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抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記をした抵当権の抹消

2017-08-21

抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記をした抵当権についてその抵当権の登記の抹消を申請する場合に提供すべき登記識別情報について(通知)(平成17年8月26日付法務省民二第1919号)

「抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記をした後、この抵当権の登記の抹消を申請する場合に提供すべき登記識別情報は、この抵当権について設定の登記がされた際に通知された登記識別情報のみで足りる。」

抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更登記をした際には、法務局から抵当権者に登記識別情報は通知されませんので、この抵当権を抹消する場合には、当初抵当権設定登記をしたときに交付された登記識別情報を提供することになります。

一見当たり前のことを言っているようですが、登記識別情報制度以前には、抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記では、登記済証が発行されていたので、私も含め当時から登記実務に携わっている人からすると一瞬「あれ?」と困惑してしまうこともあるかと思います。

登記識別情報制度以前に抵当権設定登記をして抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記をしていた場合には、抹消登記には抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更登記済証の添付が必要となります。

遺産分割協議書の取り交わし

2017-08-16

相続登記を申請する場合、遺産分割協議書を作成して民法に定める法定相続分とは異なる割合で、特定の相続人に名義を変更することが多いと思います。

遺産分割協議書の形式として、1枚の遺産分割協議書に相続人全員が署名・実印を押して完成させる場合と、相続人が各自1枚ずつ「遺産分割協議証明書」に署名・実印を押して完成させる場合があります。

「1枚の遺産分割協議書に相続人全員が署名・実印を押す」形式ですと、相続人全員が一同に集まって1枚の遺産分割協議書に署名・実印を押すとか、「持ち回り」で相続人どうしで順番に遺産分割協議書に署名・実印の押印をしていくとかになります。「法事などの機会に」という場合は、事前に実印を持ち寄ってもらうということになりますがどうしても手間がかかることになります。

そこで「遺産分割協議証明書」として、相続人が各自1枚ずつ「遺産分割協議証明書」に署名・実印を押して完成させる方法をとるケースもあります。

相続人各自から「遺産分割協議証明書」に署名・実印の押印していただく形ですと、相続人に全員集まってもらって署名・実印を押してもらう必要はありませんし、遺産分割協議書の持ち回りのやりとりも必要ありません。各相続人が遺産分割協議証明書に自分だけ署名・実印の押印をすれば足りることになりますので、司法書士と各相続人とのやりとりだけで済むということになります。

遺産分割協議書も遺産分割協議証明書も効力は全く同じです。

相続登記や遺産承継業務に付随して司法書士も遺産分割協議書の作成を承っておりますのでお気軽にご相談ください。

公証人による本人確認

2017-08-14

親族間で土地・建物を売買したり、第三者に売却したり。生前贈与(夫婦間の居住用不動産の贈与)をしたり、銀行で住宅ローンの借り換えをする場合などに権利書(登記識別情報又は登記済証)をなくしてしまった等の事情により、法務局へ提出することができない場合があります。

この場合、不動産登記法第23条第4項第2号による「公証人の認証による本人確認」という制度によって、対応するケースがあります。

不動産登記法第23条第1項では次のように規定されています。
「登記官は、申請人が前条(第22条-登記識別情報の提供)に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない。この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。」

この規定は、原則として登記識別情報等の提供が必要であるとし、もし提供できない場合は登記義務者に対して、登記官という法務局の担当職員から、「登記申請がありました。その登記申請は間違いありませんか?回答してください。」と通知し、その回答を一定期間を設けて求めています。いわゆる「事前通知」というものになります。この期間内に登記義務者から回答がないと、登記申請は却下されてしまいます。

このような事前通知の規定に対し、不動産登記法第23条第4項では
第1項の規定(登記識別情報の提供や事前通知)は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない。としています。

そして登記識別情報の提供や事前通知を適用しない場合として不動産登記法第23条第4項第2号では、
「当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人(公証人法 (明治四十一年法律第五十三号)第八条 の規定により公証人の職務を行う法務事務官を含む。)から当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるとき。 」
と規定しています。

この規定によると

■公証人が登記義務者(不動産の名義人)であることを確認するために必要な認証をして

■登記官がその内容を相当と認めるとき

これら双方を充たしていれば、事前通知をせずに権利書がなくても登記申請が受理されることになります。

この公証人の認証の文言については、平成17年2月25日法務省民二第457号という通達で具体的に定められています。

(1)申請書等について次に掲げる公証人の認証文が付されている場合には、不動産登記法第23条第4項第2号の本人確認をするために必要な認証としてその内容を相当と認めるものとする。

