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登記識別情報通知書のシールの不具合
売買や相続、抵当権設定等により不動産の登記名義人になった人は、権利者であることを証明する登記識別情報(パスワード)を記載した書面=登記識別情報通知書を入手することができます。
しかし、登記識別情報を記載した部分を見えないようにするためのシール(目隠しシール)の一部のはがれ方が不完全であることにより、登記識別情報の一部を読み取ることができない状態になる場合があります。
具体的には、目隠しシールの一部が証明書本体の紙にこびりついていてシールを無理矢理はがそうとすると登記識別情報(パスワード)が記載された部分ごとシールがはがれてしまい、登記識別情報(パスワード)を確認することができなくなってしまいます。
この不具合は登記識別情報通知書に使用していた用紙と目隠しシールに原因があるようです。
私がこのような目隠しシールのはがれ方が不完全な登記識別情報通知書に出くわした経験は今まで2回あります。
法務省のホームページにも案内がありますが、私の経験した登記識別情報通知書はいずれも平成21年当時に発行されたものでした。
現在は様式が変わっていて、平成21年10月以降に発行された登記識別情報通知書については、いわゆるシール式ではないものになっています。
このように目隠しシールのはがれ方が不完全な登記識別情報通知書だと、その登記識別情報を提供して行う登記手続申請に支障がありますから、その対応策として法務局に対し、当該登記識別情報通知書を添付して申出をして登記識別情報を再作成してもらう手続があります。この登記識別情報の再作成にも申出からそれなりに時間がかかりますから、注意が必要です。

千葉県柏市で2002年に開設した司法書士事務所です。相続や遺言、家族信託など、相続手続きを中心に、丁寧かつわかりやすい対応を心がけています。「ちょっと聞いてみたい」そんな気持ちに寄り添えるよう、平日夜や土日祝のご相談にも対応しています。一人で抱え込まず、気軽にご相談ください。
賃借人の死亡と保証人の責任
アパートの1室を借りていた人(賃借人)が契約途中で死亡してしまった場合、大家さんと賃借人との間の賃貸借契約の事後処理について相談を受けることがあります。
大家さんから相談を受ける場合は、保証人への請求方法についてや原状回復の負担についての相談があります。
死亡した賃借人の相続人(親御さんの場合もありますし、お子さんの場合もあります)から相談を受ける場合は、相続人としてどこまで対応しなければならないのか?や相続放棄についての相談もあります。
もちろん1つの賃貸借契約について大家さん、賃借人の相続人の双方から相談を受けることはできません(司法書士倫理第61条の業務を行い得ない事件)。
今回は賃借人が死亡した場合の保証人の責任の範囲について見てみます。
2020年4月1日に施行された改正民法第465条の4の規定です。
第465条の4(個人根保証契約の元本の確定事由) 第1項 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。 1 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。 2 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。 3 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。 第2項 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。 1 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。 2 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。 |
民法第465条の4第1項第3号によれば、賃借人が死亡すると保証人の債務の元本が確定するとなっています。
つまり、賃借人死亡以後に賃貸借契約において何らかの債務が発生したとしても保証人はその債務について責任を負わないということになっています。なお改正民法によるこの取り扱いは、賃貸借契約が2020年4月1日以降に締結された賃貸借契約について適用されることになっています。
このような改正がさなされたのは、保証人が個人である場合、どこまで保証人としての責任を負うことになるかがあいまいで不測の損害を被ることのないようにするためだとされています。ちなみに保証人が保証会社のような法人の場合は、この規定は適用されません。
この点、賃借人の死亡が室内での自殺によるものだった場合は事情が異なります。
以後賃貸ができなくなった等による損害についてどう考えるかが問題となります。この損害自体、賃借人の死亡以後に発生するものであり保証人は改正民法の規定により債務の元本確定後の債務として責任を負わないようにも思えます。
しかしこのような場合、以後大家さんが賃貸できなくなった等による損害は、賃借人の自殺という生前の行為によって発生したものなので死亡時点ではもう発生していた債務であると考えることになります。
つまり、賃借人の死亡が室内での自殺によるものだった場合は、以後賃貸ができなくなった等による損害について極度額の範囲内で責任を負うということになっています。

