Archive for the ‘相続’ Category

相続放棄は1人でもできる?

2021-01-07

法定相続人自分以外にも何人かいる場合、自分だけ相続放棄申述の申立ができますか?というご質問がありました。

答えとしては「1人だけでも相続放棄は可能」ということになります。

他の相続人が相続放棄をする・しないといった状況に関わりなく自分自身の判断で決めることが可能です。(実際には他の相続人と一緒に相続放棄のご相談にいらっしゃる方が多いです。)

相続人の1人が相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったとみなされますから(民法第939条)、他の相続人の法定相続分が増えたり、次順位の法定相続人が登場したりすることもあります。

参考 民法第939条

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

 

相続放棄申述申立書のページ

 

 

家督相続による相続登記

2020-11-13

現在の日本の民法では、相続は被相続人の死亡によって開始することになっています。

参考 民法第882条(相続開始の原因)
相続は、死亡によって開始する。

相続で不動産の名義を取得することになった人は、登記記録(登記簿)に、被相続人の死亡日を原因として所有者として記録(登記)されます。
被相続人が令和2年11月13日に死亡したのであれば、登記記録の「原因」という欄には「令和2年11月13日相続」といった記載がされることになります。

ところが昭和22年まで続いていた旧民法では「家督相続」という制度がありました。
この「家督相続」という制度は、戸籍に戸主と記載されている人が死亡や隠居などをした場合に「家督」を「相続」したという相続人が新しい戸主として戸籍に記載されるというものです。
被相続人が昭和2年11月13日に死亡して家督相続をしたのであれば、登記記録の「原因」という欄には「昭和2年11月13日家督相続」といった記載がされます。

家督相続であらたな戸主となった人は、前の戸主の財産をすべてを承継することになっていました。
たとえば、父親が亡くなって、その家には母親のほか長男・二男・長女と3人の子供がいた場合、長男が家督相続をしたのであれば長男がすべての財産を承継することになっていたわけです。
当然遺産を引き継ぐための遺産分割協議などは不要でした。その代わり家督を継いだ長男は家族を扶養する義務も負うことになっていました

この「家督相続」という制度自体、現在の民法では採用されていない訳ですが、相続登記実務ではいまだに「家督相続」を登記申請情報に入力することがあります。
それは、登記記録(登記簿)上の所有者が昔の所有者(昭和22年以前に亡くなっている人)のままになっている不動産があるためです。

「そんな昔の人のままになっている登記記録(登記簿)なんてあるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、意外にも相続登記がされないまま放置された状態の不動産が全国にかなりの数存在するそうです。
これは土地の有効利用という面からも問題になっています。
実際に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」という法律も施行されています。

参考 国土交通省のホームページ
人口減少時代における土地政策の推進~所有者不明土地等対策~

通常の相続登記のページ

相続のことで、お困りごとがございましたたらお気軽に小川事務所までお問い合わせください。

生前に相続放棄ができるか?

2020-11-12
被相続人が亡くなる前に相続放棄ができますか?

というご相談を受けることがあります。

たとえば、

長年疎遠な関係になっている父親に多額の借金(負債)があるらしいので今のうちに関係をはっきりさせておきたいと思います。
相続放棄をしたいのですが。

といったご相談です。

しかし、まだ亡くなっていない方についてその推定相続人があらかじめ相続放棄をすることはできません。
相続放棄の手続きは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申立てする必要があります。
「相続の開始があったことを知った時」からですから、「相続の開始」がされていないうちに相続放棄の手続きをすることはできないわけです。

参考 民法第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
第2項 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

民法第915条第2項に「相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。」とありますが、
これは、相続放棄をする場合に、亡くなった被相続人の遺産がプラス財産がどれくらいあって、マイナス財産がどれくらいあったのかを調査してから判断することを前提にしています。
このことからも生前に相続放棄をすることはできないことが分かると思います。

生前に「私はお父さんが死んでも相続はしないからね!」とか、「遺産は放棄するからね!」といった口約束が推定相続人間であったとしても法的な意味では生前に相続放棄をしたことにはならないので注意が必要です。

 

 

 

後期高齢者医療保険の未払い

2020-10-28

後期高齢者医療保険料を未払いのまま被相続人が死亡した場合、相続人はどうしたら良いのかについて記事を書きました。

後期高齢者医療保険料の相続債務について

相続登記はいつまでにやらないといけないですか?

