賃借人の死亡と保証人の責任

アパートの1室を借りていた人(賃借人)が契約途中で死亡してしまった場合、大家さんと賃借人との間の賃貸借契約の事後処理について相談を受けることがあります。

大家さんから相談を受ける場合は、保証人への請求方法についてや原状回復の負担についての相談があります。

死亡した賃借人の相続人(親御さんの場合もありますし、お子さんの場合もあります)から相談を受ける場合は、相続人としてどこまで対応しなければならないのか?や相続放棄についての相談もあります。

もちろん1つの賃貸借契約について大家さん、賃借人の相続人の双方から相談を受けることはできません(司法書士倫理第61条の業務を行い得ない事件)。

今回は賃借人が死亡した場合の保証人の責任の範囲について見てみます。

2020年4月1日に施行された改正民法第465条の4の規定です。

第465条の4(個人根保証契約の元本の確定事由)
第1項
次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
1 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
2 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
3 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
第2項
前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
1 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
2 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

民法第465条の4第1項第3号によれば、賃借人が死亡すると保証人の債務の元本が確定するとなっています。
つまり、賃借人死亡以後に賃貸借契約において何らかの債務が発生したとしても保証人はその債務について責任を負わないということになっています。なお改正民法によるこの取り扱いは、賃貸借契約が2020年4月1日以降に締結された賃貸借契約について適用されることになっています。

このような改正がさなされたのは、保証人が個人である場合、どこまで保証人としての責任を負うことになるかがあいまいで不測の損害を被ることのないようにするためだとされています。ちなみに保証人が保証会社のような法人の場合は、この規定は適用されません。

この点、賃借人の死亡が室内での自殺によるものだった場合は事情が異なります。
以後賃貸ができなくなった等による損害についてどう考えるかが問題となります。この損害自体、賃借人の死亡以後に発生するものであり保証人は改正民法の規定により債務の元本確定後の債務として責任を負わないようにも思えます。
しかしこのような場合、以後大家さんが賃貸できなくなった等による損害は、賃借人の自殺という生前の行為によって発生したものなので死亡時点ではもう発生していた債務であると考えることになります。
つまり、賃借人の死亡が室内での自殺によるものだった場合は、以後賃貸ができなくなった等による損害について極度額の範囲内で責任を負うということになっています。

 

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