家族信託契約書の条項には「家族信託の終了事由の定め」を置くことが一般的です(信託法第164条)。
このような「家族信託の終了事由の定め」がなくても信託法では一定の事由で信託が終了する旨の規定(信託法第163条)がありますが、家族信託では高齢の親が生きている間に認知症発症の有無にかかわらず財産管理を行えるようにして、親の生活・介護を十分に果たすことができるようにすることが主な目的ですから、「親が死亡した時」を信託の終了事由にしておいて親が死亡したら信託の目的も果たせたということで信託を終了させるようにしておくわけです。
もっとも、このような「家族信託の終了事由の定め」を置かなくても委託者と受益者の合意によって家族信託を終わらせることもできるとされています(信託法第164条第1項)。
しかし家族信託は、「高齢の親が生きている間に認知症発症の有無にかかわらず、」とあったように委託者が認知症になってしまっていると、このような合意もできませんからこの規定は使うことができないということになります。
他に気をつけておきたい家族信託の終了事由としては
・受託者が欠けている状態が1年間続くと信託は終了すること(信託法第163条第3号)。
・受託者と受益者が同一人になった状態が1年間続くと信託は終了すること(信託法第163条第2号)。
などがあります。
家族を守るために組成した家族信託契約が、自分たちの意図しない事由で終わってしまったり、自分たちが意図した事由で家族信託を終わらせることができなくなったりしないように家族信託契約を組成する場合は、このような点もカバーできる専門家に相談することをお勧めします。
参考 信託法第163条 (信託の終了事由) 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。 一 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。 二 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。 三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。 四 受託者が第五十二条(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。 五 信託の併合がされたとき。 六 第百六十五条又は第百六十六条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。 七 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。 八 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第五十三条第一項、民事再生法第四十九条第一項又は会社更生法第六十一条第一項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第四十一条第一項及び第二百六条第一項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。 九 信託行為において定めた事由が生じたとき。 |
参考 信託法第164条(委託者及び受益者の合意等による信託の終了) 第1項 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。 第2項 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。 第3項 前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。 第4項 委託者が現に存しない場合には、第一項及び第二項の規定は、適用しない。 |
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