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物件所有者が亡くなっている場合の抵当権抹消登記
住宅ローンが付いていたマンション物件の所有者が亡くなったので、団体信用生命保険の適用で住宅ローンが解除になった場合、抵当権抹消登記ができるようになりますが、当該マンションの相続登記をしないままで抵当権抹消登記の申請ができるでしょうか?というお問い合わせを頂くことがあります。
結論から言うと相続登記をしないままで抵当権抹消登記を申請することはできません。
相続による所有権移転登記をした後で、登記名義を受けた人が申請となって抵当権抹消登記を申請することになります。
ただし、マンションの名義が共有になっている場合、たとえばAB共有でAが死亡しAに関する相続登記をしていない場合、抵当権抹消登記が必要な場合ですと、共有に関する保存行為としてB1人から抵当権抹消登記の申請ができます。
なお抵当権抹消登記は、物件の所有者と抵当権者との共同申請で行いますので、司法書士は物件の所有者と抵当権者の双方から委任を受けて登記申請手続きを行うことになります。

千葉県柏市で2002年に開設した司法書士事務所です。相続や遺言、家族信託など、相続手続きを中心に、丁寧かつわかりやすい対応を心がけています。「ちょっと聞いてみたい」そんな気持ちに寄り添えるよう、平日夜や土日祝のご相談にも対応しています。一人で抱え込まず、気軽にご相談ください。
コンビニ交付に係る証明書等を提供して不動産登記の申請がされた場合の取扱
コンビニ交付に係る証明書等を提供して不動産登記の申請がされた場合の取扱いについて法務省民二・民商第240号として法務省民事局民事第二課長法務省民事局商事課長から通知が出ています。
この通知によると、コンビニで発行される証明書とは、コンビニエンスストアに設置されているタッチパネル式の端末装置の IC カードリーダに事前に証明書等のコンビニ交付を受けるための情報が入力された住民基本台帳カードをかざして、本人確認を行った上、交付手数料を納めると、印鑑証明書や住民票の写し等として交付されるものとされています。
コンビニで発行される証明書等には、偽造防止策として、証明書等をコピー機で複写した場合に「複写」という文字(けん制文字)が浮かび上がる措置に加えて、証明書等の裏面に偽造防止検出画像及びスクランブル画像を印刷する措置が施されています。
このコンビニで発行される証明書等を提供して不動産登記の申請がされた場合の法務局側の取扱いについて、上記通知によると、従来の市役所等で発行された証明書と取り扱いが異なる点としては、証明書等の「裏面」について、専用の読取機を使用して偽造防止検出画像の確認を行うことになっています。
法務局においてこの審査を行っても、なお証明書等の真贋について疑義があるときは、当該証明書等を発行した市区町村に対して偽造の有無等を問い合わせて確認をするものとし、その問い合わせ方法については、次のとおりとするとなっていて
(1)印鑑証明書については、あらかじめ印鑑証明書を発行した市区町村の担当者に連絡を取った上で、印鑑証明書の原本を当該市区町村あてに持参又は送付をする方法によるものとする。なお、送付の方法による場合には、書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによるものとする。おって、この場合には、市区町村から問い合わせに対する回答がされるまでの間、印鑑証明書の写しを申請情報と併せて保管しておくものとする。
(2)住民票の写しについても、(1)と同様とする。
ただし、市区町村に対して住民票め写しに記載された事項を電話やファックスにより確認することができる場合には、これらの方法によることも差し支えない。
という取り扱いのようです。
上記の確認を行った場合には、当該確認を行った旨を申請情報又は証明書等の適宜の欄に記載するものとする。となっています。
今回この通知を記事にしたのは、相続登記の添付情報として印鑑証明書の原本還付を受ける際に印鑑証明書のコピーを添付するのですが、いつものとおりに印鑑証明書の表面だけをコピーして登記申請をしたところ、コンビニ発行の印鑑証明書については、表面だけではなく裏面もコピーするようにと法務局から指摘を受けたのがきっかけです。
上記通知にもあるように、コンビニ発行の印鑑証明書には裏面に偽造防止検出画像があり、友人の司法書士に確認したところ、それを専用の読取機を使用して偽造防止検出画像の確認を行っている関係で裏面のコピーも必要なのではないかとのことでした。