2020-10-08

相続登記はいつまでにやらないといけないですか?という質問をいただくことがあります。

何かの法律で「相続登記は登記名義人が死亡してから●か月以内にしなければならない。」とか、相続登記をしないことに対する罰則が規定されているわけではありませんので法律上は相続登記に期限はありません。

しかし、相続登記をいつまでもしないでそのままにしていると次のような問題が生じることがあります。

・相続登記に必要な書類が取得できないことがある。
・法定相続人が増えてしまうことがある。
・法定相続人と連絡が取れなくなってしまうことがある。
・相続税の申告が必要な場合に支障が出ることがある。
・遺産分割協議がまとまらなくなることがある。

【相続登記や法定相続情報に必要な書類が取得できないことがある。】

相続登記に必要な書類の1つとして被相続人に関する除籍謄本があります。
この場合の除籍謄本は、出生時まで(最低でも12.3歳くらいまで)さかのぼって取得する必要があります。
被相続人の父または祖父などが筆頭者(戸主)になっているものです。
相続登記をしないまま何十年も経過している土地についての相談を受けることがありますが、登記名義人である被相続人の出生時までとなるとそこから何世代にもわたって相続が発生していて「保管期間経過により除籍謄本を交付できません。」として出生時までの除籍謄本が取得できないことがあります。
もっとも、法務省の通達(平成28年3月11日民二第219号)により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書が提供されていれば、相続登記をして差し支えないとされていますので相続登記に関しては支障はありません。
これに対し、法定相続情報の申出の場合は原則として被相続人の出生時までの除籍謄本の提出が求められています。

【法定相続人が増えてしまうことがある】

被相続人が亡くなった時点では法定相続人は子供たちだけだったのが、その後相続登記をしないままで年数が経過していく間に、その子供たちも亡くなってしまった場合を想像してみてください。
被相続人の子供たちにも相続が発生してしまうと、被相続人の遺産分割協議には被相続人の子供たちの法定相続人が何人も登場してくることになります。
被相続人の直系にあたる孫同士となると今の時代、疎遠になっているかもしれません。
被相続人の子供が亡くなっているとその配偶者が相続人になる場合もあります。その後、被相続人の子供の配偶者も亡くなってしまうと、今度は別家系の親族との間で遺産分割協議をしなければならなくなってしまうこともあります。

【法定相続人と連絡が取れなくなってしまうことがある】

相続登記のご相談の中で「相続人の連絡先が分からない」というお話しをいただくこともあります。
戸籍が日本にある限り、住民登録上の住所を確認することは可能ですが「手紙を出しても返事がない」とか、「住民登録上の住所に居住実態がない」などということもあります。
また相続人が外国人と結婚して日本国籍を離脱した場合、日本の戸籍記載事項からその人の外国の住所を確認することはできません。

【相続税の申告が必要な場合に支障が出ることがある】

被相続人の遺産からして相続税の申告が必要な場合、死亡日から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければなりませんが、相続税の申告は相続人全員から行うことになっています。
また相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立していなければ「未分割」での相続税の申告をせざるを得ません。
この場合、法定相続分による財産の分割を前提に相続税を計算して申告をします。
その後、遺産分割協議が成立して法定相続分とは異なる割合で遺産分割が行われたのであれば、相続税の修正申告をする必要があります。
なお「未分割」での相続税の申告をしてしまうと、いわゆる「小規模宅地の特例」や、「配偶者控除」を受けることができないので納付する税額も大きく変わってきます。
ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を「未分割」での相続税申告と同時に提出し、申告期限から3年以内に遺産分割が成立すれば配偶者控除を受けることもできます。
このあたりは税理士さんのお仕事になりますが遺産整理業務を取り扱う司法書士としても心得ておく必要があります。

【遺産分割協議がまとまらなくなることがある】

被相続人の遺産について遺産分割協議をしないで長年放置している背景として「そもそも遺産が少ない」とか、「遺産の取得に興味がない」とか、「相続人と話をしたくない」などといった事情が存在するケースもあります。
特に「遺産の取得に興味がない」というのは、社会問題にもなっている「空き家問題」とも関係している点です。
上記の「法定相続人が増えてしまう」とも相まって被相続人の死亡から時間が経過すればするほど遺産分割協議がまとまる可能性は低くなって行ってしまうこともあります。
「遺産分割協議がまとまらない」ことへの解決方法として遺産分割に関する「調停の申立」を家庭裁判所に対して行う方法もありますが、そもそも被相続人の死亡から長い期間が経過しているとこれも上記の「法定相続人と連絡が取れなくなって」いることもあり、調停の相手方を特定することすら困難を極めるという事態も考えられます。
こうなると、「なんとか自分の世代で遺産分割協議を成立させて名義変更をしてすっきりさせたい。」とか「自分の子供の世代にこのごちゃごちゃした相続問題を引き継がせたくない。」という思いも心が折れてしまう方もいるようです。

 

【まとめ】

このような問題に直面しないようにするためにはどうしたら良いか?というと
「相続が発生したらなるべく早めに遺産整理の手続きを済ませるようにする。」ということに尽きます。
相続が発生したらなるべく早めに遺産整理の手続きを済ませておけば

  • 相続登記に必要な書類が期限切れで取得できないことという心配もありません。
  • その後に法定相続人が増えてしまうこともありません。
  • 以後に最悪、法定相続人と連絡が取れなくなってしまっても少なくとも遺産整理手続きで困ることはありません。
  • 相続税の申告で支障が出ることもありません。
  • 遺産分割協議がまとまらなくなるという事態はありません。

「相続登記はお早めに」というキャッチフレーズを司法書士会などで目にすることもありますが当事者目線で見るとなるほどという感じもします。

 

 

 

 

相続放棄をしたら未支給年金はもらえない?

