遺言信託がなされている場合、遺留分減殺請求との関係が問題になります。
遺留分権利者がいて遺言信託を設定する際には、想定される遺留分減殺請求についても配慮しておく必要があり、慎重に信託の内容を検討する必要があります。
なぜかというと、遺留分権利者が遺留分減殺請求をした場合、その対象、相手方をどう考えるかによってせっかく設定した信託行為そのものを消滅させてしまうことにもなりかねないという指摘もあるからです。
そこで、遺留分権利者がいる場合の遺言信託の内容としては、遺留分権利者に遺留分相当額の財産を相続させるよう設定しておくとか、遺留分権利者も受益者の1人として遺言信託を設定しておくとか、価額弁償の方法を定めておくとか事情に応じた対策も考えられています。
■遺留分権利者は、何に対して遺留分減殺請求をすれば良いのか。遺留分減殺請求の対象は何かという問題と、誰に対して遺留分減殺請求をすればよいのかという問題があります。
■遺留分減殺請求の対象については、信託されて財産に対して遺留分減殺請求をすると考えるか、受益者に対して付与された受益権に対して遺留分減殺請求をすると考えるかになりますが、受益者に対して付与された受益権に対して遺留分減殺請求をするのが正しいと考えられているようです。
■誰に対して遺留分減殺請求をするのかについては、信託によって保護しようとする受益者の利益を考慮すると、信託そのものを消滅させるような遺留分減殺請求を認めるべきではなく、価格弁償によって遺留分権利者の利益を図る方法もあるということで受益者に対して請求すべきということになるようです。
このように遺言信託を設定する場合は、遺留分減殺請求を踏まえて内容を検討していくく必要があり、安易にひな形等を採用して信託を設定すると後々トラブルに巻き込まれる恐れもあります。