賃貸物件の大家さん(オーナーさん)であれば、賃借人と賃貸借契約を結ぶとき、
- 「この人ならきちんと家賃を支払ってくれそう。」とか、
- 「この人なら他の人に迷惑をかけたりしないだろう。」とか、
- 「この人は物件に傷を付けるようなことはしないだろう」
といったことを前提に貸し出しているはずです。
しかし実際には、
- 家賃の滞納が続く
- 契約書に違反してペットを飼っている
- 毎晩大騒ぎして近所から苦情が出ている
- いつの間にか知らない人が住み始めている
などといった事態に発展していることもあります。
大家さん(オーナーさん)としては、もうこれ以上この賃借人には貸し続けたくないと思っても具体的にどうしたら今の賃貸借契約を終わらせることができるのか、どうしたら建物明け渡しを正しく請求できるのかが分かっていないとイライラが溜まる一方です。
ここで大家さん(オーナーさん)が身につけておきたい知識は、建物明渡し請求を「検討するタイミング」です。「検討するタイミング」と「請求ができるタイミング」とは違いますのでご注意ください。
今回「検討するタイミング」に着目しているのは、司法書士として相談を受ける際、大家さんが建物明渡しを「検討する」タイミングを逃して、建物明渡し「請求ができる」タイミングを遅らせてしまうことがよくあり、その結果として大家さん(オーナーさん)の実損害が大きくなってしまっているという事案を目にするためです。
実際にいくつか例をあげてみます。
【家賃の滞納】
当事務所に建物明渡し請求の件でご相談にお越しになった方の中には、家賃滞納額が6ヶ月分以上溜まっているというケースもありました。
私の経験上、滞納が2ヶ月分以上となった段階でも建物明渡しを「検討するタイミング」としては早すぎることはないと思います。
実際に建物明渡し「請求ができる」タイミングは、滞納が3ヶ月以上かそれ以上であることが通常ですが、債権保全の面からは大家さん(オーナーさん)と賃借人との信頼関係が完全に破壊された状態となる前に未払賃料(家賃)の回収をより確実にするためにも、賃貸物件の保全を図るためにも具体的にどのような方法を利用して建物明け渡し請求をしていくか等を「検討する」必要はあると思います。
【無断転貸・無断譲渡】
賃貸借契約書では、賃借人以外の人を居住させてはならないとなっているのに、いつの間にか賃借人とは違う人が頻繁に出入りしていることが分かった場合はどうでしょうか。
これは法律的には無断転貸・賃借権の無断譲渡という状態になっていて賃貸借契約の解除事由に該当しています。
もっとも大家さん(オーナーさん)と賃借人との間の信頼関係が破壊されているとはいえないとして賃貸借契約の解除が認められないケースも実際にはあります(転貸の相手が賃借人の同居の親族の場合など)。
この場合、大家さん(オーナーさん)としては、「賃借人とは違う人が頻繁に出入りしていることが分かった」時点で、さらに詳細な状況を確認するなどの対応を「検討する」べきで漫然と様子を見ているようでは、さらに賃貸物件の使用形態が本来の賃貸借契約とかけ離れてしまい、実損害(転々と居住者が変わってしまう等の事例も実際にあります)が広がってしまうことにもなりかねません。
どのような状況になれば賃貸借契約の解除が実際に可能なのか、どのような対応をどのタイミングですべきなのかの判断は難しいため、早めに法律の専門家に相談することをお勧めします。
小川直孝司法書士事務所では滞納家賃の回収や建物明渡し請求のご相談・お見積もりは無料です。お気軽にお問い合わせください。