Archive for the ‘商業登記’ Category

オンラインで完結可能な本人確認方法(eKYC)

2024-03-04

司法書士が売買や会社設立登記の依頼を受ける際には犯罪収益移転防止法の規定にもとづく本人確認手続きが必要となりますが遠隔地にいるお客様の場合、司法書士と直接面談をすることが難しい場合が多くあります。

このような場合、これまでは司法書士が遠方の出張をしてお客様と面談するか、
①お客様から本人確認書類の提示
②司法書士から①に記載されている住所宛に転送不要書留郵便を送付
③お客様が②を受領
という方法で本人確認をしていました。
(犯罪収益移転防止法施行規則6条1項1号ロ)

しかし2018年に上記規則が改正され
オンラインで完結可能な本人確認方法が定められました。
(犯罪収益移転防止法施行規則6条1項1号ヘ・ホ)
この方法を利用する場合、お客様側ではスマートフォンと運転免許証またはマイナンバーカードが必要になります。

小川司法書士事務所でもオンラインで完結可能な本人確認方法(eKYC)にも対応しております。

 

取締役と欠格事由

2023-09-24

会社の取締役と欠格事由については
①一定の事由に該当すると取締役の資格を失う場合
②一定の事由に該当していると取締役になれない(就任できない)場合
を分けて考える必要があります。

会社法331条1項では取締役の欠格事由として次のような場合を規定しています。

1 法人
2 削除(=成年被後見人・被保佐人が欠格事由から削除されました)
3 会社法など(以降細かいので省略します)の法律に違反して刑に処せられ執行猶予中の者、執行が終わったときから2年を経過するまでの者
4 前号以外の法令の規定に違反して禁錮以上の刑に処せられ、
その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)

上記の規定から分かること

●会社の取締役に会社がなることはできない。
会社法などの法令に違反した人は、罰金刑でも執行猶予中でも取締役になることはできない。
また刑の執行が終わってから2年を経過するまでは取締役になることはできない。
会社法などの法令以外の法令に違反した人は、禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの間は取締役になることができない。
罰金刑の場合、執行猶予中の場合は取締役になることは可能。

このように会社法関係の罪刑とそれ以外の罪刑とで取締役の欠格事由が異なっています。

以上は一定の事由に該当していると取締役になれない(就任できない)場合の話です。

これとは別に一定の事由に該当すると取締役の資格を失う場合としては
取締役が破産した場合
民法653条では、委任契約の受任者に破産手続開始の決定があった場合、委任契約は終了すると定められているところ、
会社と取締役との関係が委任契約にもとづくものであるため取締役は資格喪失となります。
ただ、上記のとおり破産は取締役の欠格事由ではないため再度選任することは可能です。

取締役が被成年後見人になった場合
民法653条では、委任契約の受任者が後見開始の審判を受けた場合、委任契約は終了すると定められているところ、
会社と取締役との関係が委任契約にもとづくものであるため取締役は資格喪失となります。
こちらも被後見人であることは取締役の欠格事由ではないため再度選任することは可能です。
ちなみに被保佐人であることも取締役の欠格事由ではないため選任は可能です。

 

 

会社設立時の定款認証費用が変わりました。

2022-01-03

株式会社設立の際、公証人による定款認証手続きが必要です。

これまでは株式会社の定款の認証の手数料が「5万円」であったものが、
資本金の額が100万円未満の場合「3万円」に、
資本金の額が100万円以上300万円未満の場合「4万円」に、
その他の場合「5万円」に、
と改められました。

資本金の額に関わらず定款の内容や定款認証の事務作業量は変わらないのですが、会社設立をしたい人への負担軽減にはなりますね。

支店設置と営業所設置

2021-01-14

新型コロナウィルス感染予防の一環としてリモートワークが推奨されていますが、登記されている本店所在地とは別の場所で会社の営業活動をする方も多くなってきています。

このように本店所在地以外の場所に営業活動をするためのお店や事務所が必要となった場合、「支店」設置をするのか、「営業所」設置をするのかに迷うことがあります。
そもそも「支店」と「営業所」とでは何が違うのかを対比しながら確認してみます。

 

  支店 営業所
意味 本店とは別に独自の意思決定にもとづき営業活動をするための拠点 本店の意思決定に従い営業活動をするための拠点
形態 営業担当社員のほかに総務担当や経理担当など本店でも存在する業務担当者がいることが多い 営業担当社員がメイン
設置のための手続き