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予告登記とその抹消手続き
平成16年に不動産登記法が改正されていますが、改正前の不動産登記法では「予告登記」という制度がありました。
「予告登記」とは、登記原因の無効や取消しを理由として、裁判所に登記抹消や登記回復の訴訟が起こされた場合に、裁判所が「登記をめぐって裁判が行われている最中なので、裁判結果によって影響を受ける可能性があるよ」ということを登記簿(登記記録)を見た人に予告するために登記することをいいます。裁判所は、法務局に登記するようにと嘱託して法務局が予告登記として登記することになります。
たとえばA名義の土地についてBに売買を原因として所有権移転がなされた場合、Aが原告として、Bを被告として、ABの間の売買契約の無効を主張して所有権移転登記の抹消登記請求訴訟を提起した場合に、この予告登記がされていました。
この土地を買い受けようとする第三者は、登記簿(登記記録)を見れば現在B名義となっているのだからBから買い受ければ良いと思って売買契約を締結しようと思うかもしれませんが、AB間に売買契約をめぐるトラブルがあって訴訟の結果によっては、所有権を取得できなくなる恐れがあります。そこで一般の第三者に警告するために、現在この土地については訴訟が提起されていますと公示するように裁判所が法務局に嘱託して登記をするという制度でした。
この予告登記は、単に警告の効果を持つだけで登記としての対抗力(権利を第三者に法的に主張できる効力)はありませんが、この制度を悪用して競売の邪魔をしたりする事例やそもそもの存在意義の乏しさが指摘されてきたこともあり平成16年の不動産登記法の改正によって制度自体が廃止されました。
ところが、平成16年の不動産登記法改正前に登記されてきたこの「予告登記」が現在も残っている場合があります。
そのような場合、制度自体が廃止されていますので予告登記の抹消手続きが必要となるわけですが、不動産登記規則附則18条にその手順についての規定があり、「不動産登記法の施行に伴う登記事務の取扱いについて(通達)(平成17年2月25日法務省民二第457号)」にも説明があります。
■不動産登記規則附則18条
(予告登記の抹消)
第18条 登記官は、職権で、旧法第三条に規定する予告登記の抹消をすることができる。
2 登記官は、この省令の施行後、登記をする場合において、当該登記に係る不動産の登記記録又は登記用紙に前項の予告登記がされているときは、職権で、当該予告登記の抹消をしなければならない。
■平成17年2月25日法務省民二第457号
(予告登記の取扱い)
既存の予告登記の職権抹消
(2)規則附則第18条の規定により職権で予告登記を抹消するときは、権利部の相当区に「不動産登記規則附則第18条の規定により抹消」と記録するものとする。
ということで、対象となる不動産について、何か登記申請をする際に合わせて、残っている「予告登記」を法務局(登記官)の職権で抹消手続きをしてもらえるということになっています。

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新千歳空港
亡き母の友人に誘われて4年ぶりに母方のお墓参りに行ってきました。
新千歳空港からバスで真駒内まで行きそこから母の友人のクルマで小樽を通って仁木町まで行ってきました。小樽や札幌では外国人旅行客の多さが目につきましたがバスの運転手さんも外国語を話したりメッセージボードを使ってコミュニケーションを取っていて大変だなぁと感じました。

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日本財産管理協会の登録更新
遺産管理業務その他の財産管理業務をおこなうのに必要なスキルを身につけるため、一般社団法人日本財産管理協会の登録更新研修を受講し、登録証が交付されました。
「財産管理マスター」という名称を使って良いとのことですが、過去には使用した経験も機会もありませんでした。
平成34年まで有効とのことですが、それまでの間も研修を受けてスキルアップに励みたいと思います。

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抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記をした抵当権の抹消
抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記をした抵当権についてその抵当権の登記の抹消を申請する場合に提供すべき登記識別情報について(通知)(平成17年8月26日付法務省民二第1919号)
「抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記をした後、この抵当権の登記の抹消を申請する場合に提供すべき登記識別情報は、この抵当権について設定の登記がされた際に通知された登記識別情報のみで足りる。」
抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更登記をした際には、法務局から抵当権者に登記識別情報は通知されませんので、この抵当権を抹消する場合には、当初抵当権設定登記をしたときに交付された登記識別情報を提供することになります。
一見当たり前のことを言っているようですが、登記識別情報制度以前には、抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記では、登記済証が発行されていたので、私も含め当時から登記実務に携わっている人からすると一瞬「あれ?」と困惑してしまうこともあるかと思います。
登記識別情報制度以前に抵当権設定登記をして抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更の登記をしていた場合には、抹消登記には抵当権の効力を所有権の全部に及ぼす旨の変更登記済証の添付が必要となります。

