成年被後見人名義の既存口座への後見設定の際、成年後見人の負担が軽減されます?

 2021年2月12日に総務省行政評価局行政相談管理官室から成年被後見人名義の既存口座に後見設定する際の金融機関における被後見人の本人確認-行政苦情救済推進会議の意見を踏まえたあっせんに係る金融庁の取組-がリリースされました。

 成年後見人が被後見人がもともと持っていた銀行口座について、成年後見人の設定手続きをしようとする場合、成年後見に関する登記事項証明書だけで完了できるように銀行を監督する立場の金融庁に対しあっせんをし金融庁監督局も傘下の金融機関に通知をしたとのことです。

 たとえばAさんについて司法書士小川直孝が成年後見人に就任したとします。
 Aさんがもともと持っていた銀行口座については、成年後見人である司法書士小川直孝が責任をもって管理していくことになりますので
銀行に対して成年後見人に就いた旨の届出をし、通帳の名義も「A」ではなく「A成年後見人小川直孝」などという形式に変更してもらう必要があります。

 この後見設定の手続きをする際に、銀行に対して何の書類を提出する必要があるのか?ということになりますが上記あっせんでは、「成年後見に関する登記事項証明書」で足りるとなっています。

 この点、私も実際に経験があるのですが被後見人であるAさんの本人確認書類の提出を求められたことがありました。
 すでに判断能力が衰えていたりして本人の権利擁護の観点から成年後見の届出をしようとしているのに「うちではこれが決まりですから」と本人しか保管していない公的証明書等の提出を強く求めてきた銀行もありました。

 また被後見人であるAさんが届けていた銀行印を後見設定届に押すように求めてきた銀行もありました。
 Aさんの意思が確認できない状態なのにAさんが銀行に届けていた印鑑を別人の成年後見人に押させる意味があるのでしょうか。

 コロナ禍も重なって脱ハンコの流れが進んでいるようですが上記あっせんはこれとは違う理由、つまり「成年後見人であることの証明は裁判所の審判をもとに成年後見の登記事項証明書で尽くされており被後見人の本人確認書類としてもこれで足りる。」ということによるものだと思います。

ただ実際の成年後見の設定手続きでは、「成年後見に関する登記事項証明書」だけではなく
・成年後見人の本人確認書類
・成年後見人として届け出る印鑑
・Aさんがこれまで使用していた通帳やキャッシュカード(手元にあれば)
も必要となります。

 今回の通知がされることで今後の成年後見業務を担う人たちがスムーズに成年後見の設定を済ませられるようになることは良いことだと思いますし、このようなことの積み重ねが成年後見制度を社会に浸透させていくことに繋がるのだと思います。

 

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