2020-09-29

相続放棄を予定している方が亡くなった父親の遺産について申立の準備をしている途中で、死亡届を出したときに市役所からもらった案内文書に「年金受給者死亡届」を出すように書かれていたので提出したところ「未支給年金がありますから要件を満たしていれば請求できますよ。」と年金事務所の職員に説明されることがあります。

でも自分はこれから相続放棄をしようとしているのだから、亡父が受け取っていなかった年金を受け取ってしまうと相続を承認してしまうことになってしまうのではないか?と心配になるようです。

結論から言うと「未支給年金は相続財産ではないので相続放棄をしていても請求できる。」ことになっています。
未支給年金の請求権は、請求をする人の固有財産と解されていますから相続財産ではありません。
これはそもそもの年金の趣旨が、年金受給者本人と同一生計で生活をしている家族の生活をまもるための制度であり、年金受給者本人だけのための制度ではないからです。

なので、相続放棄をした人(これからする予定の人)であっても、未支給年金の請求要件を満たしていれば未支給年金の請求もできますし、受領もできるわけです。

このことからもわかるように未支給年金の請求は、受給者本人と同一家計の人でないとできないことになっています。
未支給年金の請求をする際にはこの同一家計であったことを証明する書面が必要となります。

なお未支給年金の請求を司法書士が代行することができませんのでご自分で手続きをされるか社会保険労務士に依頼をすることになります。

同時に死亡すると相続にならない?

2020-09-11

事故などによって親子が「同時に死亡した」場合、相続関係はどうなってしまうのか?という問題があります。

たとえば長男Cの祖父甲・父A・母Bがいたとして、同一交通事故でAとCが死亡した場合、父Aの相続人は誰になるのでしょうか?
この場合、同一事故で死亡したといっても、実際にAとCがまったく同じ瞬間に死亡したかどうかが分からないこともあります。

法務局に相続登記申請をする場合、被相続人の除籍謄本(除籍全部事項証明書)を提出するわけですが
戸籍の死亡欄には死亡年月日だけではなく死亡した時刻も記載されています。
これは死亡診断書(または死体検案書)の記載をもとに戸籍にも死亡時刻を記載しているからです。
よって、死亡日が同一であっても死亡時刻が違っていれば「同時に死亡した」ことにはならない訳です。

上の例で父Aが長男Cより少しでも先に死亡していれば、Aの相続人はBとCになります(妻と子)。
上の例で父Aが長男Cより少しでも後に死亡していれば、Aの相続人はBと甲になります(妻と父)。

そうすると「同時に死亡した」というケースなんてないんじゃないの?と考える方もいると思いますが
実際に除籍謄本に記載されている死亡事項をみると
「令和●年●月●日午後8時から翌日午前8時頃死亡」
「令和●年●月●日時刻不詳死亡」
「推定令和●年●月●日死亡」
などと記載されているケースもあります。

上の例で父Aも長男Cも同じように「令和●年●月●日時刻不詳死亡」と記載されていたら
どちらが先に死亡したかが判断できないことになってしまいます。
このような場合、「同時に死亡した」と判断せざるを得ないということになります(民法第32条の2)。

ここでようやく、親子が「同時に死亡した」場合、相続関係はどうなってしまうのか?という問題に戻ります。
「同時に死亡した」ということは、被相続人父Aが死亡したとき、長男Cは死亡していた=存在していないことになりますから
長男Cは父Aの相続人ではないことになります。つまりAC間では相続関係は発生しないということです。
父Aの相続人は妻BとAの父甲になります(妻と父)。

参考 民法第32条の2(同時死亡の推定)
数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

 

ちなみに上の例で長男Cに子供Dがいた場合は、Dは代襲相続人になります(民法第887条第2項)から、父Aの相続人は妻Bと孫Dになります。

参考 民法第887条(子及びその代襲者等の相続権)
第2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

 

 

 

 

 

 

 

 

相続放棄をした人の子の相続権

2020-09-09

相続放棄申述の申立をして受理された人の子供は、被相続人の相続をする権利があるでしょうか?