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保証人の責任
個人が保証人になる場合の保証の範囲について2020年4月1日に施行された改正民法によって変更が加えられました。
- 自分の父親が有料老人ホームに入所する際に子供が保証人になる場合
- 自分の子供が賃貸アパートに入居する際に実家の母親が保証人になる場合(イラスト参照)
などが関係してくる話です。
重要な変更点としては、
- 個人が保証人になる場合、「極度額の設定」が必要
- この「極度額」を定めない保証契約は無効
- この「極度額」を定める契約は書面か電磁的記録でしなければ無効 といったものになります。
これまでは、個人が誰かの保証人(一定の範囲に属する不特定の債務を保証する形式の保証人)になる場合、
保証契約の中で「金●●円までに限り保証する」などという保証限度額のようなものはありませんでした。
このため保証人に対して請求される金額にも際限が無いことになってしまい保証人が予期しなかったような責任追及をされる可能性がありました。このように保証人を一定の範囲で保護するためにその責任をあらかじめ限定するものとして「極度額」が設定されることになりました。
民法第465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等) 第1項 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの (以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、 その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。 第2項 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。 第3項 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。 |
たとえばAがBから100万円を借りる契約の保証人にCがなったというのであればCはその100万円を借りたことについてAに対し保証人としての責任を負うことになります。
しかしAがBから借りたお金を返さないまま行方不明になったような場合、保証人であるCは、Aに対して100万円とそれにともなう遅延損害金等を支払義務があります。
これに対し民法第465条の2でいう個人根保証契約は
たとえばAがBとの間で「金銭消費貸借取引(お金の貸し借り)を継続的にする」という契約をした場合、この契約についてAの保証をしたCは、
AがBとの間で継続的に取り交わされる金銭消費貸借取引について保証するのですから、その取引額がいくらになっていようとAの保証人としての責任を負ってしまうことになるのを「極度額」を設定することで
その「極度額」の範囲までの保証人の責任しか負わないということになります。
身近な場面では冒頭にあげたような事例
・自分の父親が有料老人ホームに入所する際に子供が保証人になるという、有料老人ホームとの間で取り交わすホーム内での事故等に起因する賠償責任についての保証契約
・自分の子供が賃貸アパートに入居する際の保証人に自分がなる場合の賃借人の不法行為等による賠償責任についての保証契約
などがありますが個人根保証契約について「極度額」の設定が書面等でされていないものは契約自体が無効になります。
よく言われることですが、保証人になる場合は慎重に判断することが必要です。自分が予期していない範囲まで責任を負うような内容になっていないか、契約書をよく確認する必要があります。

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相続放棄と税金
相続放棄をすると被相続人のプラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続しないことになります。
マイナスの財産というと、被相続人が負っていた借金はもちろん、税金(公租公課)も含まれます。具体的には固定資産税、住民税、国民健康保険料、介護保険料、所得税などです。
たまに「税金はいつまでも免除されない」と勘違いされる方もいますが「税金はいつまでも免除されない」という話は、破産後に免責をうけた場合のことです。相続放棄をすれば亡くなった方の税金の支払義務は相続放棄をした人に引き継がれることはありません。
注意しなければならないのは、被相続人のもとに送付されてきた税金(公租公課)の督促状や支払納付書を見て相続人が死後事務のつもりで支払ってしまうことがあることです。
被相続人の債務を相続人が弁済することは、相続人が相続を承認したと評価されてしまいます。
相続放棄をするのであれば、相続の承認と評価されるような行為はするべきではありません。
税金や保険料の納付はコンビニで本人以外の人でも納付書さえあればできてしまいますから、安易に自分以外の人(被相続人)の分を納付してしまった、ということのないように相続放棄を検討している場合は注意が必要です。
小川司法書士事務所の相続放棄のページはこちら