ア 公証人法第36条第4号に掲げる事項を記載する場合
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)した。本職は、右嘱託人の氏名を知り、面識がある。よって、これを認証する。」
又は
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)したことを自認する旨陳述した。本職は、右嘱託人の氏名を知り、面識がある。よって、これを認証する。」

イ 公証人法第36条第6号に掲げる事項を記載する場合
(ア)印鑑及び印鑑証明書により本人を確認している場合の例
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)した。本職は、印鑑及びこれに係る印鑑証明書の提出により右嘱託人の人違いでないことを証明させた。よって、これを認証する。」
又は
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)したことを自認する旨陳述した。 本職は、印鑑及びこれに係る印鑑証明書の提出により右嘱託人の人違いでないことを証明させた。よって、これを認証する。」

(イ)運転免許証により本人を確認している場合の例
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)した。 本職は、運転免許証の提示により右嘱託人の人違いでないことを証明させた。よって、これを認証する。」
又は
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)したことを自認する旨陳述した。本職は、運転免許証の提示により右嘱託人の人違いでないことを証明させた。よって、これを認証する。」

登記申請の委任を受ける司法書士としては、登記義務者本人と一緒に公証役場に行き、登記義務者本人に署名・実印を押してもらう登記申請に関する委任状に公証人の面前で署名してもらい上記の認証文の入った書面と合綴してもらい法務局に提出することになります。

司法書士は登記申請の委任を受ける際は、本人確認・意思確認を行っていますが、公証人とともにこれを行っているような感じになります。

このことからも分かるとおり、権利証または登記識別情報を紛失したので代わりに公証人による本人確認を利用したいという場合、登記申請手続きに伴ってということになります。司法書士が登記申請手続きを前提としないで公証人による本人確認制度を利用したサポートをすることは想定していません。また売買や贈与などを原因とした所有権移転登記申請の場合、権利証又は登記識別情報を提供するのは登記義務者(売買の場合は売主、贈与の場合は贈与者)ですが、司法書士は登記権利者(売買の場合は買主、贈与の場合は受贈者)からも登記申請行為の委任を受ける必要がありますので、権利証または登記識別情報を紛失して公証人による本人確認制度を利用する場合は、その方からもどこの司法書士を利用するのかを事前に確認しておいた方が良いということになります。

ちなみに公証人の手数料は3500円です。

小川直孝司法書士事務所では「公証人による本人確認制度」を利用した登記手続きも行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

成年後見人の取り消し権

2017-07-29

成年後見人の取消権については、民法第9条に規定されています。

民法第9条
「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」

成年後見人が、成年被後見人に対して、「~を買って良いですよ」と特定の法律行為に対して同意をしたとしても、取り消すことができるとされています。

想定される場面はかなり限定されると思いますが、成年被後見人から「成年後見人から同意を得ている」と聞いて、お店の人が成年被後見人と取引(高価な品物の売買)をしたような場合、取引の相手方(お店)としてはたとえ「後見人が同意していた」としても、成年被後見人後見人からの売買契約の取り消しの主張を認めざるを得ないということになります。それだけ成年被後見人の保護を図る要請が高いということになります。

誰が取り消すことができるのか(取消権者)については、民法第120条第1項の規定により、成年被後見人本人(とその承継人)と成年後見人とされています。

民法第120条第1項
「行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。」

民法第9条ただし書には、「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定されています。

成年被後見人であっても「日常生活に関する行為」については、取り消しの対象とはされていません。成年被後見人の自己決定権の尊重の観点からこのように規定されています。もっとも、行為時点で成年被後見人が完全な意思無能力の状態だった場合は、そもそも法律行為は無効となりますので取り消しの話にはなりません。

またこれに関連して成年被後見人の身分行為(婚姻、協議離婚、認知、遺言など)についても、成年被後見人が意思能力を回復した状態であれば、成年被後見人が単独で行うことができるとされています。

婚姻について
民法第738条
「成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。」

協議離婚について
民法第764条
「第738条、第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。」とされていますので、成年被後見人が協議離婚をするには、その成年後見人の同意を要しない。ということになります。

認知について
民法第780条
「認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。」

遺言について
民法第962条
「第5条、第9条、第13条 及び第17条 の規定は、遺言については、適用しない。」とされていますので、成年被後見人のした遺言を成年後見人が取り消すことはできないということになります。

これらの行為は一身専属的なものであり成年被後見人の本人の意思の尊重をすべきとの観点からこのように規定されています。

このことからも分かるように
「遺言書の作成は成年被後見人にはできない。」というのは字面からいうと間違っていることになります。

詐欺による契約の取り消し

2017-07-27

民法第96条では

第1項で「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」

第2項で「相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。」

第3項で「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」

と規定されています。

「詐欺又は強迫」となっていますが今回は「詐欺」の部分について考えてみたいと思います。

「詐欺」という言葉は、いろいろな場面で、いろいろな意味合いで使われたり発せられたりすることがありますが、民法第96条で使用される「詐欺」は、一定の要件を充たせば特定の「意思表示を取り消すことができる」という効果が認められる、という意味での「詐欺」になります。

