Archive for the ‘相続’ Category

準確定申告

2019-11-17

ご家族が亡くなった場合、遺された人は相続手続に入る前にやらなければならないことがたくさんあります。

まず何から手を付けたら良いかが分からないという方もたくさんいらっしゃいます。

その中でもわかりにくいのが「準確定申告」です。

「確定申告」であれば見聞きすることもある思いますが、「準」という文字が頭に付いていることから分かるとおり「確定申告」とは違うものです。

「確定申告」は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、その所得金額から税額を計算して申告と納税をする制度です。
その申告は翌年の2月16日から3月15日までの間にしなければならないことになっています。

ところがある人が、その年の途中で亡くなってしまった場合は、その年の1月1日から死亡した日までの所得についても所得金額と税額を計算して申告をする必要があります。
これが「準確定申告」です。つまりその年の途中で亡くなった人は、「確定申告」のように1月1日から12月31日までで計算をすることはできなくなっていますから、1月1日から死亡日までで区切って税額を計算し申告をする必要があるということになります。

準確定申告の申告期限は、相続の開始があったことを知った日から4ヶ月以内となっています。
死亡日が相続の開始があったことを知った日となることが多いでしょうから、「亡くなった日から4ヶ月以内に準確定申告をしなければならない」と覚えておけば良いかと思います。

準確定申告では死亡日までに亡くなった人が支払った医療費や社会保険料・生命保険料等の額が控除の対象となる可能性がありますので確認する必要があります。
また源泉所得として控除されていた分についても準確定申告をすることで還付される可能性もありますので注意が必要です。

確定申告も準確定申告も専門家に依頼する場合は、司法書士ではなく税理士さんになりますので、当事務所は提携先の税理士さんにバトンタッチしています。

認知症と遺言

2019-09-01

「認知症だからもう遺言をすることができない。」という訳ではありません。
遺言をすることができる人については、民法第961条などに規定があります。

民法第961条
「15歳に達した者は、遺言をすることができる。」
とあるので、原則15歳以上であれば有効に遺言をすることができるわけです。

ただし民法第973条では

1.成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2.遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

と規定されています。

この規定から
成年後見の審判を受けた人(成年被後見人)が遺言をする場合は、医師の立会いが必要ということになります。
さらにこの医師は、単に立ち会っているだけではダメで、成年被後見人が事理弁識能力が回復していることを確認し、遺言書にも付記しなければならないことになっています。

いっぽう、被保佐人・被補助人にはこのような制限はありませんので、自身で自由に遺言書を作成することができます。
「保佐」・・・認知症、知的障害、精神障害などによって、一人で判断する能力が「著しく不十分」な方
「補助」・・・認知症、知的障害、精神障害などによって、一人で判断する能力が「不十分」な方

このように民法上は、認知症だからという理由で遺言をするのが不可能という訳ではありません。
ただし、その遺言をした時点での本人の事理弁識能力については、後日(特に本人の死亡後)に争われることもあります。
民法の規定や「保佐」・「補助」の意味内容からもわかるように、「判断能力が十分か不十分か」というのは、客観的に判定できるものでもなく
争われることになれば、最終的には裁判官の事実認定にかかってきてしまうわけです。
実際に裁判例でも「遺言能力なし」と認定されたものがいくつかあります。

遺言書の有効・無効が争われると、影響を受けるのは遺された相続人の人たちですが、実際に遺言をした本人もせっかく遺した遺言が否定される事態となっては無念だと思います。
このようなことに巻き込まれないようにするには、明らかに元気なうちに遺言書を作っておくことです。
私もセミナー等ではいつもお話ししていますが、対策ができるうちに遺言書は作っておいたほうが良いと思います。

遺言書(公正証書)を作るには、戸籍謄本や印鑑証明書など準備しなければいけない書類もあります。

小川直孝司法書士事務所では遺言書作成についての相談も承っています。お気軽にご相談下さい。

遺産分割協議書の作成-不動産の表示編

2019-06-15

相続登記に必要な遺産分割協議書の作成にあたり必要な記載事項はどのようなものなのか、というご質問をいただくことがあります。

結論としては、
「誰が」、
「どの不動産を」、
「どのような割合で」
相続するのかが記載されていることが必要になります。

よくある間違いとしては、手元にある固定資産税納税通知書に記載されている「課税明細書」の記載通りに遺産分割協議書にも記載してしまうケースです。

遺産分割協議書に記載する「不動産の表示」については登記事項証明書(登記簿)に記載されているとおりに記載する必要があります。

固定資産税納税通知書に記載されている「課税明細書」の記載は、固定資産税を所管する役所(市役所や都税事務所等)が固定資産税を課税するために把握している情報(現況)を元にしていますので、必ずしも登記事項証明書(登記簿)の記載と一致しているわけではありません。

