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【建物明け渡しに関わるリスク】
一般市民の方にとっては、「建物明け渡し」という場面は一生に一度も経験することもないというのがほとんどだと思いますが、家賃保証を業としている会社や不動産賃貸業の方、オーナーさんから物件を預かっている不動産管理会社においては、日常的に取り扱う場面です。
「建物明け渡し」の場面に至るには、賃借人がアパートなどの賃貸借契約の約定に背いて家賃の滞納を続け、オーナーが賃借人との賃貸借契約を解除した、という流れを経ています。
その中で家賃保証をしている会社は、オーナーに賃料を支払うことになります。
不動産管理会社は、オーナーさんから預かっている賃貸物件の賃料滞納の状態が続けばオーナーさんへの賃料支払いはもちろん、自身の管理料も未収となってしまいます。
早期に滞納家賃の回収または建物明け渡しを実現するべく行動を始めなければなりませんが、家賃保証会社や不動産管理会社にとっては、本業とは言いがたい行動でもあります。
そもそも不動産管理会社は、オーナーさんから賃貸管理を受託し賃貸借契約の仲介をしているだけであって、賃借人との間に直接の賃貸借関係を結んでいる立場にはありませんから、賃料の滞納が続いたとしても賃借人に直接オーナーの立場で「賃料を支払え」という法律上の請求はできないわけです。かといって、オーナーさんからは、「管理をお願いしているのだからきちんとやってよ。」と言われる立場でもあります。
よく不動産管理会社から家賃を滞納している賃借人に連絡をして、果ては明け渡しの交渉のようなことまでしている話も聞きますが、法的にはあくまでオーナーの代理として事実上伝言をしているに過ぎないという説明しかできないことになります。これを不動産管理会社が業として行うことは弁護士法第72条に抵触するという指摘もあり、不動産管理会社の担当者は自重して行動している方も多いようです。
【明け渡しのための訴訟提起】
任意の明け渡しの交渉で賃借人との関係がきれいに解決できれば良いですが、必ず交渉ごとで解決するわけではありません。最終的には「建物明渡し請求訴訟」を裁判所に提起して法的な強制力で建物明け渡しを実現しなければならない場合もあります。
裁判所の手続きは弁護士や司法書士を必ず利用しなければならない訳ではありませんから、オーナーさんが本人訴訟という形で建物明渡し請求訴訟を提起することも可能です。
ただし、建物明渡し請求訴訟をオーナーさん本人に遂行してもらうのは、現実問題として訴訟遂行能力や日程確保の面でも難しいところもあるようです。
【判決が出ても強制執行がある】
家賃滞納を続け、任意の明渡し請求にも応じず、裁判所からの判決に応じない賃借人に対しては、強制執行で明け渡しを断行するしかありません。強制執行の手続きを踏まずに賃借人に無断で鍵を交換したり家財を持ち出したりすることは不法行為になります。
建物明け渡し請求訴訟に続く強制執行に至るまでには費用も時間もかかりますが、このようなケースでは訴訟代理人を依頼して手続きを進めるのが一般的です。
【継続的な依頼をする選択肢】
滞納家賃の回収や建物明け渡し請求の案件を日常的に抱えることの多い家賃保証会社や不動産管理会社の方は、司法書士との間で継続的な顧問契約を締結することでこれまでのような煩わしい手間と経費を削減できるかもしれません。選択肢の1つとしてご検討ください。
なお実際の事件を受任する場合は、オーナーの方と訴訟代理に関する委任契約を司法書士と締結することになります、
また司法書士は、取り扱える業務の範囲が限られています。訴訟物の価額が140万円を超えるものについては弁護士にお問い合わせください。