ですから「だまされたから契約を取り消したい」という場合でも、民法第96条第1項に定める「詐欺による意思表示の取り消し」に該当するかどうかについては、具体的に検討していく必要があります。

民法第96条に定める意思表示の取り消しが認められるための詐欺の要件は次の4つです。
1.詐欺をした者の故意
2.詐欺をした者の違法な欺罔行為
3.2.の欺罔行為に基づく表意者の錯誤
4.3.の錯誤に基づく特定の意思表示

保佐開始の申立-1

2017-07-25

「保佐」とは、ふだんの買い物くらいは一人でできるけど、自宅のリフォーム契約や有料老人ホームの入所契約、自宅の処分など、重要な財産行為を一人で進めるのは難しいというような場合、保佐開始の申立を受けて「本人の判断能力が著しく不十分」であると家庭裁判所が認めた場合に利用できる制度です。

民法第12条では「保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。」と規定されています。「保佐開始の審判」とともに「代理権付与の審判」も求めることが通常です。

保佐開始の審判をするにあたり、保佐開始自体について、本人の同意は必要ありませんが、保佐人に代理権を付与するためには本人の同意が必要とされています(民法第876条の4第2項)。

保佐開始の申立書を家庭裁判所に提出する際には、可能であれば本人が書いた「代理権付与についての同意書」を添付することが多いです。

本人が「代理権」の内容に同意していないとか、保佐制度自体を理解できていない等の事情があって同意書が添付できない場合もよくありますが、そのような場合は、そのまま申立書を家庭裁判所に提出することになります。

家庭裁判所の調査官は、本人と面接をおこない、代理権の付与について同意するかどうかを確認します。本人のこれからの生活にとって、保佐人に代理権を付与することが必要なのかどうか、余計な代理権を付与したり、本人の生活をかえって不自由にしてしまうような代理権を付与することがないように1つ1つの代理権について、本人に説明をしながら同意の有無を確認しているようです。

もっとも「保佐開始の申立書」に「本人の同意書」が添付されていても、家庭裁判所の調査官は本人と面接を行い、同意書の記載内容に間違いがないか確認することが多いので、この点からも「保佐開始の申立書」の提出にあたり同意書の添付がどうしても必要ということではないと言えます。

 

後見終了の登記

2017-07-23

被後見人が死亡した場合、後見人が「後見終了の登記」を申請する必要があります。

家庭裁判所に対して「後見事務終了事務報告書」を提出する場合も、東京法務局に対して「後見終了の登記」を申請したかどうか確認されますので注意が必要です。

「後見終了の登記」申請のための手数料はかかりません。

「後見終了の登記」申請書は法務局のホームページからダウンロードできます。

「後見終了の登記」申請書に添付する必要がある書面は、戸籍(除籍)の謄抄本又は死亡診断書となります。ただし法務局において住民基本台帳ネットワークを利用して死亡の事実を確認することができるときは,戸籍(除籍)の謄抄本の添付を省略することができます。

「後見終了の登記」申請先は全国で1箇所のみで東京法務局の後見登録課になります。

〒102-8226
東京都千代田区九段南1-1-15
九段第2合同庁舎東京法務局民事行政部後見登録課
(03-5213-1360)

「後見終了の登記」申請は、郵送でもできますが、簡易書留郵便又は信書便(引受け及び配達の記録を行うもの)で送付することになります。

3か月を経過した相続放棄の申述の申立

2017-07-02

相続放棄の申述は,自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないことになっています(民法第915条第1項)。

第915条1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

第915条2項
相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

しかし、その「3か月」を経過した後に相続放棄をしたいと考える事情が出てくる場合もあります。

たとえば、自分の父親が死亡した時点では、父の遺産はプラスもマイナスも全く存在しなかった(と思っていた)ので、相続放棄も含め何も手続きをしないでいたところ、死後3か月以上が経過した頃、クレジット会社から父親名義の立替金債務について、「あなたは亡父○○様の相続人なので相続債務として支払う義務があります。」として督促が来たという場合です。

最高裁判所は、昭和59年4月27日第二小法廷判決
「相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。」として民法915条1項所定の熟慮期間について、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当であるとしました。

