の電子公文書として取得することも可能です。一方の登記識別情報は、将来不動産を売却・贈与する際に必要となる極めて重要な書類です。
登記識別情報の受取は、オンラインでのデータ受信か、法務局窓口・郵送での書面受領から選択できます。無事に受け取ったら、第三者の目に触れない安全な場所へ保管してください。
自分でオンライン申請するか司法書士へ依頼するか判断する
自力での申請には費用削減という大きなメリットがありますが、手続きの難易度や必要な作業時間はケースによって異なります。自身で対応できるか見極めるための基準をチェックしてみましょう。
【自力申請 vs 司法書士依頼の判断フロー】
- 相続関係はシンプルか?(数次相続や代襲相続がない)
- No → 司法書士への相談を推奨
- Yes → 次の質問へ
- 相続人同士の話し合いはスムーズか?
- No → 専門家への相談を検討
- Yes → 次の質問へ
- Windows PCの操作やマイナンバーカード設定に抵抗はないか?
- No → 司法書士への依頼、または書面申請を検討
- Yes → 自力でのオンライン申請に挑戦!
補正対応のリスクや手間も含めて判断する
入力内容や添付書類に不備があった場合、法務局から「補正(指示に従った修正)」を求められます。
専門用語を含んだ修正指示を理解し、期限内にデータを再送信したり追加書類を提出したりしなければなりません。指示に対応できないまま放置すると、申請自体が却下されるリスクも伴います。
平日の日中に連絡を取り合ったり、トラブル発生時に自己解決したりする余裕があるかを踏まえて、自力申請に臨むか検討すると良いでしょう。
自分でオンライン申請しやすいケース
以下のような条件がそろっている場合は、自力でオンライン申請を完結させやすい環境といえます。
- 相続人が配偶者と子のみなど、関係性がシンプル
- 遺産分割の話し合いが済んでおり、協力が得られやすい
- 対象不動産が少なく、単独所有である
- 動作要件を満たすWindows PCやマイナンバーカードを所有している
- マニュアルを見ながらソフトの初期設定を行える
- 平日に書類収集やサポートデスクへの確認を行う時間が取れる
ハードルが低いケースであれば、実費のみで費用を抑えられる自力申請の強みを最大限に活かせます。
自分で進めるのが難しい複雑な相続のケース
反対に、以下のような事案では自力申請の難易度が高くなりやすいため注意してください。
- 代を跨いで登記が放置され、数次相続が発生している
- 相続人が多数におよび、連絡が取れない親族がいる
- 相続放棄をした人がおり、権利関係の証明が複雑
- 遺言書の解釈で意見が分かれている
- 全国各地に多数の不動産が点在している
複雑な事案を自己流で無理に進めると、意図しない権利トラブルへ発展する懸念があります。負担が大きいと感じたら、専門家の力を借りるのが賢明です。
手続きに不安がある場合は司法書士への相談を検討する
費用面の節約だけでなく、費やす時間や安心感も含めて総合的に判断することが大切です。
「PC設定で行き詰まってしまった」「戸籍の集め方が分からない」「2027年3月31日までの期限内に確実に終わらせたい」といった不安があれば、無理をせず司法書士への相談を検討してみましょう。
法務局の窓口では個別の法的なアドバイスまでは受けられないため、確実性を重視するなら専門家への依頼が一番の近道となります。ご自身の環境と可処分時間に合わせ、最適な方法を選んでください。
まとめ
相続登記はオンラインで申請できますが、すべての手続きがネットだけで完結するわけではありません。申請用総合ソフトを使って申請情報を送信できる一方、戸籍や遺産分割協議書など、紙で発行・作成される書類は、原本の提出が必要になる場合があります。
オンライン申請を行うには、対応するWindows環境やマイナンバーカード、電子署名を利用できる環境などを準備し、相続方法に応じた必要書類をそろえたうえで申請データを作成します。申請後は登録免許税を納付し、必要に応じて添付書類の原本を法務局へ郵送または持参します。内容に不備があると、法務局から補正を求められることもあるため、送信前の確認が重要です。
相続人が少なく、遺産分割について争いがなく、不動産や相続関係も複雑でない場合は、自分でオンライン申請を進められる可能性があります。一方、数代にわたって相続登記がされていない場合や、相続人が多数いる場合、代襲相続・相続放棄などが関係する場合は、手続きが複雑になりやすいため注意が必要です。
司法書士へ依頼すれば報酬はかかるものの、書類確認や申請、補正への対応を任せられます。費用だけで判断せず、相続関係の複雑さやPC操作への慣れ、手続きに使える時間も踏まえ、自分で進めるか専門家へ相談するかを決めることが大切です。

千葉県柏市で2002年に開設した司法書士事務所です。相続や遺言、家族信託など、相続手続きを中心に、丁寧かつわかりやすい対応を心がけています。「ちょっと聞いてみたい」そんな気持ちに寄り添えるよう、平日夜や土日祝のご相談にも対応しています。一人で抱え込まず、気軽にご相談ください。
