後見制度支援信託とは

【後見制度支援信託とは】

後見制度支援信託は、平成24年2月1日からスタートした制度で被後見人の財産のうち、日常生活で支払が必要な分だけを親族後見人が管理し、それ以外の金銭は信託銀行などに信託する仕組みをいいます。後見制度支援信託は成年後見だけでなく未成年後見でも利用されますが当事務所のサイトでは成年後見制度のみに言及しています。また千葉家庭裁判所管内の取り扱いを前提に説明をしています。

後見制度支援信託は、補佐・補助には適用されません。

後見制度支援信託では、弁護士や司法書士といった専門職後見人によって信託契約が締結されることによって、被後見人の財産が「信託しない財産」と「信託する財産」に分けられます。

親族後見人は日常的な後見事務を遂行するにあたっては、手元で「信託しなかった財産」を管理していくことになります。
もし、後見事務を遂行していく上で「信託した財産」を利用する必要が生じた場合は、家庭裁判所に申立をして「指示書」の交付を受けて「信託した財産」から一部払い戻しを受けたり(一時金交付の指示)、口座の解約をすることになります。

【後見制度支援信託の利用実績は年間約665億円】

このような被後見人の財産を2つに分別し管理していく制度ができたきっかけは、親族後見人による被後見人の財産の横領が問題になったためと言われています。
これから後見人の仕事をまじめに取り組もうしているいる親族にとっては、最初から裁判所に自分が被後見人の財産を横領するかもしれないと疑われているようで不快に感じる方もいるようですが、実際には年間約665億円が後見制度支援信託によって信託されています。
最高裁判所の発表によると、平成31年1月から令和元年12月までの1年間に全国で後見制度支援信託が新たに利用された成年被後見人及び未成年被後見人の数は1,771人、信託財産額は約665億5700万円、信託財産額の平均は約3758万円です。この実績には未成年後見制度も含まれていますが内訳としては多くが成年後見制度によるものとなっています。

【後見制度支援信託の流れ】

成年後見開始を求める申立

家庭裁判所で申立内容を審理

このなかで後見制度支援信託の利用を検討する必要があるか、後見監督人を置く必要があるか等を検討します。
親族が後見人候補者になっている場合は、候補者である親族との受理時面接において親族の意向も確認しているようですが、親族の意向がそのまま制度利用の有無に直結するとは限りません。

家庭裁判所が後見人を選任

後見制度支援信託の利用「検討」がふさわしいと判断されれば、親族後見人とともに法律専門職(弁護士や司法書士)を「検討」のための成年後見人に選任します。選任の順序や権限分掌等は事案ごとに異なります。

専門職後見人による後見制度支援信託利用についての検討

成年後見人に選任された法律専門職は、被後見人の財産や生活状況、収支予定等を精査し、後見制度支援信託の利用が適当かどうかを検討します。
検討した結果は家庭裁判所に後見事務報告書として提出します。
後見制度支援信託の利用に適していると判断した場合には、信託する財産の額や親族後見人が日常的に管理する額などを設定します。
後見制度支援信託の利用には適していないと判断した場合は、その旨を報告しますが家庭裁判所がその報告に拘束されてしまうわけではありません。

専門職後見人が銀行との間で信託契約締結

家庭裁判所が専門職後見人から提出された後見事務報告書の内容を精査して後見制度支援信託の利用に適していると判断した場合は、専門職後見人に
信託契約をするように指示書を発行します。その指示書にしたがって専門職後見人は、銀行と信託契約を締結し、決められた金額を信託銀行に送金します。

専門職後見人から親族への財産引き継ぎ

後見制度支援信託に関する信託契約が終わり専門職後見人の関与が必要なくなれば、専門職後見人は辞任し、親族後見人のみの状態になります。
それまで専門職後見人が管理していた被後見人の通帳等は親族後見人に引き継ぎをします。
ここまで仕事をした専門職後見人に対して報酬付与の審判が家庭裁判所から出ていれば被後見人の財産から専門職後見人へ報酬が支払われます。

親族後見人による後見事務のスタート

自分の手元で管理していた被後見人の財産では賄っていけなくなった場合は、家庭裁判所に申立をして必要性が認められれば、一時交付金の指示書を出してもらい、信託してある財産で後見事務の費用を支出することも可能です。

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