上記の例でいえば、自分の父親の死亡を知ってから3か月以上が経過したとしても、父親の生前の生活状況や父親との交流状況などから、家庭裁判所において、相続放棄の申述を申し立てた相続人が、相続放棄の申述の申立を父親が死亡したこととを知ってから3か月以上経過してから行ったとしても、父親名義の相続財産が全く存在しないと信じていたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由があると認めた場合には、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識できると考えられる時から3か月の期間がスタートするということになります。

上記の最高裁判所の判決では、「相続財産が全く存在しないと信じた」という文言を用いて結論を導いているため、もし相続人において「遺産の一部でも存在していたこと」を認識していた場合には、判決の文言にそのまま当てはめますと相続放棄の申述の申立は受理されないように思われます。

この点については、最高裁判所レベルでは判例が出ていませんが、高等裁判所でいくつか決定等が出ています。

損害賠償請求 平成17年7月14日 最高裁判所第一小法廷判決

2017-07-02

公立図書館に収蔵されていた自分の著作物が、独断的な評価や個人的な好みによって廃棄処分になっていた場合、著作者は損害賠償請求ができるかという事案について最高裁判所の判決があります。

公立図書館の職員である公務員が、閲覧に供されている図書の廃棄について、著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをすることは、当該図書の著作者の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというのが最高裁判所の判断です。

東京高等裁判所は、著作権又は著作者人格権等の侵害を伴う場合は格別として、著作者は何ら法的権利を有しないとして損害賠償請求を退けました。
しかし最高裁判所は、東京高等裁判所の判断を破棄し著作者からの損害賠償請求を認めました。

■最高裁判所が認めなかった東京高等裁判所の判断(東京高等裁判所 平成16年3月3日判決)
・著作者は、その著作物を図書館が購入することを法的に請求することができる地位にはない。
・著作者は、その著作物が図書館に購入された場合でも、当該図書館に対し,これを閲覧に供する方法について、著作権又は著作者人格権等の侵害を伴う場合は格別、それ以外には法律上何らかの具体的な請求ができる地位に立たない。
・したがって、図書館に収蔵され閲覧に供されている書籍の著作者は、その著作物が図書館に収蔵され閲覧に供されることにつき、何ら法的な権利利益を有しない。
・そうすると、本件廃棄によって権利利益が侵害されたことを前提とする主張は採用できない。

■最高裁判所の判断理由は大要以下のような論旨で損害賠償請求を認めました。
・公立図書館は、地方公共団体が設置した公の施設である。
・公立図書館は、住民に対して思想,意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場ということができる。
・公立図書館の図書館職員は、公立図書館が上記のような役割を果たせるように、独断的な評価や個人的な好みにとらわれることなく、公正に図書館資料を取り扱うべき職務上の義務を負うものというべきである。
・公立図書館の図書館職員が、閲覧に供されている図書について独断的な評価や個人的な好みによってこれを廃棄することは、図書館職員としての基本的な職務上の義務に反する。
・公立図書館が、住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは、そこで閲覧に供された図書の著作者にとって、その思想,意見等を公衆に伝達する公的な場でもある。
・したがって、公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該著作者が著作物によって
その思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なう。
・著作者の思想の自由・表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると、公立図書館において、その著作物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は、法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当である。
・本件廃棄処分は、公立図書館職員が、著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって行ったものであるから、本件廃棄処分により、著作者の人格的利益は違法に侵害された。

と展開しています。

 

重度心身障害者の医療費助成制度

2017-06-29

重度心身障害者の疾病にかかる医療費から保険給付の額を控除した額について助成される制度があります。

助成の対象になる人は各自治体によって異なるようですが
おおむね
□身体障害者手帳1級、2級いずれかの手帳所持者
□療育手帳マルA、Aの1、Aの2いずれかの手帳所持者のようです。

この助成が受けられれば
小川直孝司法書士事務所がある柏市の場合ですと自己負担が通院1回、入院1日につき300円の負担となり保険調剤は無料となります。
市町村民税所得割非課税世帯は無料です。

65歳以上で新たに助成対象の障害者手帳が交付された人は、この助成の対象外とのことで後期高齢者医療保険で対応することになるそうです。

後見人に就任した時点で、被後見人が障害者手帳を所持している高齢者である場合もよくありますが、そのような場合ですとこの助成の対象となり医療費の負担が抑えられ助かります。

逆に後見人に就任してから被後見人の障害者手帳を取得するような場合、この助成の対象外となり、後期高齢者医療保険の枠組みで医療費を負担するわけですが、後見人の仕事をしている中では被後見人の経済的なやりくりが厳しい場合も多く、収支の見通しを立てるのも困難というケースもあります。そのような場合、被後見人を支える福祉関係者のアドバイスや協力を得ながら少しずつ前に進むしかありません。

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