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成年後見人と医療保護入院
司法書士が成年後見人として活動する場合、「医療保護入院」についての知識も習得しておく必要があります。いざ医療保護入院の場面に出くわしたとき、その知識がないと対応ができないためです。
医療保護入院とは、本人の同意がなくても、精神保健指定医が入院の必要性を認め、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法とします。)第33条に定める本人の「家族等」のうち、いずれかが入院に同意したときにおこなわれる入院手続きで、「本人の同意がなくてもその者を入院させることができる」とされています。
参考 精神保健福祉法第33条第1項 (医療保護入院) 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。 一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの 二 第三十四条第一項の規定により移送された者 2 前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。 一 行方の知れない者 二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者又はした者並びにその配偶者及び直系血族 三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人 四 心身の故障により前項の規定による同意又は不同意の意思表示を適切に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの 五 未成年者 |
このように精神保健福祉法33条にいう本人の「家族等」とは、次の者をいいます(一部例外あり)。
・配偶者
・親権を行う者
・扶養義務者
・後見人または保佐人
ここで「後見人または保佐人」が出てきますので、私のような司法書士が成年後見人になっている場合は、精神保健福祉法にいう「家族等」に該当することになります。
同意する人については順番は決まっていませんので、ここに規定されたどの人が同意をしても医療保護入院の要件を満たすことになっています。(この点、平成25年の法改正前は順番が決まっていました。)
参考 障害者の権利に関する条約(日本も批准しています) 第14条【身体の自由及び安全】 1 締約国は、障害者に対し、他の者との平等を基礎として、次のことを確保する。 (a)身体の自由及び安全についての権利を享有すること。 (b)不法に又は恣意的に自由を奪われないこと、いかなる自由の剝奪も法律に従って行われること及びいかなる場合においても自由の剝奪が障害の存在によって正当化されないこと。 |
医療保護入院にあたっては、それが本人の同意がない入院であることや、身体の自由を不当に制限する恐れがあることから、必要性について医師から十分な説明を受けた上で同意を判断する必要があります。
医療保護入院は精神障害があることのみをもって直ちに入院させることができる制度ではなく、その症状等から医療や身体保護のための入院が必要な場合の制度です。
平成26年1月24日精神・障害保健課長通知「医療保護入院における家族等の同意に関する運用の考え方」にも次のような記載があります。
「3.医療保護入院は、本人の同意を得ることなく入院させる制度であることから、その運用には格別の慎重さが求められる。本人の同意が求められる状態である場合には、可能な限り、本人に対して入院医療の必要性等について十分な説明を行い、その同意を得て、任意入院となるように努めなければならない。」 |
つまり任意入院となるように努めた上での医療保護入院ということになります。
成年後見人としては、被後見人本人の身体の自由への不当な制限が行われることのないように格別の配慮が求められることになります。
小川司法書士事務所の成年後見のページはこちら

千葉県柏市で2002年に開設した司法書士事務所です。相続や遺言、家族信託など、相続手続きを中心に、丁寧かつわかりやすい対応を心がけています。「ちょっと聞いてみたい」そんな気持ちに寄り添えるよう、平日夜や土日祝のご相談にも対応しています。一人で抱え込まず、気軽にご相談ください。
ゆうちょ銀行の相続手続き
ゆうちょ銀行の相続手続きについての解説ページです。ゆうちょ銀行の相続手続きは、他の銀行と比べて窓口に行く回数が多くなります。平日なかなか時間が取れない方は司法書士の遺産整理業務を依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。

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相続放棄と代襲相続
相続放棄と代襲相続の関係についてご案内するページです。相続が発生した順番と相続放棄をする順番がポイントになります。下のイラストをクリックすると該当ページに移動します。

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家族信託の受託者の義務~帳簿の作成・保管~
家族信託がスタートすると、受託者は信託に関する事務について帳簿を作成して保管しておく義務があります。このことについて解説したページがこちらです。

