家族信託と遺言の違い

家族信託契約では信託の終了事由として、「委託者●●が死亡した時」などと定めておくことがあります。
また家族信託契約で、信託終了時に信託財産が誰に帰属するかの定めとして「帰属権利者」を決めておくことが通常です。
この結果、委託者が信託財産にした財産が、委託者の死亡によって帰属権利者のものになるわけです。
これが遺言をしたのと同じような効果を持つということで「遺言代用信託」としての家族信託と呼ばれています。
遺言と遺言代用信託との違いを見ていきましょう。

【遺言との違い「移転する時期」】

「遺言代用信託」が単なる「遺言」と違うのは、遺言が遺言者が死亡して初めて権利が移転するのに対し、家族信託における「遺言代用信託」は、信託契約をしたときから受託者に管理処分権が移転するという点です。

「遺言」の場合、遺言をした時点ではたしかに遺言者の財産として存在はしていますが、その後財産を処分したり、介護費用に使ったり、思わぬ被害に遭ったりして財産を失ったりということも考えられます。
「遺言代用信託」としての家族信託の場合は、信託がスタートすれば受託者が責任を持って信託財産を受益者(=委託者)のために管理していきますから受益者が生きている間、不利益になることはありません。
そして受益者(=委託者)が死亡したら、信託契約に定められた方法で信託財産が分配されることになります。
「確実な資産承継」という観点からは遺言よりも遺言代用信託のほうが安全・確実な方法であるとして遺言代用信託の家族信託を選択される方もいらっしゃいます。

【遺言との違い「承継先の指定」】

遺言の場合、遺言者が死亡したときの財産の承継先を指定しますが、その承継先からさらに次の承継先を指定するということは不可能です。
たとえば、

第1条で「遺言者Aが死亡したら妻Bに相続させる」として、

第2条で「第1条で遺言者Aが死亡した後に妻Bに相続させた財産は、妻Bが死亡したら長男Cに相続させる」

という遺言はできないということです。

遺言はあくまで遺言者Aの財産についてAが死亡したらその遺産を誰に渡すか、という話ですからAから相続を受けた妻Bのものになった財産をBの死亡後誰に渡すかについてまでAは指定できないということです。
妻Bが死亡した時の遺産の行方は、妻Bにしか決めることはできませんから、妻Bに遺言をしてもらうしか方法はありません。もちろん夫Aは妻Bにそのような内容の遺言を書くように強制することはできません。

これに対して遺言代用信託による家族信託の場合は、受益者連続型信託という手法を利用することで、「Aが死亡したらB、Bが死亡したらC」という資産承継を実現することもできます。
委託者兼当初受益者をA、受託者を長男Cにします。これは通常の自益信託(委託者と受益者が同一人物)です。
そして受益者Aが死亡したら信託が終了するのではなく、受益者が妻Bが新たに受益権を取得するという定めを置くことができます。
そして受益者となった妻Bが死亡したら信託が終了し残余財産を長男Cが取得すると定めておけば、実質的に「Aが死亡したらB、Bが死亡したらC」という資産承継を実現することもできるわけです。

参考 信託法第91条(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)
受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

 

 

 

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