相続放棄をした人の子供、つまり被相続人の孫に相続権があるのか、ないのかという問題です。

いわゆる代襲相続では、被相続人より先に子が死亡していれば、その死亡した子の子(つまり孫)にも相続権があります(民法第887条第2項)。

相続放棄をすると、「初めから相続人とならなかったものとみな」されますから(民法第939条)、被相続人が死亡すると代襲相続と同じようなイメージでその孫には相続権があるのではないかと考える方もいるようです。

しかし相続放棄をした人の子には、相続権はありません。

代襲相続が認められるのは

  • 相続開始前の「死亡」
  • 相続欠格
  • 廃除 に限定されていて、相続放棄は含まれていないからです。

参考 民法第887条(子及びその代襲者等の相続権)
第1項 被相続人の子は、相続人となる。
第2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人とな る。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
第3項 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

参考 民法第939条(相続の放棄の効力)
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

もちろん、相続放棄をした人自身が死亡した場合の相続については、その子は法定相続人ですから相続放棄等をしない限り相続権は認められます。

相続分の譲渡

2020-09-06

相続分の譲渡とは、個々の遺産の共有持分ではなく、相続財産全体に対する包括的な持分や法律的な地位を遺産分割協議の前に譲渡することを指します。

相続が発生して遺産分割協議をする際に、相続人の数が多いと意見がかみ合わずに話し合いもうまくまとまらない場合があります。
親が死亡して子供が数名であれば相続人の数が多いと感じることもないと思いますが、子供が親より先に死亡している代襲相続の場合や、親が死亡して相続手続きをしないまま年月が経ってしまいその子供も死亡してしまったような数次相続の場合などは相続人の数が増えてしまっている場合もあります。

たとえば相続人が自分以外に10人いた場合、そのうち7人は遺産分割協議の内容に合意しているのに他の3人が反対しているような場合です。
このような場合、相続人の1人の代理人として遺産分割協議に臨む弁護士さんは、当事者を絞るために「相続分の譲渡」の手法を使うことがあるようです。
上記の例で遺産分割協議をする場合、争っていない7人から相続分の譲渡を受け、争いのある3人だけを遺産分割協議の相手に絞ることができます。
相続分の相続人全員を話し合いのテーブルに着かせるより効率的というわけです。

参考 民法第905条(相続分の取戻権)
第1項 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
第2項 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

民法第905条は、相続分の譲渡について直接規定したものではありませんが、相続分の譲渡ができることを前提にして、その取戻しができる要件を定めています。

相続分の譲渡の相手方は他の相続人でも良いし、第三者でも良いとされています。
また相続分の譲渡は無償でも有償でも良いとされています。
ただし無償による相続分の譲渡は、譲渡した人が亡くなった場合、民法第903条の贈与にあたると判断されることもあり(平成30年10月19日最高裁判所第二小法廷判決)、遺留分侵害の可能性もあるので注意が必要です。

遺言執行者の通知義務

2020-09-05

 遺言書を作成する場合に大切なことは、遺言をする人が死亡した場合、「誰に」、「何を」ということを明確に定めておくことはもちろんですが、
実際にその遺言書の内容に従って、遺産の承継手続きをする人(=遺言執行者)も遺言書の中で決めておかないと、その後の手続きが面倒になる場合があります。

 遺言執行者を関与させなくても(選任しなくても)遺言書の内容を実現できる場合は良いのですが、遺言で「第三者に遺産を贈与する」といった遺贈の形式をとっているような場合には遺言執行者がいないと実際の手続きがスムーズに進まないことになります。

 遺言執行者が必要なのに遺言書の中に遺言執行者の指定がない場合は、家庭裁判所に対し、遺言執行者選任の申立をすることができます。

 遺言執行者に指定または選任された人は就任承諾をした後、実際に遺言執行にとりかかるわけですが、2019年7月1日から施行された改正民法では、遺言執行者の仕事として「遺言の内容を相続人に通知する」ことが明確に定められました。
 民法改正前でも法律専門家が遺言執行者になった場合は相続人に対して遺言の内容を通知していたケースがほとんどだと思いますが、一般の方が遺言執行者になった場合などで相続人に遺言の内容を通知せずにいつの間にか相続手続きが終わっていたということで新たなトラブルが発生したケースもあったようです。
 相続人からすれば、遺言の内容によっては手続きに協力しなければならない場合もありますし、遺留分の請求をするかしないかの判断に際しても遺言の内容を確認する必要があります。
 遺言執行者としては民法の条文で明確に通知義務が規定されたということに注意が必要です。

参考

改正前の民法第1007条(遺言執行者の任務の開始) 改正後の民法第1007条(遺言執行者の任務の開始)
遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

第1項 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わねければならない。

第2項 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

 

« Older Entries

トップへ戻る

0471604488電話番号リンク 問い合わせバナー