取締役会の承認、または取締役の過半数の承認(取締役会の設置がない場合)が必要(会社法第362条第4項第4号)

会社法に規定はないので社内の通常の業務に関する意思決定の方法による
登記の要否 登記が必要 登記は不要
支配人の設置 支配人の登記が可能  
その他

・支店独自で定められた権限内の契約締結が可能

・支店独自で融資を受けることが可能

・支店独自で公共事業の入札が可能

・法人住民税、償却資産税、源泉所得税がかかる

 

この他にも会社の実情に応じて支店設置が良いのか、営業所設置が良いのかを検討する必要があります。場合によっては、税理士さんに相談する場合もあります。

当事務所では税理士さんへの紹介も含め支店設置に関するご相談を受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせください。

会社への貸付金を原資に資本増加(新株発行)をする方法

2020-09-06

資本増加による新株発行というと、実際に会社にお金を出資して株式を取得するというイメージが一般的だと思います。
しかし会社への出資は金銭に限られるものではなく、金銭債権による現物出資も可能とされています。
会社に対して貸付金がある人、たとえば小さい規模の会社であれば役員が会社に貸付金名目でお金を出しているケースもあります。

このような会社に対する貸付金は、会社にとっては「債務」となっていますが、これを「株式」と「交換」することによって、資本増加による新株発行を実現することができます。
このような会社への貸付金を原資に新株を発行することで会社の「債務」は減少し、「資本の額」は増加するためバランスシートの見栄えも良くなります。
ただし単にバランスシートの見栄えだけではなく会社の財務体制に関わることですから当事務所では事前に顧問の税理士ときちんと打ち合わせをしていただくようにしています。

このような「債務」と「株式」の「交換」のことを「Debt(負債) Equity(株式) Swap(交換)=デット・エクイティ・スワップ=DES」といいます。
DESによる資本増加の登記をする場合、当事務所では総数引受契約による募集株式の発行の形を取るお客様が多いです。その理由の1つには最短で同一日付で資本増加の効力発生までたどり着くことができる点があります。

DESによる資本増加の登記申請を総数引受契約による場合に必要な書類は
1.株主総会議事録
2.株主リスト
3.総数引受契約書
4.資本金計上に関する証明書
5.税理士等の証明書または総勘定元帳等の会計帳簿
となります。

参考 会社法第205条 (募集株式の申込み及び割当てに関する特則)
第1項 前二条の規定(注:募集株式の申込み.募集株式の割当てについての通知や割当の手続き)は、募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。
第2項 前項に規定する場合において、募集株式が譲渡制限株式であるときは、株式会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、同項の契約の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

DESによる資本増加の登記に必要な印紙(登録免許税)は、増加する資本金の額の0.7%です。

執行役員と執行役

2020-08-30

名刺に「執行役員」と記載されているものを見かけます。

「執行役員」と似た言葉に「執行役」がありますが、「執行役員」と「執行役」は違うものです。

「執行役」は、委員会設置会社において必ず置かなければならないと会社法に規定されている役員です。

参考 会社法第402条第1項
委員会設置会社には、一人又は二人以上の執行役を置かなければならない。

規模の大きい会社では、取締役会で決められた方針に従い、実際に業務を執行する機関として執行役が機能する仕組みを採用しているところもあります。
このような仕組みを採ることで、取締役会は執行役の業務執行を監督する立場として機能することができ、会社のガバナンスが効くことが期待されているようです。

同じく規模の大きい会社では、取締役の数も多くなっていた実情があり(大企業の会社の登記事項証明書を見ると取締役が何十人も記載されていたりします。)、会社として効率的な意思決定をし社会の動きに素早く対応していくために、取締役の数を減らしたほうが良いという考えにも合致する仕組みのようです。

「執行役」とは異なり、「執行役員」は、会社法で規定されている役員ではありません。
その会社内での呼称の1つで、「部長」とか「支店長」などと同じ役職の1つです。

「執行役員」の会社内での序列は、その会社内で決まるため外部の人が一概に判断することもできません。
執行役員でありかつ取締役でもあるケースもありますし、取締役ではない執行役員というケースもあります。

ただ業務執行を担当する役員であり会社から責任ある業務を任されている人であることは間違いないようです。

「執行役」と「執行役員」という言葉だけみると「執行役員」のほうが正式名称で取締役のようなイメージを持たれる方もいるようですが、実際は意味が異なるものだということになります。