たとえば建物について、たとえ現況が2階建てであっても1階と2階の床面積を個別に記載せず、便宜的に延べ床面積で記載していることも多くあります。

また建物の構造についても登記事項証明書(登記簿)では「木造亜鉛メッキ」と登録されているのに固定資産税納税通知書の課税明細書では「木造鋼板葺」などとなっていたりもします。

遺産分割協議書の記載に間違いがあると訂正が必要となり、訂正には遺産分割協議書に署名・捺印をした全員の訂正印が必要となります。
いったん法務局に登記申請をしてしまうと書類の補正手続きに手間と時間を要することになります。

このようなことにならないように遺産分割協議書の作成にあたっては「不動産の表示」に特に注意が必要ということになります。

自筆証書遺言と遺言執行者

2019-06-08

主に相続登記の場面で自筆証書遺言を目にすることがありますが、有効な遺言書として取り扱えるかどうか微妙なものが存在します。

よくあるのは
・民法で定める方式に従っているか判別が難しいもの

・「誰に」、「何を」が一見してわかりにくいもの

です。

それとは別に「遺言執行者の定め」がない自筆証書遺言もあります。

そもそも遺言書自体に「遺言執行者の定め」がなくても問題なく遺言内容が実現できる場合もありますので「遺言執行者の定め」がない自筆証書遺言でも、それ自体無効になるわけではありません。

民法第1015条で、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定されているように
遺言執行者は相続人の代理人ですから、遺言執行者がいない場合は、相続人全員が協力すれば問題ないようにも考えられます。

ただし遺言執行者がいないと困る場合もいくつかあります。

■遺言執行者がいないと困る場合~遺言による推定相続人の廃除
民法893条では
「被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。
この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
と規定されていますから、遺言書に推定相続人の廃除の記載がある場合は、必ず遺言執行者の存在が必要となります。

遺言による推定相続人の廃除の記載例としては次のようなものがあります。
「長女○○子は、私に対し・・・・など重大な権利侵害および精神的苦痛を与えた。よって本遺言の効力発生をもって相続人から廃除する。」

実際に相続人の廃除が認められるかどうかは、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申立てをして、家庭裁判所の判断を仰ぐ形になります。

■遺言執行者がいないと困る場合~遺言による認知
民法781条では
第1項で「認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。」
第2項で「認知は、遺言によっても、することができる。」と規定されています。

これを受けて戸籍法64条では
「遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から十日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第六十条又は第六十一条の規定に従つて、その届出をしなければならない。
と規定されていますから、遺言書に認知の記載がある場合は、必ず遺言執行者の存在が必要となります。

遺言による認知の記載例は次のようなものがあります。
「本籍 千葉県・・市 A子の子B(令和○年○月○日生)は、遺言者の子である本遺言をもって認知する。」

■遺言執行者がいないと困る場合~共同相続人が協力してくれない場合
遺言執行者がいなくても、遺言書の内容がたとえば
「千葉県柏市・・番の土地は○○に相続させる。」という特定の不動産を特定の相続人に「相続させる遺言」であれば、遺言執行者の存在は不要でその指定を受けた相続人が単独で名義変更手続き(相続登記申請)をすることができます。

ただし、銀行等の金融機関では
「遺言執行者による請求以外は、原則、相続される方全員の印鑑登録証明書が必要」
とする扱いのところがあります。

つまり遺言執行者の定めのない自筆証書遺言のままでは、たとえ遺言書に「△△銀行○○支店の預金口座はAに相続させる。」と記載されていても事実上Aさんのみでは解約手続きができないという対応になってしまっているということです。

このためAさんとしては、他の共同相続人の協力を得て署名・捺印・印鑑証明書の取り付け等を行う必要がありますが他の共同相続人の一人でも手続きに協力してくれなければ銀行口座の解約手続きができないということになってしまいます。

結論-司法書士である私の立場からは、
・遺言は公正証書で作成しておく
・どうしても自筆証書遺言にしておきたいという場合は、専門家のアドバイス受けて作成する
ということをお勧めします。

ちなみに
自筆証書遺言は、遺言者の死後、家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。
この「検認」では、家庭裁判所から遺言者の法定相続人全員に通知が出され彼らは遺言の存在と内容を知ることができます。
家庭裁判所における「検認」期日では、自筆証書遺言の形状・加除訂正の状態・日付・署名などを列席者全員で確認します。
これは、後日遺言書が偽造されたり変造されたりすることを防止するためでもあります。
ただし家庭裁判所は、自筆証書遺言の有効・無効を判断することはありません。
つまり本人の筆跡による遺言なのかを裁判所が判断したりするものではないし、相続人が自筆証書遺言の内容について了承する遺産分割協議に代わるものでもありません。

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