受託者が死亡した場合

家族信託で「委託者」から財産を預かり管理・運用していく立場の「受託者」が死亡してしまったとしても、その「信託」は終了しません。

■信託法第56条第1項第1号をみると、受託者が死亡すると、受託者の「任務が終了する」旨が規定されていますが、「信託が終了する」とは規定されていないことからも明らかです。

■また受託者としての地位は相続の対象にはならないので、受託者の相続人が受託者の地位を承継するわけではありません。

■さらに信託財産は、受託者個人の財産ではありませんから、受託者の相続財産には含まれません。

■信託法第60条第1項、2項では、家族信託で受託者が死亡して「受託者の任務が終了」した場合、その相続人の義務として、知れたる受益者に死亡の旨を通知したり、新受託者が信託事務を引継ぐまで信託財産を保管すべき旨を定めています。

これらのことからも信託法は、受託者が死亡したことをもって直ちに信託が終了するとは考えていないことが分かります。

それでは、受託者が死亡すると、家族信託自体はどのような状態になるのでしょうか。

■最初に決めた信託契約や遺言による信託の定めの中で、当初の受託者が死亡した場合に備えて、つぎの受託者(第二次受託者)の指定があれば、その人が家族信託の引受けをして受託者としての任務を引き継ぐことになります。

■信託契約や遺言による信託の定めの中で、当初の受託者が死亡した場合、つぎの受託者(第二次受託者)の指定がなかった場合や、第二次受託者の指定があっても、その人が受託者の任務を引き受けなかった場合は、委託者と受益者との合意で、新しい受託者を選任できます(信託法第62条第1項)。この時点で受益者と合意する委託者自身もいないという場合は、受益者が単独で受託者を選任することができます(信託法第62条第8項)。

■信託契約や遺言による信託の定めの中で、「受託者がいなくなったときは、受益者が受託者を指名する。」旨を定めておくこともできますので、委託者と協議する必要もなくなります。この時点で委託者が認知症になっているような場合でもスムーズに新しい受託者を決めることができるわけです。

■仮にこのようなルートを辿ることがなくても必要な場合は、利害関係人の申立によって裁判所から新受託者を選任してもらうこともできます(信託法第62条第4項)。

このように受託者が死亡しても、次の受託者を選任するための手続きがあるのですが、受託者が死亡してもそのまま放置してつぎの受託者も就任しない状態が1年間継続してしまうと、せっかく組成した信託自体が終了してしまいますので注意が必要です(信託法第163条第3号)。

家族信託では、委託者のために信託契約を組成しているわけで、受託者が死亡したことだけで信託契約自体を終了させるのは、本来の信託の目的からは考えられないと思いますので、受託者が死亡しても家族信託が存続できるように、次順位の受託者を定めておくのが委託者にとって一番安心なのではないでしょうか。

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