障害者基本法は、平成5年にそれまであった心身障害者対策基本法から名称が改められたものです。
法律の目的として、第1条には、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進すること」と定められています。それまでの医療、保険からの規律に福祉の観点をプラスしたもののようです。
条文の表現だとわかりにくいですが、内閣府のホームページの説明によると、「障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加の促進を規定し、障害者の「完全参加と平等」を目指す」とされています。
また、この法律の対象になる障害者という用語の定義は、第2条にあります。
「障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」をいうとされています。
地域社会における共生の1つとして、第3条では、障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されると規定されています。
また全て障害者は、
・可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられない、
・可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られる、と規定されています。
これらの理念を実現するために、政府は障害者の福祉等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を策定しなければならないとし、地方公共団体においてもこれに準じた計画の策定に努めなければならないとしています。
つまり、障害があることによって障害がない人が享受できているもの(社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会、どこで誰と生活するかについての選択の機会、地域社会において他の人々と共生すること、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会)が奪われてはいけない、ということになると思います。
文字だけを見るとあたりまえのことのように感じるかもしれませんが、このように法律で規定し、国や地方公共団体への責務も定めなければならないほど、障害者の方たちに対する不利益があったということですし、今も存在しているということになるのだと思います。
普段私のような司法書士が目にする法律は、権利や義務の発生、変更、消滅の要件などを規定しているものが多いわけですが、それらの法律の体裁とはちょっと異なったものなので引用してみました。私としても常にこのような視点をもって日々の成年後見業務にあたっていかなければならないと感じたところです。