相続のご相談を受けていると、「親の家が未登記だったのですが、どうすればいいですか?」というご質問をよくいただきます。未登記建物に関する手続きは、通常の登記済み不動産と比べて少し複雑で、不安を感じられる方も多いのが現状です。
今回は、未登記建物の相続について、専門用語をなるべく使わずに、順を追って丁寧に解説していきます。相続の第一歩として、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
このページの目次
【未登記建物とは?】
まず、「未登記建物」とはどういう状態かご存知でしょうか?
建物や土地などの不動産は、本来、法務局に所有者情報を記載(登記)しておくことで、その不動産が誰のものかを第三者に対して主張できるようになります。ところが、何らかの事情で建物の登記がされていない状態、つまり法務局に所有者の情報が登録されていない建物を「未登記建物」といいます。
【未登記建物の例】
- 昭和の時代に建てられた古い家屋で、建築当初から登記されていなかったケース
- 自己資金で建物を建てたため登記の必要性を知らずにそのまま放置していたケース
- 増改築を行った後に登記を怠ってしまったケース
【なぜ登記されていないと困るのか?】
未登記建物のままでは、次のような問題が発生します:
- 相続登記ができない:登記されていない建物は、法務局の登記情報では検索できず「所有者」が誰か分からない状態です。その建物の名義を相続人に変更するためには、まず「登記する」必要があります。
- 売却・担保提供が不可能:登記されていない建物は、第三者に対してその所有を証明できないため、売却や住宅ローンの担保として利用できません。
- 相続人間のトラブルの原因に:登記されていないことで「誰のものか」が不明確なため、相続人同士で揉める原因にもなり得ます。
- 相続人が複数いる場合などは、特に登記をしないことで大きなトラブルにつながる可能性があります。
【未登記建物の相続手続きの流れ】
未登記建物を相続する場合、次のような手順で手続きを行います:
- 固定資産税の通知書を確認
まず、その建物に対して誰の名義で固定資産税が課税されていたのかを確認します。
これは市区町村から送られてくる納税通知書に記載されています。
多くの場合、被相続人(亡くなった方)の名前になっていますが「納税管理人」や「相続人代表者」が記載されている場合もあります。
- 表題登記を行う(必要に応じて)
建物が一度も登記されていない場合、最初に「表題登記」という手続きが必要です。
これは建物の所在地・構造・床面積などの物理的な情報を法務局に登録するもので、土地家屋調査士が行う専門的な手続きです。
この登記は相続人から相続人の名義で申請することができます。
- 所有権保存登記
表題登記が完了したら、次に「所有権保存登記」を行います。
これは、建物の所有者を登記記録の権利部という欄に登記する作業です。この段階で、登記識別情報(権利証にあたるもの)が発行されます。
【未登記建物の相続に必要な書類】
未登記建物の相続登記には、以下の書類が必要になります
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票
- 固定資産評価証明書(市区町村役場で取得)
- 相続関係説明図(司法書士が作成)
- 遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)
- 建物の写真、建物図面等(表題登記時に必要)
【未登記建物の相続費用の目安と期間】
建物の状態や所在地域によっても異なりますが、一般的な費用の目安は、
土地家屋調査士(表題登記):10万円〜20万円前後
司法書士(保存登記・相続登記):3万円〜5万円程度
登録免許税(固定資産評価額×0.4%)
期間としては、必要書類が揃ってから1ヶ月〜2ヶ月程度が一般的です。
【まとめ】
未登記建物の相続は、通常の相続よりも手続きが増えるため、放置してしまうと相続人全員が高齢化したり、戸籍の取得が困難になるなどの問題が発生します。
そのため、できるだけ早く司法書士や土地家屋調査士といった専門家に相談し、必要な登記を済ませておくことがスムーズな相続の第一歩となります。
不動産の相続でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。