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遺産分割協議書の取り交わし
相続登記を申請する場合、遺産分割協議書を作成して民法に定める法定相続分とは異なる割合で、特定の相続人に名義を変更することが多いと思います。
遺産分割協議書の形式として、1枚の遺産分割協議書に相続人全員が署名・実印を押して完成させる場合と、相続人が各自1枚ずつ「遺産分割協議証明書」に署名・実印を押して完成させる場合があります。
「1枚の遺産分割協議書に相続人全員が署名・実印を押す」形式ですと、相続人全員が一同に集まって1枚の遺産分割協議書に署名・実印を押すとか、「持ち回り」で相続人どうしで順番に遺産分割協議書に署名・実印の押印をしていくとかになります。「法事などの機会に」という場合は、事前に実印を持ち寄ってもらうということになりますがどうしても手間がかかることになります。
そこで「遺産分割協議証明書」として、相続人が各自1枚ずつ「遺産分割協議証明書」に署名・実印を押して完成させる方法をとるケースもあります。
相続人各自から「遺産分割協議証明書」に署名・実印の押印していただく形ですと、相続人に全員集まってもらって署名・実印を押してもらう必要はありませんし、遺産分割協議書の持ち回りのやりとりも必要ありません。各相続人が遺産分割協議証明書に自分だけ署名・実印の押印をすれば足りることになりますので、司法書士と各相続人とのやりとりだけで済むということになります。
遺産分割協議書も遺産分割協議証明書も効力は全く同じです。
相続登記や遺産承継業務に付随して司法書士も遺産分割協議書の作成を承っておりますのでお気軽にご相談ください。

