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「遺言による信託」と「遺言信託」
信託というと、財産を託す人と財産を託される人、委託者と受託者との間の「契約」であって、登場人物は二人以上必要、というイメージがあるかもしれませんが、遺言によって信託を設定することもできます。用語としては、「遺言による信託」です。遺言は単独行為ですから、一人で行うものです。
いっぽうで、銀行や信託銀行の前を通るとチラシやポスターで「遺言信託」という言葉を見かけることがあると思います。
この「遺言信託」は、家族信託でいう「遺言による信託」とはまったく違うものです。
司法書士事務所に信託の相談に来られる方の中にも、この点について勘違いをされている方がいらっしゃるのですが、銀行などで扱っている「遺言信託」というのは「商品名」として使用されているもので、信託法でいう「信託」のことを指しているわけではありません。
銀行などで扱っている「遺言信託」は、私の知る限り、銀行が、お客さんの遺言書の作成のサポートをしたり、作成された遺言書の保管をしたり、実際に遺言書を作成した人が亡くなった際の遺言執行をするサービスを指しています。遺言執行にあたり相続税の申告が必要な場合は、提携先の税理士を紹介されます。税理士の相続税理申告代理手数料は、この遺言信託の手数料には含まれず別途かかるようです。
遺言書の作成のサポート、作成された遺言書の保管、遺言執行者の引き受けは、いずれも銀行だけが取り扱うことのできる仕事ではありません。
私のような司法書士や弁護士でもごく普通の業務として携わっている仕事になります。
ちなみに同じく銀行の窓口などで見かける「遺産承継業務」も、司法書士や弁護士が業務として扱っている仕事です。
銀行口座を持っている人が遺言書を作りたいというタイミングが合えば、銀行の人にそのまま遺言書作成のサポートをお願いする、というのが銀行で扱っている「遺言信託」という「商品名」です。
銀行口座を持っている人が亡くなったということで、相続人の方が銀行の窓口でその申し出をした際に、ついでに遺産承継業務をそのまま銀行に頼む、というのが銀行で扱っている「遺産承継業務」という「商品」です。
いずれも「信託法」でいう「信託」とは全く違うものです。
どうしても「信託」ということばを結びつけるならば、「遺言信託」は「遺言書を作成してそれを銀行に預ける(信託)」というイメージなのでしょうか。
「遺言信託」で銀行に遺言書を保管してもらうにも保管料がかかります。
遺言書をつくった人以外の人に遺言書を保管してもらわなくても、万が一その人が遺言書を失くしてしまったら、公正証書遺言であれば公証役場で原本は保管されていますから
その謄本を発行してもらうことができます。
また日本公証人連合会では、遺言書検索システムがありますので、昭和64年1月1日以後に公正証書で遺言を作成した分については検索が可能になっています。
これらのことも踏まえて遺言書の作成、遺言執行、家族信託など財産の承継について考える場合は、それらの内容と共に、どこに何のサポートを依頼していくのが良いのかを検討していく必要があります。

千葉県柏市で2002年に開設した司法書士事務所です。相続や遺言、家族信託など、相続手続きを中心に、丁寧かつわかりやすい対応を心がけています。「ちょっと聞いてみたい」そんな気持ちに寄り添えるよう、平日夜や土日祝のご相談にも対応しています。一人で抱え込まず、気軽にご相談ください。
平均寿命
平成29年7月2日に厚生労働省から発表された「平成28年簡易生命表の概況」によりますと、男性の平均寿命は80.98年、女性の平均寿命は、87.14年だそうです。
男女ともに過去最高(男性80.75年、女性86.99年、ともに平成27年)を更新しているとのことです。
「平均寿命」といってもいま0歳の人の平均余命のことを指しているのであって、たとえばいま生きている私の余命が80.75歳まであるというわけではありません。
ただこの簡易生命表のデータを見ていくと、各年齢の人が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などが掲載されています。
確実に言えることは、超高齢社会の中で自分はどのように生きていくか、65歳以上の5人に1人が認知症有病者になると言われている中で、どのように支えあっていくか少なくとも成年後見業務を遂行している立場の者としては、一般の方々よりは積極的に深く考えて立ち居振る舞いをしていかなければならないと感じている年末です。

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家族信託と登録免許税
家族信託を利用して不動産を信託財産に組み入れる場合、所有権移転と信託の登記を申請することになります。
その場合の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。土地については平成31年3月31日までは0.3%になっています。
通常の所有権移転登記の場合、登録免許税は2%ですから信託の登記を申請する場合、通常の所有権移転登記より低額になります。

