事故などによって親子が「同時に死亡した」場合、相続関係はどうなってしまうのか?という問題があります。
たとえば長男Cの祖父甲・父A・母Bがいたとして、同一交通事故でAとCが死亡した場合、父Aの相続人は誰になるのでしょうか?
この場合、同一事故で死亡したといっても、実際にAとCがまったく同じ瞬間に死亡したかどうかが分からないこともあります。
法務局に相続登記申請をする場合、被相続人の除籍謄本(除籍全部事項証明書)を提出するわけですが
戸籍の死亡欄には死亡年月日だけではなく死亡した時刻も記載されています。
これは死亡診断書(または死体検案書)の記載をもとに戸籍にも死亡時刻を記載しているからです。
よって、死亡日が同一であっても死亡時刻が違っていれば「同時に死亡した」ことにはならない訳です。
上の例で父Aが長男Cより少しでも先に死亡していれば、Aの相続人はBとCになります(妻と子)。
上の例で父Aが長男Cより少しでも後に死亡していれば、Aの相続人はBと甲になります(妻と父)。
そうすると「同時に死亡した」というケースなんてないんじゃないの?と考える方もいると思いますが
実際に除籍謄本に記載されている死亡事項をみると
「令和●年●月●日午後8時から翌日午前8時頃死亡」
「令和●年●月●日時刻不詳死亡」
「推定令和●年●月●日死亡」
などと記載されているケースもあります。
上の例で父Aも長男Cも同じように「令和●年●月●日時刻不詳死亡」と記載されていたら
どちらが先に死亡したかが判断できないことになってしまいます。
このような場合、「同時に死亡した」と判断せざるを得ないということになります(民法第32条の2)。
ここでようやく、親子が「同時に死亡した」場合、相続関係はどうなってしまうのか?という問題に戻ります。
「同時に死亡した」ということは、被相続人父Aが死亡したとき、長男Cは死亡していた=存在していないことになりますから
長男Cは父Aの相続人ではないことになります。つまりAC間では相続関係は発生しないということです。
父Aの相続人は妻BとAの父甲になります(妻と父)。
参考 民法第32条の2(同時死亡の推定) 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。 |
ちなみに上の例で長男Cに子供Dがいた場合は、Dは代襲相続人になります(民法第887条第2項)から、父Aの相続人は妻Bと孫Dになります。
参考 民法第887条(子及びその代襲者等の相続権) |