2020年4月1日施行の改正民法では、保証人を保護するための制度として情報提供義務の制度が新設されました。
自分が保証人になる前、保証人になった後、主債務者が支払いを遅滞した場合の3つの場面で債務の内容や主債務者の財産、収支の状況などをきちんと確認できるようにして保証人に不測の損害が発生しないようにするための制度です。
- 保証人になる前(民法第465条の10第1項)
- 保証人になった後(民法第458条の2)
- 主債務者が支払いを延滞した場合(民法第458条の3第1項)
1.保証人になる前(民法第465条の10第1項)
事業のために負担する債務について保証人になることを他人に依頼する場合の情報提供義務(民法第465条の10第1項)
事業のために自分が負担する債務について、他人に保証人になること依頼する場合は、保証人になるかどうかの判断材料として
①自分(主債務者)の財産や収支の状況
②その債務以外に債務がある場合はその額、返済状況(きちんと返済できているか)
の情報を提供する義務があるということになります。参照条文 民法第465条の10第1項
(契約締結時の情報の提供義務)
主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
① 財産及び収支の状況
② 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
③ 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容2.保証人になった後(民法第458条の2)
主たる債務者から委託を受けて保証人になった人は、「債権者に対して」、主たる債務について支払状況に関する情報提供を求めることができます。
情報提供の請求を受けた債権者としては、「債務者の情報」を第三者である保証人に開示することになるので個人情報の第三者提供にあたることになりますが
民法第458条の2は、個人情報保護法には抵触しないということになります。参照条文 民法第458条の2
(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。3.主債務者が支払いを延滞した場合(民法第458条の3第1項)
主たる債務者が分割払いの支払いを延滞したりして、分割払いの利益を喪失し残金一括請求の対象になった場合、債権者は2ヶ月以内に保証人に対して通知しなければならないことになっています。
これは、主たる債務者が一括請求を受けると遅延損害金も多額になり、その分だけ保証人の負担も増加することから、保証人を保護するために早めに主たる債務者が経済的危機にあることを知らせる制度です。参照条文 民法第465条の3第1項
(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務)
主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
◆このように事業のために負担する債務を保証する人に対する保護規定が新設された訳ですが、民法でこのような規定を置かなければならないほど保証人への負担が問題になっているということでもあります。
事情は人それぞれであり一概には言えませんが、保証人になる場合にはくれぐれも慎重な判断が必要です。