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家族信託と贈与税
家族信託では贈与税がかからないと言われることがあります。
結論から言うと「かからない場合もあるし、かかる場合もある。」ということになります。
信託では、「委託者」と「受託者」と「受益者」が登場するわけですが、委託者と受益者が同一人物である場合には、実質的に財産(利益)の移転はないため、贈与税の対象にはなりません(自益信託)。
これに対し、委託者と受益者が異なる場合は、信託契約を締結した時点で、委託者から受益者に財産が移転したとみなされますので、贈与税の対象になります(他益信託)。
家族信託においては、自益信託(委託者と受益者が同一人物である場合)を念頭に進めていくことがほとんどですから、家族信託契約をした途端に贈与税がかかるといったことはないでしょう。
しかし、税務面を考慮しないで安易に家族信託を組成してしまうと思わぬところで「こんなはずじゃなかった。」ということになってしまいますので注意が必要です。
家族信託を考える際には、受益者を誰にするか、どのような順序で受益者を並べるかが贈与税の面からも重要なポイントになってきます。

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市立柏の吹奏楽部チャリティーコンサート
柏市立柏高校の吹奏楽部のチャリティーコンサートに行ってきました。今年も各コンクールやコンテストで五冠を達成したとのことですが、それはそうでしょうと思えるほどで、とても高校生たちの演奏とは思えないほど素晴らしい内容のものを見せてもらえました。
あれだけの演奏を披露できるようにするためには、尋常ではない量の練習を毎日積み重ねてきているはずで素人の私は、ただただ感心するばかりでした。
もともと吹奏楽にはまったく興味のなかった私ですが、ここ数年知人に誘われて市立柏のチャリティーコンサートを見に行くようになりました。
今回改めて驚いたのは、ホールの後ろから入って来た吹奏楽部員の方たちの表情でした。私たち観客は、間近で彼らを目にすることになるわけですが、照明の暗い階段を駆け下りるときも部員の皆さんは、きちんと顔をあげてキリッとした表情で演奏・演技をされていました。演奏能力はもちろん、意識の高さを感じましたし、それが二百数十名の部員の方たちに共有されているようにも感じられ、ここに来るまでどれだけ練習してきたんだろうかと思いました。全く関係ない分野ですが自分も毎日の仕事を頑張らないといけないなぁと思い知らされた次第です。
市立柏高校吹奏楽部以外の演奏を知らない私ですが、すぐ近くでこのような素晴らしい演奏を観られるというのは幸せなことです。高校や先生はもちろん、後援会や柏市、柏市社会福祉協議会などもバックアップして成り立っている市立柏吹奏楽部は、最近はテレビなどでも取り上げられることの多くなりました。まだ実際にご覧になったことのない方は、是非一度その演奏を見に行っていただきたいです。
来年春には、招待で中国に遠征するとのことですが旅費は市立柏吹奏楽部が負担するそうなので募金も受け付けているそうです。アップした写真は柏音楽大使任命式の様子で公開可とのことでした。

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家族信託と相続税
家族信託を利用すると、その設定の仕方次第で「相続対策」には有効な場合がありますが、
家族信託の利用が「相続税対策」に有効かというと、結論から言うと利用してもしなくても変わらないということになります。
家族信託を利用しても相続税の評価については、土地については路線価を、建物については固定資産税評価額を基準に評価するのは変わりません。小規模宅地の特例制度についても、家族信託を利用した場合も適用されます。
家族信託は相続税対策に有効だと誤解をされる方もいるようですが、「相続対策」と「相続税対策」とは違うということは理解しておく必要があります。

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障害者基本法の理念と目的
障害者基本法は、平成5年にそれまであった心身障害者対策基本法から名称が改められたものです。
法律の目的として、第1条には、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進すること」と定められています。それまでの医療、保険からの規律に福祉の観点をプラスしたもののようです。
条文の表現だとわかりにくいですが、内閣府のホームページの説明によると、「障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加の促進を規定し、障害者の「完全参加と平等」を目指す」とされています。
また、この法律の対象になる障害者という用語の定義は、第2条にあります。
「障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」をいうとされています。
地域社会における共生の1つとして、第3条では、障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されると規定されています。
また全て障害者は、
・可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられない、
・可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られる、と規定されています。
これらの理念を実現するために、政府は障害者の福祉等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を策定しなければならないとし、地方公共団体においてもこれに準じた計画の策定に努めなければならないとしています。
つまり、障害があることによって障害がない人が享受できているもの(社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会、どこで誰と生活するかについての選択の機会、地域社会において他の人々と共生すること、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会)が奪われてはいけない、ということになると思います。
文字だけを見るとあたりまえのことのように感じるかもしれませんが、このように法律で規定し、国や地方公共団体への責務も定めなければならないほど、障害者の方たちに対する不利益があったということですし、今も存在しているということになるのだと思います。
普段私のような司法書士が目にする法律は、権利や義務の発生、変更、消滅の要件などを規定しているものが多いわけですが、それらの法律の体裁とはちょっと異なったものなので引用してみました。私としても常にこのような視点をもって日々の成年後見業務にあたっていかなければならないと感じたところです。

