認知症と遺言

「認知症だからもう遺言をすることができない。」という訳ではありません。
遺言をすることができる人については、民法第961条などに規定があります。

民法第961条
「15歳に達した者は、遺言をすることができる。」
とあるので、原則15歳以上であれば有効に遺言をすることができるわけです。

ただし民法第973条では

1.成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2.遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

と規定されています。

この規定から
成年後見の審判を受けた人(成年被後見人)が遺言をする場合は、医師の立会いが必要ということになります。
さらにこの医師は、単に立ち会っているだけではダメで、成年被後見人が事理弁識能力が回復していることを確認し、遺言書にも付記しなければならないことになっています。

いっぽう、被保佐人・被補助人にはこのような制限はありませんので、自身で自由に遺言書を作成することができます。
「保佐」・・・認知症、知的障害、精神障害などによって、一人で判断する能力が「著しく不十分」な方
「補助」・・・認知症、知的障害、精神障害などによって、一人で判断する能力が「不十分」な方

このように民法上は、認知症だからという理由で遺言をするのが不可能という訳ではありません。
ただし、その遺言をした時点での本人の事理弁識能力については、後日(特に本人の死亡後)に争われることもあります。
民法の規定や「保佐」・「補助」の意味内容からもわかるように、「判断能力が十分か不十分か」というのは、客観的に判定できるものでもなく
争われることになれば、最終的には裁判官の事実認定にかかってきてしまうわけです。
実際に裁判例でも「遺言能力なし」と認定されたものがいくつかあります。

遺言書の有効・無効が争われると、影響を受けるのは遺された相続人の人たちですが、実際に遺言をした本人もせっかく遺した遺言が否定される事態となっては無念だと思います。
このようなことに巻き込まれないようにするには、明らかに元気なうちに遺言書を作っておくことです。
私もセミナー等ではいつもお話ししていますが、対策ができるうちに遺言書は作っておいたほうが良いと思います。

遺言書(公正証書)を作るには、戸籍謄本や印鑑証明書など準備しなければいけない書類もあります。

小川直孝司法書士事務所では遺言書作成についての相談も承っています。お気軽にご相談下さい。

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