 

 

会社の設立登記のファストトラック化

2019-06-07

平成30年3月12日から会社設立登記を申請してから原則3日以内に登記が完了するように取り組みが行われているそうです。(法務省のサイト)実際に3日で完了しているのですが、それより先に申請した他の会社の役員変更登記がまだ終わっていないこともあったりします。まさにファストトラック(優先審査制度)といえますが、他の手続きやマンパワーにしわ寄せが行かないように願うばかりです。

同一商号同一本店の禁止

2018-10-01

同一商号同一本店の禁止とは、本店及び商号が全く同じものは登記をすることができないという制度をいい、商業登記法第27条に規定があります。

「A市・・町5番1号」という場所に「株式会社オガワ」という会社が登記されているのに
「A市・・町5番1号」という場所に「株式会社オガワ」という会社を作って設立登記をすることはできないという意味です。

では
「A市・・町5番1号」という場所に「株式会社小川」という会社を作って設立登記を申請しても受理されるでしょうか?
答えは「受理される」になります。

同一商号同一本店の禁止は、本店及び商号が「全く同じ」ものが登記できないという制度ですから
「株式会社オガワ」と「株式会社小川」は「全く同じ」ではないので受理されるということになっています。

もっともここでクリアしているからとしても「不正競争防止法」に違反するとして、すでにある「株式会社オガワ」から損害賠償請求をされる可能性があることはきちんと理解しておく必要があります。

参考―商業登記法第27条
「商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。」

株主リスト

2018-09-27

平成28年10月1日から株式会社・投資法人・特定目的会社の登記の申請をする際に、添付書面として,「株主リスト」が必要となるケースが出てきました(商業登記規則61条2項・3項,投資法人登記規則3条,特定目的会社登記規則3条)。

 

■「株主リスト」が要求されるようになった趣旨は、株主総会議事録などの偽造による虚偽の役員の変更登記などを防止するためとされています。

 

■「株主リスト」の作成者は会社代表者で、会社代表者が株主リストに法務局に届け出た会社実印で証明します。

 

■「株主リスト」の添付が必要なケースは2つあります。
①登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)が必要な場合
②登記すべき事項につき株主全員の同意(種類株主全員の同意)が必要な場合

 

■「株主リスト」に記載する事項としては
①登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)が必要な場合には、
・株主の氏名又は名称
・住所
・株式の数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び数)
・議決権の数
・議決権数の割合
を記載しますが、株主が多数存在する場合は
・議決権数上位10名
・議決権割合が2/3に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主について記載することになっています。

②登記すべき事項につき株主全員の同意(種類株主全員の同意)が必要な場合には、株主全員について
・株主の氏名又は名称
・住所
・株式の数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び数)
・議決権の数
を記載することになっています。

 

小川司法書士事務所では、会社変更登記申請手続きの代理にあたり添付書面として「株主リスト」の作成も承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

会社名を何にするか(類似商号)

2018-09-27

会社設立にあたり、「会社名を何にするか?」は大事なポイントです。

設立発起人にとっては、ブランドイメージ、思い入れなどもあることでしょう。

「どうしてもこの会社名にしたい」という方もかなりの割合で相談にいらっしゃいます。

以前(といってもかなり昔、2006年までの話ですが)は、会社設立をする際には、類似商号調査を現在より慎重に行っていました。

その理由は簡単に言うと、同一市区町村内で、同一の営業目的で、すでに存在している他の会社と同一の会社名はもちろん、
類似した会社名での設立登記はできない決まりになっていたからです。

これを類似商号の禁止と言っていました。

2006年からスタートした会社法の下では、類似商号規制は廃止されました。

つまり、同一市区町村内で、同一の営業目的で、すでに存在している他の会社と同一の会社名はもちろん、
類似した会社名での設立登記も可能というわけです。

たとえば千葉県柏市で「株式会社 A商店」、「事業目的 建築業」という会社がすでに登記されていたとしても

今回、千葉県柏市で「株式会社 新A商店」、「事業目的 建築業」という会社を設立したいと思ったら
会社法上は良いですよということになっています。

しかし、会社法では良いとされていても注意が必要です。

会社法とは別に「不正競争防止法」という法律では、他人が使用している商号と誤認のおそれがあるものを使用すると、商号の不正使用として商号の使用差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。

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