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リーガルサポートの名簿更新
成年後見センター・リーガルサポートの会員は、2年に一度名簿更新があります。一定の研修を受講し更新手続きを行います。今年も更新手続きが終わりましてこれからまた2年のうちに次の更新手続きに向けて研修を受講していくことになります。

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家族信託についての連載記事
11月18日の朝日新聞Beに家族信託についての連載記事「家族信託を知る」が出ていました。毎週土曜日に5回にわたって載るみたいです。
一般の人にわかりやすいようにイラスト付きで書かれていましたが、一回読んだだけでは何のことか分からないのではないかなぁと思いました。
NHKのあさイチでも紹介されるようですし、少しずつ認知されていけば良いなぁと思います。
家族信託が知られるようになれば、相続をめぐる実務も必ず大きく変化していくと思います。

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時効取得の要件としての自主占有
民法第162条の規定が時効取得に関するものです。
1.20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2.10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
この規定から、時効取得が成立するためには、
①所有の意思をもった占有(自主占有)
②平穏かつ、公然とした占有
③一定期間占有が継続していること(20年間または10年間)
④③が10年間の場合は、占有の開始時に、善意かつ無過失であること
が必要とされています。
ここで①の所有の意思をもった占有(自主占有)とは、どのようなことをいうのかがわかりにくいと思います。
所有の意思をもった占有(自主占有)とは、自分ものだと思って占有することをいいます。時効取得という一定の期間の経過を経て所有権を原始取得するという制度があるとおり、その時点で実際に所有権を有している必要はありません。
自主占有という用語の反対は、他主占有という用語になります。
他主占有とは、自主占有以外の占有とされていますので、所有の意思をもっていない占有ということになります。具体的には、実際の所有者から借りている状態の占有や、実際の所有者から預かっている状態の占有をいいます。
ですから、実際の所有者から土地を借りている人(借地人)が、その占有期間が10年経とうが20年経とうが、自主占有ではなく、他主占有なのですから、民法第162条による時効取得は成立しないわけです。
土地を貸していた人にとっても、いきなり借地人が「時効取得で俺のものだ」と言われてもビックリしてしまいますよね。
ところで農地の時効取得については農地法の許可は不要とされていますが、農地法の許可がない状態での占有は、そもそも所有権が移転していないのだから、所有の意思をもった占有(自主占有)といえるのだろうかという問題があります。
事例としては、A名義の農地をBが買いたいということで売買契約を締結し、BはAに売買代金も支払い、占有も開始していた、農地法の許可が得られないまま10年または20年が経過したようなケースです。
最高裁判所第一小法廷は、占有における所有の意思の有無の判断基準について、昭和45年6月18日判決において、「占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきであり、原審の確定した事実によれば、前示の賃貸借が農地調整法5条(昭和21年法律第42号による改正前のもの)所定の認可を受けなかつたため効力が生じないものであるとしても、上告人の占有をもつて他主占有というに妨げなく、同旨の原審の判断は正当として首肯することができる。」と判示して、所有の意思は、占有開始の原因から外形的客観的に定められるとしました。
よって、農地法の許可がなくても、占有開始時点で所有の意思をもった占有であると外形的客観的に判断できれば、自主占有であるといえることになります。
上の判例は、他主占有であることを認定した事案ですが、自主占有であることを認定した事案としては、最高裁判所第一小法廷昭和52年3月3日の判決「農地を賃借していた者が所有者から右農地を買い受けその代金を支払つたときは、当時施行の農地調整法4条によつて農地の所有権移転の効力発生要件とされていた都道府県知事の許可又は市町村農地委員会の承認を得るための手続がとられていなかつたとしても、買主は、特段の事情のない限り、売買契約を締結し代金を支払つた時に民法185条にいう新権原により所有の意思をもつて右農地の占有を始めたものというべきである。」
最高裁判所第二小法廷平成13年10月26日の判決「農地を農地以外のものにするために買い受けた者は,農地法5条所定の許可を得るための手続が執られなかったとしても,特段の事情のない限り,代金を支払い当該農地の引渡しを受けた時に,所有の意思をもって同農地の占有を始めたものと解するのが相当である。」
があります。

千葉県柏市で2002年に開設した司法書士事務所です。相続や遺言、家族信託など、相続手続きを中心に、丁寧かつわかりやすい対応を心がけています。「ちょっと聞いてみたい」そんな気持ちに寄り添えるよう、平日夜や土日祝のご相談にも対応しています。一人で抱え込まず、気軽にご相談ください。