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不動産の持分を訂正したい場合
毎年、確定申告の時期になると住宅ローンを組んでマイホームを取得した方で「不動産の持分の更正登記をしたい」という相談に来られることがあります。
いろいろ調べたり、相談したりして結局、「持分更正登記をしたほうが良い」ということになって司法書士事務所に相談に、という流れのようです。
不動産の持分更正登記にもいろいろなパターンがありますが、たとえば3000万円のマイホームを購入したというAさんが、住宅ローンでの借入分を含めて全額をAさんの資金で購入したのであれば、マイホーム(土地・建物)の登記名義は100%Aさんになるはずです。
ところが実際は3000万円のマイホームの頭金500万円のうち、300万円はAさんの父親Bさんが資金援助していた、という場合はどうでしょうか。
この場合、3000万円のマイホームの300万円部分、つまり全体の持分でいうと「10分の1」は、AさんではなくBさんが資金を出しているわけです。
それなのにマイホームの売買契約書には買主としてAさんしか載っていないし、登記簿(登記記録)にも所有者としてAさんしか記載されていません。
これでは実体に合った権利関係(=お金を出した割合に応じた持分での登記)が登記簿(登記記録)に反映されているとはいえません。
実際にはBさんがお金を出しているのに、登記上はすべてAさんのものになっているすると、税務上は、Bさんがお金を出した分はAさんに「贈与をした」と認定されてしまう可能性もあります。
「BさんからAさんへの贈与」ということになると、当然贈与税の問題が出てきます。
そこで現状、登記簿(登記記録)に「所有者A」の記載されているのを「共有者」に訂正し、「持分10分の9・A、持分10分の1・B」と訂正しましょう、ということになる訳です。
所有権更正登記がされると、登記簿(登記記録)の所有権に関する事項(甲区)は次のようになります。
図1
ただし、登記簿(登記記録)がこのように記載されるためには(=所有権更正登記をするためには)住宅ローンが付いている場合、融資をした銀行(抵当権者)の承諾が必要になります(登記手続き上は承諾書と印鑑証明書の添付が必要です)。
ここでの重要なポイントは、融資をした銀行(抵当権者)が、この所有権更正(Aの単独所有をA・Bの共有に訂正すること)に承諾をする、ということは融資をした銀行(抵当権者)は、Bの共有持分については抵当権の効力を有しないという点です。
つまり融資をした銀行(抵当権者)は、A・Bの共有状態になっている不動産について、更正後のA持分についてだけ抵当権を付けている状態になってしまうわけです。
この場合の登記簿(登記記録)の抵当権に関する事項(乙区)は次のようになります。
図2
融資をした銀行(抵当権者)権利の保全の観点からすると、担保不動産の一部にしか抵当権が及んでいないという状態が許される訳がないのは明らかです。
ということで、融資をした銀行(抵当権者)が、この所有権更正(Aの単独所有をA・Bの共有に訂正すること)に、このままでは承諾しないだろうということも容易に予想ができます。
では「Aの単独所有をA・Bの共有に訂正する」のは住宅ローンが付いている場合にはあきらめざるを得ないのか?というと必ずしもそうではありません。
方法として以下の2つが考えられます。
①Bの持分に対しても追加で抵当権を設定してA・Bの共有持分全部(不動産全体)に抵当権の効力を及ぼす |
②真正な登記名義の回復によって所有権更正登記ではなく、所有権一部移転登記をする |
①と②のどちらの方法を採るかは融資をした銀行(抵当権者)の対応の仕方にもよって変わってきますし、住宅ローンの約定に抵触するかどうかの判断も必要となってきます。
いずれにしても融資をした銀行(抵当権者)と協議をして手続きを進める必要があるということになります。
一番良いのは、マイホームを購入するときに購入資金の出所(出資割合)をきちんと確認して、その割合にしたがった共有持分での所有権移転登記をすることです。
共有持分を訂正するための所有権更正登記(Aの単独所有をA・Bの共有に訂正する登記)は、購入した本人だけで簡単にできる訳ではないことが多く、手間も費用も余計にかかります。
マイホームを購入するときに資金の出所をきちんと確認して登記手続きに反映しておけば、このような手間と費用をかける必要はないわけですから気をつけたいところです。
小川司法書士事務所では、マイホームの持分更正登記手続きについてのご相談も受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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認知症になっても家族が預金の解約ができる制度?
2021年3月22日から三菱UFJ銀行などで予約型代理人制度というサービスがスタートするそうです。
預金口座を持っている親御さんが元気なうちに「配偶者または2親等内の血族」等を代理人として銀行に登録しておいて(代理人の予約)、いざ親御さんが認知症になってしまったときは、その代理人が銀行所定の診断書を提出することで預金者が認知症になっても代理人が銀行から預金や投資信託の解約等ができるようになるとのことです。
これまででも一部の金融機関では親族に対して「代理人カード」の発行をしてくれていましたが、2021年2月に全国銀行協会が公表した「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」に即応したサービスといえます。
このようなサービスを利用することで、親御さんの医療費や生活費にあてることができる、というメリットがあります。
このサービスや上記全国銀行協会のプレスリリースを見て「もう成年後見制度は必要ないじゃないか。」とか「家族信託は必要ない。」などと誤解される向きもあるようですが、このようなサービスはあくまで銀行等の個別の対応です。
成年後見制度との比較でいうと、成年後見制度はサポートが必要となるご本人の財産管理だけでなく身上監護(生活全般のサポート)も対象となります。
認知症等でサポートが必要な方にとってはたとえばA銀行の預金の引き出しを親族ができるようになるだけでは十分とはいえない場合もあります。
家族信託との比較でいうと、家族信託で受託者が委託者のために管理するのは信託契約で定めた信託財産ですから、たとえば「A銀行の預金口座」ではなく、「不動産」や「金銭」といったものになります。
認知症対策で家族信託が有効だと利用者の多くが実感するのは、この「不動産」の管理・処分の場面が多いようです。
また実際にこのサービスを利用して代理人に予約された特定の親族が、認知症になった親御さんの預金の引出しをした場合、その使途(何に使ったのか)を監督したり精査したりする仕組みが用意されているのか、用意されてない場合トラブルの元にならないのかが気になります。
高齢者の保有資産の有効活用という視点も透けて見える気がするのですが、成年後見制度の利用促進との関係も含めて今後の運用に注目です。

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