遺産分割協議書の作成

相続によって不動産、預貯金、有価証券等の遺産の名義変更をするのに民法で定められた法定相続分の割合と異なる割合で分配したい場合、遺産分割協議で「誰が何を相続するか」を決めることが多くあります。

遺産分割協議の内容を書面に残したものが遺産分割協議書です。遺産分割協議書には、被相続人の特定に必要な事項を記載し、被相続人の遺産について誰が何を取得するのかを記載します。そして遺産分割協議に参加した法定相続人が署名・捺印(実印)をします。

遺産分割協議書には書き方があります。不動産であれば法務局、預貯金であれば銀行、有価証券等であれば証券会社等に提出しても通用しなかったり書き直しを求められたりすることのないようにする必要があります。

小川直孝司法書士事務所では、遺産承継業務や相続登記業務の1つとして遺産分割協議書作成サービスも取り扱っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

 

【遺産分割協議書作成の流れ】

① 遺産の確認をする。

② 誰が何を取得するのかを相続人全員で話し合いをする(遺産分割協議)。

③ 話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成する。

 相続人全員の署名・捺印(実印)

 

【遺産分割協議書作成時の注意点】

被相続人の表示について

遺産分割協議書において被相続人の特定に必要な事項としては、氏名だけでも特定できる場合もあるかもしれませんが、同姓同名の場合(特に銀行の場合)や登録されている住所が最後の住所と異なる場合などのために、氏名のほかに最後の本籍・最後の住所・生年月日・死亡年月日等も記載しておくことをお勧めします。

遺産分割協議書で、被相続人の特定のための記載例

被相続人A (1970年2月28日生・2020年3月15日死亡)

最後の本籍 千葉県柏市中央町5番

最後の住所 千葉県柏市中央町5番21号

遺産の特定について

遺産分割協議書を作成する前に被相続人の遺産をきちんと特定しておくことは大変重要です。「遺産分割協議書に記載のない遺産が後日見つかった。」ということになると、その遺産についてあらためて遺産分割協議をする必要が出てきます。「そんな遺産があったならこの遺産分割協議書にはサインしなかった。」などと新たなトラブルに発展する可能性もあります。
このようなことにならないように、もし遺産分割協議書作成時には見つからなかった遺産が後日発見された場合はどうするのかも遺産分割協議書に付記しておくといった工夫も必要となります。

遺産の表示方法について

遺産が不動産(土地・建物)や預貯金、有価証券(株式・投資信託等)複数にわたるときは、遺産目録を作成し、まとめておくと分かりやすいです。

相続人について

遺産分割協議に参加するのは、被相続人の法定相続人全員となります。
遺産分割協議に参加する法定相続人が欠けていると、せっかく作成した遺産分割協議書も意味をなさなくなってしまうことがありますので法定相続人の確定には十分注意が必要です。「しまうことがあります」と表現したのは登記実務上、同一内容の遺産分割協議書であれば、法定相続人全員が一枚の遺産分割協議書に署名・捺印をしていなくても全部の遺産分割協議書をあわせて1つの遺産分割協議書として取り扱うことも可能とされているからです。ただしこの取り扱いは登記実務での話なので、銀行や証券会社では対応してくれないかもしれません。

遺産分割協議書で、相続人Bが土地を相続する場合の記載例

「別紙遺産目録1.記載の土地については、Aが相続する。」

 

遺産分割協議書で、相続人Cが預金を相続する場合の記載例

「別紙遺産目録2.記載の預金については、Cが相続する。」

遺産分割協議に参加した法定相続人の署名・捺印

遺産分割協議書の内容に納得した証(あかし)として、遺産分割協議に参加した法定相続人は、署名・捺印をします。署名・捺印ではなく、記名・押印(署名欄があらかじめ印刷されている状態の書面に押印する方法)でも登記実務上は構いませんが、後日の証拠とするためには記名・押印ではなく署名・押印をしておくことをお勧めしています。また銀行や証券会社の対応としても記名・押印ではなく、署名・捺印を要求されるケースがあります。

 

【遺産分割協議証明書】

遺産分割協議書の形式として、1枚の遺産分割協議書に相続人全員が署名・実印を押して完成させる場合と、相続人が各自1枚ずつ遺産分割協議「証明書」に署名・実印を押して完成させる場合があります。

「1枚の遺産分割協議書に相続人全員が署名・実印を押す」形式ですと、相続人全員が一同に集まって1枚の遺産分割協議書に署名・実印を押すとか、「持ち回り」で相続人どうしで順番に遺産分割協議書に署名・実印の押印をしていくとかになります。「法事などの機会に」という場合は、事前に実印を持ち寄ってもらうということになりますがどうしても手間がかかることになります。

相続人各自から「遺産分割協議証明書」に署名・実印の押印していただく形ですと、相続人に全員集まってもらって署名・実印を押してもらう必要はありませんし、遺産分割協議書の持ち回りのやりとりも必要ありません。各相続人が遺産分割協議証明書に自分だけ署名・実印の押印をすれば足りることになりますので、司法書士と各相続人とのやりとりだけで済むということになります。遺産分割協議書も遺産分割協議証明書も効力は全く同じです。

 

【遺産分割協議書の作成-不動産の表示編】

不動産に関する遺産分割協議書の作成でよくあるミスは、手元にある固定資産税納税通知書に記載されている「課税明細書」の記載通りに遺産分割協議書にも記載してしまうケースです。

遺産分割協議書に記載する「不動産の表示」については登記事項証明書(登記簿)に記載されているとおりに記載する必要があります。

固定資産税納税通知書に記載されている「課税明細書」の記載は、固定資産税を所管する役所(市役所や都税事務所等)が固定資産税を課税するために把握している情報(現況)を元にしていますので、必ずしも登記事項証明書(登記簿)の記載と一致しているわけではありません。

たとえば建物について、たとえ現況が2階建てであっても固定資産税課税明細書では1階と2階の床面積を個別に記載せず、便宜的に延べ床面積合計で記載していることも多くあります。

また建物の構造についても登記事項証明書(登記簿)では「木造亜鉛メッキ」と登録されているのに固定資産税納税通知書の課税明細書では「木造鋼板葺」などとなっていたりもします。

遺産分割協議書の記載に間違いがあると訂正が必要となり、訂正には遺産分割協議書に署名・捺印をした全員の訂正印が必要となります。

これを見過ごして法務局に登記申請をしてしまうと書類の補正手続きに手間と時間を要することになります。

このようなことにならないように遺産分割協議書の作成にあたっては「不動産の表示」に特に注意が必要です。

※ 相続登記や遺産承継業務に付随して司法書士も遺産分割協議書の作成を承っておりますのでお気軽にご相談ください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

0471604488電話番号リンク 問い合わせバナー