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公証人による本人確認
親族間で土地・建物を売買したり、第三者に売却したり。生前贈与(夫婦間の居住用不動産の贈与)をしたり、銀行で住宅ローンの借り換えをする場合などに権利書(登記識別情報又は登記済証)をなくしてしまった等の事情により、法務局へ提出することができない場合があります。
この場合、不動産登記法第23条第4項第2号による「公証人の認証による本人確認」という制度によって、対応するケースがあります。
不動産登記法第23条第1項では次のように規定されています。
「登記官は、申請人が前条(第22条-登記識別情報の提供)に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない。この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。」
この規定は、原則として登記識別情報等の提供が必要であるとし、もし提供できない場合は登記義務者に対して、登記官という法務局の担当職員から、「登記申請がありました。その登記申請は間違いありませんか?回答してください。」と通知し、その回答を一定期間を設けて求めています。いわゆる「事前通知」というものになります。この期間内に登記義務者から回答がないと、登記申請は却下されてしまいます。
このような事前通知の規定に対し、不動産登記法第23条第4項では
第1項の規定(登記識別情報の提供や事前通知)は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない。としています。
そして登記識別情報の提供や事前通知を適用しない場合として不動産登記法第23条第4項第2号では、
「当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人(公証人法 (明治四十一年法律第五十三号)第八条 の規定により公証人の職務を行う法務事務官を含む。)から当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるとき。 」
と規定しています。
この規定によると
■公証人が登記義務者(不動産の名義人)であることを確認するために必要な認証をして
■登記官がその内容を相当と認めるとき
これら双方を充たしていれば、事前通知をせずに権利書がなくても登記申請が受理されることになります。
この公証人の認証の文言については、平成17年2月25日法務省民二第457号という通達で具体的に定められています。
(1)申請書等について次に掲げる公証人の認証文が付されている場合には、不動産登記法第23条第4項第2号の本人確認をするために必要な認証としてその内容を相当と認めるものとする。
ア 公証人法第36条第4号に掲げる事項を記載する場合
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)した。本職は、右嘱託人の氏名を知り、面識がある。よって、これを認証する。」
又は
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)したことを自認する旨陳述した。本職は、右嘱託人の氏名を知り、面識がある。よって、これを認証する。」
イ 公証人法第36条第6号に掲げる事項を記載する場合
(ア)印鑑及び印鑑証明書により本人を確認している場合の例
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)した。本職は、印鑑及びこれに係る印鑑証明書の提出により右嘱託人の人違いでないことを証明させた。よって、これを認証する。」
又は
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)したことを自認する旨陳述した。 本職は、印鑑及びこれに係る印鑑証明書の提出により右嘱託人の人違いでないことを証明させた。よって、これを認証する。」
(イ)運転免許証により本人を確認している場合の例
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)した。 本職は、運転免許証の提示により右嘱託人の人違いでないことを証明させた。よって、これを認証する。」
又は
「嘱託人何某は、本公証人の面前で、本証書に署名押印(記名押印)したことを自認する旨陳述した。本職は、運転免許証の提示により右嘱託人の人違いでないことを証明させた。よって、これを認証する。」
登記申請の委任を受ける司法書士としては、登記義務者本人と一緒に公証役場に行き、登記義務者本人に署名・実印を押してもらう登記申請に関する委任状に公証人の面前で署名してもらい上記の認証文の入った書面と合綴してもらい法務局に提出することになります。
司法書士は登記申請の委任を受ける際は、本人確認・意思確認を行っていますが、公証人とともにこれを行っているような感じになります。
このことからも分かるとおり、権利証または登記識別情報を紛失したので代わりに公証人による本人確認を利用したいという場合、登記申請手続きに伴ってということになります。司法書士が登記申請手続きを前提としないで公証人による本人確認制度を利用したサポートをすることは想定していません。また売買や贈与などを原因とした所有権移転登記申請の場合、権利証又は登記識別情報を提供するのは登記義務者(売買の場合は売主、贈与の場合は贈与者)ですが、司法書士は登記権利者(売買の場合は買主、贈与の場合は受贈者)からも登記申請行為の委任を受ける必要がありますので、権利証または登記識別情報を紛失して公証人による本人確認制度を利用する場合は、その方からもどこの司法書士を利用するのかを事前に確認しておいた方が良いということになります。
ちなみに公証人の手数料は3500円です。
小川直孝司法書士事務所では「公証人による本人確認制度」を利用した登記手続きも行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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成年後見人の取り消し権
成年後見人の取消権については、民法第9条に規定されています。
民法第9条
「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」
成年後見人が、成年被後見人に対して、「~を買って良いですよ」と特定の法律行為に対して同意をしたとしても、取り消すことができるとされています。
想定される場面はかなり限定されると思いますが、成年被後見人から「成年後見人から同意を得ている」と聞いて、お店の人が成年被後見人と取引(高価な品物の売買)をしたような場合、取引の相手方(お店)としてはたとえ「後見人が同意していた」としても、成年被後見人後見人からの売買契約の取り消しの主張を認めざるを得ないということになります。それだけ成年被後見人の保護を図る要請が高いということになります。
誰が取り消すことができるのか(取消権者)については、民法第120条第1項の規定により、成年被後見人本人(とその承継人)と成年後見人とされています。
民法第120条第1項
「行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。」
民法第9条ただし書には、「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定されています。
成年被後見人であっても「日常生活に関する行為」については、取り消しの対象とはされていません。成年被後見人の自己決定権の尊重の観点からこのように規定されています。もっとも、行為時点で成年被後見人が完全な意思無能力の状態だった場合は、そもそも法律行為は無効となりますので取り消しの話にはなりません。
またこれに関連して成年被後見人の身分行為(婚姻、協議離婚、認知、遺言など)についても、成年被後見人が意思能力を回復した状態であれば、成年被後見人が単独で行うことができるとされています。
婚姻について
民法第738条
「成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。」
協議離婚について
民法第764条
「第738条、第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。」とされていますので、成年被後見人が協議離婚をするには、その成年後見人の同意を要しない。ということになります。
認知について
民法第780条
「認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。」
遺言について
民法第962条
「第5条、第9条、第13条 及び第17条 の規定は、遺言については、適用しない。」とされていますので、成年被後見人のした遺言を成年後見人が取り消すことはできないということになります。
これらの行為は一身専属的なものであり成年被後見人の本人の意思の尊重をすべきとの観点からこのように規定されています。
このことからも分かるように
「遺言書の作成は成年被後見人にはできない。」というのは字面からいうと間違っていることになります。

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詐欺による契約の取り消し
民法第96条では
第1項で「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」
第2項で「相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。」
第3項で「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」
と規定されています。
「詐欺又は強迫」となっていますが今回は「詐欺」の部分について考えてみたいと思います。
「詐欺」という言葉は、いろいろな場面で、いろいろな意味合いで使われたり発せられたりすることがありますが、民法第96条で使用される「詐欺」は、一定の要件を充たせば特定の「意思表示を取り消すことができる」という効果が認められる、という意味での「詐欺」になります。
ですから「だまされたから契約を取り消したい」という場合でも、民法第96条第1項に定める「詐欺による意思表示の取り消し」に該当するかどうかについては、具体的に検討していく必要があります。
民法第96条に定める意思表示の取り消しが認められるための詐欺の要件は次の4つです。
1.詐欺をした者の故意
2.詐欺をした者の違法な欺罔行為
3.2.の欺罔行為に基づく表意者の錯誤
4.3.の錯誤に基づく特定の意思表示

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